12.
恥ずかしいと幸せって
紙一重だったりする?
vol.12 shy
自分が作った訳じゃないけど、アタシが買って来たケーキを謙也が美味しそうに食べてくれることが嬉しかった。
アタシが居て、謙也が居て、偽物だけど誕生日を祝うことが出来て喜んでくれて、幸せだなぁって。
あの時謙也も同じだった?
『名前、生クリーム付いとる』
「え?何処に、」
『ココや』
「あ、ありが―――」
『ん、美味しい』
アタシの口元に付いてた生クリームを人差し指で掬ってペロッと舐めた謙也が艶やかで、もうこのままどうにでもなりたかった。
『――、―――!』
「……う…ん、」
『名前!もう授業終わったで!』
「じゅぎょー…?っっ、けけ謙也!?」
『ハハハッ、豪快に寝とったなぁ』
「ね、寝て…アタシ、寝てたの?」
『口開けて爆睡やで!』
「あ、そう…」
つまりあの色っぺ謙也は夢だってことですか。まぁね、あの謙也がやらしい顔…ちょっと想像つかない。良いんだ、ちゃんとハッピーバースデー出来ただけで十分だし。でももしあんな事やこんな事になったら謙也もああいう顔するの?やばい、夢でもドキドキしてきた。(でも口開けて寝てんの見られたのは如何なもんか…)
『あ、名前やっと起きたん?授業はちゃんと受けなあかんて言うてるやろ?次からはしっかり起きてしっかり勉強するんやで』
「分かったから蔵は寝起き早々お説教するの止めてってば…!」
『誰が悪いんや』
「はいはいアタシです!アタシが悪いんですごめんなさいー」
『何や投げ遣りやなぁ…まぁええわ。それよりな、謙也が名前の寝顔見て襲いそうになってたんやで?』
「へ?」
『しし白石っ!何ちゅう事言うんや…!俺は別にそんなん…!!』
『授業中もずーっと名前ばっか見とったんは誰や?』
『そそ、それは……』
謙也がアタシのことずっと?本当に…?
『名前、う、嘘やからな!白石が変なデマ言うとるだ「謙也」』
『、』
「本当に、アタシのこと見てた…?」
『………う、ん。お、おお襲うとか、そんなんちゃうけど…嬉しそうな顔して寝とるから…何の夢見てるんやろなって、か、かか、可愛かってん…』
「……………」
可愛い…謙也が、そう思いながらアタシのこと見て……。
っ、駄目駄目、ははは恥ずかしい…!
『名前ー?顔、赤過ぎ』
「う、煩いよ蔵…!」
『、名前?』
「…謙也、ごめん、アタシ嬉しくて……」
『う、嬉しい…?』
「だ、だって、謙也にそう思われるのが、一番嬉しいんだもん…」
『!』
『あーあ…2人して同じ顔してから…青春やなぁ』
呆れた様に笑う蔵には文句のひとつや2つ言ってやりたかったけど、今のアタシは謙也から視線を反らすだけで精一杯だった。
光だったら『ヘタレや』って笑い飛ばす?でもね、この恥ずかしさも悪くなくてウブなくらいがアタシにはちょうど良いって思ったんだ。
(20090720)
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