10.
明日、
今日よりもっと笑えますように
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光の後ろを歩きながら必死で前髪を手でといて、後ろもバサバサと整えれば大体元に戻ったかなって安堵して。
自転車じゃなくてバスか電車で来れば良かった、後悔を思うと立ち止まった光。
「何ー、雑貨屋さん?」
『謙也先輩の誕生日やねん』
「え、嘘!?謙也の誕生日って…だからプレゼント買いに?」
そんな事アタシが知らないだろうからって誘ってくれたの?
アタシの為……?
控え目に莞爾した光に凄く凄く、感謝した。
『ほな俺はCD見て来るんで適当に選び』
「うん、有難う」
何が良いかな、相談したかったけどやっぱり自分で選ぶもんだよね。気持ちがあればそれだけで喜んで貰えるものだもん。謙也だったら尚更……
おめでとうを言って笑う謙也の顔が浮かんだ。
□
『で、何買うたん?』
「秘密ー」
『うわ、やらしー』
結局1時間以上悩みに悩んで、お洒落な物にしようかとか実用的な物にしようかとか頭を捻らせた結果、謙也の趣味もイマイチ分からなかったアタシは文具セットを買った。地味で微妙だってのは重々分かってるけど、ノートやペンだったら普段学校で使えるし…下手な物買って使わず押し入れ行きよりはマシかな、なんて。
「やらしー物なんか買ってないし!ノートとか文房具だもん」
『文房具?誕生日に文房具、』
「だ、駄目なの!」
『ええんちゃう?謙也先輩は勉強した方がええやろうし』
「何その謙也は馬鹿みたいな言い方」
『さぁ?部長よりは出来ひんと思うけど』
「蔵を基準にするのが間違ってるよ」
ケーキ昨日食べたんちゃうん、文句言われながらも最後にデパ地下でケーキを買って、何でだかアタシが運転する自転車の後ろに光が乗って。普通男の子が漕いでくれんじゃないのってアタシのが文句言いたいのに。
アタシに対しても部活の先輩に対してもマイペースっぷりを崩さない光がある意味羨ましい。
だけどそんな事より2人分の体重が乗った自転車を漕ぐのが正直しんどい。
「光、疲れた」
『もうすぐ俺が下りるし』
「変わってくれるとは言わないの」
『俺に漕げって言うん』
「…………」
この男は…マイペースから自己中に格下げしてやろうか。
だってさ、可愛い可愛い女の子が疲れたって言ったら『ごめん、後は俺が家まで送ってくからちゃんと背中に捕まっておくんだよ』って言うもんじゃん…!(流石にこれは妄想とは言わせないから)
きっと謙也だって…優しいからそう言ってくれると思う。
「ひかるー、」
『は?』
「アタシと謙也、上手くいくかな…」
『阿呆通しお似合いやで』
「…そういう意味じゃないんだけど」
光の事はカウント無しにしたとして、次に恋愛する時は今度こそ幸せになりたいって思ったから。
謙也が相手なら女の子は幸せだと思う、だけど問題は謙也がアタシを見てくれるかどうか。
「……………」
『阿呆』
「なに、光に阿呆って言われるのも聞き飽きたんだけ『心配せんでええわ』」
「え?」
『俺が、何とかしたる』
「、」
『名前は鬱陶しい妄想でもしとったらええわ』
「……………」
何なの?光って意味分かんない。
でも、バテバテな足が少しだけ元気になった気がした。
光がこの恋を叶えてくれる?
アタシ、期待しちゃうから。(っていうか初めて普通に名前呼ばれたんじゃない?)
(20090706)
※次回は謙也君との絡みで。
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