「………ん、」
前髪を掻き上げて瞼を持ち上げるとピンク掛かった白いカーテンに囲まれて圧迫感があった。
何処だココ。何で俺こんなとこで寝てたんだろ、そう思って視界を180度半周させようとすると、
「ぶっ!」
『あ゛、おぎだんでずが』
左側の枕元にアイツが居て噴いた。いや、だって何で鼻摘んでんだよ。面白いんじゃなくてビックリすんじゃん。気持ち真ん中に皮が引っ張られて眼が寄ってるし。
「…何やってんの?つか何処?」
『先゛輩゛が頭゛痛゛いって言うから保健室でずよ゛』
「あーそうだっけ、あれから保健室に行って寝たのか」
『も゛う゛昼休みでずよ゛』
「うぜーから普通に喋れよ」
朝練が終わってから授業受ける気にもなんないくらい頭痛くて何かモヤモヤして、もういいやって保健室直行したんだ。アイツに付き添われて。
『ウザイとか酷いです!せっかく納豆買って来たのに、』
「は?納豆?」
『岳人先輩が言ったじゃないですか…納豆あったら治るって』
「んー言ったかも」
『かもじゃなくて言いました!だからアタシ臭いの我慢してたのに…』
「納豆臭くねぇし」
『アタシにとっては臭いんですよ…』
「っていうかお前ずっとココ居たの?」
今が昼休みって言うなら、購買に納豆買いに行ったとしても1限からずっと傍に居てくれたとか。
そうだとしたら普通に感動すんだけど。
『まさかそんな訳ないじゃないですか。寝てるのにココに居ても意味無いしちゃんと授業出ましたよ』
「……そうかよ」
そういう奴だよお前は。
ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった。まぁ、期待っても何を期待すんだって感じだけどさ。
『でもアタシ『お、岳人眼覚めたんか』』
「、侑士」
『名前ちゃんにも来て貰て幸せ者やなぁ』
「だからそんなんじゃねぇって言ってんだろ」
多分ずっと寝てた俺を心配して、カーテンからチラッと顔を覗かす侑士だけどタイミング悪いって。
どうせまたアイツの事勘違いするんだろ?アイツは俺が好きな訳じゃねぇんだよ。
『照れんでええのになぁ…ま、それより体調どうなん?』
「超元気、腹減った」
『ほな急がなあかんな、昼休み後15分やで』
「は、まじで?俺学食行って来る」
時間があんまり無いってのを良いことにベッドを飛び降りてアイツからの差し入れ納豆を持つ。
「名前、コレサンキュー」
『が、岳人先輩、』
「俺もう行くから侑士からお礼言っといて」
『起きた途端忙しいやっちゃな』
「うっせ!飯食わずにやってらんないっての」
俺には納豆があれば十分、アイツは侑士と一緒に居て誤解を解けば良い。侑士だって勘が良いんだからアイツと話せば絶対気付くし。
それが自然なんだよ。
アイツが好きなのは俺じゃなくて侑士だから。
そう思って学食へ走るとやっぱり頭痛は治ってなくて顔が歪んだ。
(なんだよコレ)(頭も心臓も痛いし)(ムカつく)
(本当は今日も名前と一緒に飯食べる筈だったのに)
(20090714)
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