俺とアイツ | ナノ


 


 08.



昨日は文句言いながらも楽しかった。1人学食で飯食っても虚しくて、大好きな納豆食ったって味気なくて。
今頃は名前と侑士、上手くやってんのかなーって思うと、また口の中が苦くなった。
アイツ等が上手くいけば、スッキリすんのかな…良く分かんね。


  □


『向日先輩』

「……………」

『な、何で無視するんですか、呼んでるのに…』


昼飯食べた後、教室に戻ると既に侑士が居て何でも無いような普通の顔してた。
逆に何で何も言ってくんないんだよって、俺には報告なんかない、蚊帳の外なんだって知らしめられた気がして…ちょっとムカついた。

名前と何話して、何か関係が変わったなら俺に1番に言うんじゃないのかよ。
そんな苛ついてるとこにアイツが来て、しかも名字で呼んでくるからもっとムカついて、眉間に寄ってくシワがまたウザかった。


『向日先輩ってば……あ、間違えたごめんなさい、岳人先輩……』

「なに」

『名前間違えただけで怒らないで下さいよ…神経質ですよ…』


神経質?
お前誰に言ってんの?
自分が間違えたくせに何言ってんだよ。俺がいつも能天気にしてると思うなよ、俺が苛々してんのも全部、全部お前のせいじゃん。


『これから部活なんですから爽やかに運動しなきゃ駄目ですって』

「名前」

『はい?』

「お前、ウザイ」

『え、』

「余計な事ばっか喋って肝心なこと何も言わなくて本当ウザイ」

『肝心、なこと…?』

「良いよ言いたく無いんだろ?もういい、俺に話し掛けんな早く侑士んとこ行けよ」


多分、引き金は名前だった。侑士の事は始めから名前で呼んでたくせに俺には名字だったこと、慣れたと思ってたのにわざわざ名字で呼んで来たのは侑士だけ特別にしたいからだって…八つ当たりってやつ。だけど今の俺には笑って流す余裕は無くて、言いたいことをぶちまけることしか頭に無かった。


『……な、んですか、それ…』

「何ってまんまじゃん」

『………分かりました、もう声、掛けません…』

「―――――」


アイツの顔を見て“しまった”って思った。
鬱陶しそうに歪めた顔とか、呆れた顔とか、そんなのは見て来たけど……
今にも泣きそうに歯を食い縛った顔なんか、初めて見た。


「んな顔、すんなよ…」


アイツが悪いのに、アイツのせいなのに、俺が泣かしたみたいじゃんか…俺が泣かしたんだけど。
滅茶苦茶ムカついたけど喧嘩したい訳じゃなくて、
滅茶苦茶ウザかったけどあんな顔見たくなくて、
本当は……


『あーあ、がっ君やってしもたなぁ』

「、侑士?」

『悪いけど一部始終見せて貰たわ…』

「…………」

『がっ君はどうしたいんや?』

「そんなの分かんねぇよ…」

『うーん…せやな、良いこと教えたるわ』

「は?良いことって―――――……」

『跡部には上手い事言うとったるから行ってき?』


全部見てたとか侑士もウザイ、鬱陶しくて堪んないのに侑士がくれた言葉に感謝して期待して、俺はアイツ目がけて走り出した。

“本当は、侑士より俺を見て欲しかった”


(ごめん、)(早く謝りたいのに何処行ったんだよ馬鹿)(嘘、馬鹿も撤回するから)(俺と会って)




(20090721)


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