13.
道筋は何個もあって枝分かれするけど
示された道がアタシも正解だと思った
vol.13 correct answer
『…………』
「フッフッフーン」
『名前は機嫌ええなぁ』
『良すぎやろ、何やあったんですか部長』
「えー聞きたい聞きたいー?光ってばアタシが幸せだったの聞きたいー?」
『……………』
昼休み、元々鬱陶しそうな顔をしてたのに更に深いシワを作った光は眼を細めて焦眉したけどそんなものは軽くスルーして。
危難なんかとんでもないし、謙也が購買に行ってるのを良いことにアタシは気分上々に理由を述べた。これが幸せを分けるってことだよね。
『フーン、謙也先輩も雄やったっちゅうことか』
「謙也ってばアタシにメロメロって感じ?ねー蔵りん!」
『ハハッ、せやな』
「やっだもう!祝宴はいつにするって気早すぎ蔵ってば!」
どっちが早いねん、呆れた溜息を吐く光に何を失礼なって突っ込もうかと右手に力を入れた瞬間、キラッと何かが光って『カシャー』っていう機械音。
「、何?」
『写メ撮って逃げてったな』
光ったのは携帯から放たれたフラッシュだったらしく、距離もあってか眼はチカチカしないけど何なの一体。
『あー、アイツ等昨日名前ん事可愛いとか言うてた奴や』
「え?じゃあ今のアタシが撮られたっこと?」
『そうなるな』
これが俗に言う隠し撮りってやつですか!(隠れてないけど)
やだやだアタシったらそんなにモテちゃうの?
「どうしよう…可愛いって罪なんだね…」
『調子乗んな』
「い゛った!!なに光!暴力も僻みも反対ー!」
『誰が僻むか』
あーあ、変な顔に写ってないといいけど。なんて本当に調子乗って要らない心配までしてたアタシに制裁と言わんばかりの拳骨が降ってくる。
女の子に手挙げるなんて最低なんだからね、謙也だったら拳骨なんて絶対しないのに。
「じゃあ何ですかーアタシがモテるのが気に食わないだけじゃないのー?」
『浮かれてんなってことや』
『せやなぁ、俺も財前に同感や』
「な、何で?モテるのは良いことじゃんか…」
それだけアタシに魅力があるって証拠でしょ?
誰かに可愛いって思って貰えるなら自信にもなるし、謙也にだって一歩近付けるような、そんな気になるのに。
『謙也先輩が聞いたら何て思うんやろな』
「え、」
『昨日名前も謙也先輩が告られたん見たやろ?』
「……………」
好きな人が知らない誰かに告白させるのは、良い気しない。どうするんだろって不安になって、断ったとしても安堵と同時に不安が生まれる。アタシもそうなるんじゃないかって……
もし謙也が少しでもアタシを想ってくれるなら…。
「光…蔵も、」
『うん?』
『なんや』
「謙也には、言わないで…」
仮にアタシと謙也が付き合ってて相思相愛で、もし嫉妬なんかしてくれたら嬉しい。でも今のアタシじゃ確かなモノなんて無くて、少しの不安要素も作りたくないから。
『どないしよかなー』
「ひ、光の意地悪…」
『大丈夫や名前、心配せんでも財前は言わへんよ』
「本当に?」
『さっさと告白でもしたら黙っといたるわ』
「か、簡単に言わないでよ…!」
『さっきの自信は何処行ったん?』
「うううるさいな、あれはあれこれはこ『名前ー!』」
「!!」
『今日も待たせて堪忍な!』
「べべべ、べつに…」
『うん?どないした?』
『流石謙也先輩スわー』
『は?』
なんて間の悪い!このタイミングで現れるなんか卑怯じゃない?
告白っていう単語がやけに頭に響いて謙也の顔が見れなかった午後。
だけど、ちゃんと正しい方向を教えてくれた光にちょっとだけ感謝した。
(20090724)
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