俺とアイツ | ナノ


 


 03.



4限目終了のチャイムが鳴って昼飯昼飯と浮かれながら移動教室から戻る途中、外に見えたのはポテポテ効果音付きでトロ臭く歩くアイツ。
反対に飛び跳ねながら窓の方へ詰め寄る。


「名前」

『え?あーなんだ、向日先輩』

「初めて会った時から思ってたけど、お前ってかなり失礼」

『そんな事ないですよー』


これが侑士だったら浮かれてたって?クソクソ悪かったな俺で!


「っつーか昼飯なんだからもっと喜べよ」

『ど、どういう意味ですか…』

「のそのそのそのそ亀みたいに歩かず俺みたく軽やかに歩けっつってんの」

『……亀とか先輩こそ失礼ですよね』

「本当の事じゃん」

『もういいですー!アタシご飯食べに行くんで失礼します』

「あー待て待て待て、待てって!」


外方向いて足を進めようとするアイツを必死で引き止めて、怪訝な顔付きで振り返ればニッコリ。


「昼飯、一緒に食ってやる」



  □



「お前さー、一緒に弁当食べる友達も居ないの?」

『先輩、アタシの事友達居ない寂しい女とか思ってますか…』

「牛乳瓶底な眼鏡っ子だかんなー」

『眼鏡は関係無いです!アタシと向日先輩が一緒にご飯食べる方が違和感ですよ…』


名前をその場に待たせたまま教室まで弁当を取りに行って戻ると『何で一緒に?』そればっか繰り返す。
そんなに俺とじゃ嫌か?そりゃー侑士と比べればミジンコみたいなもんだよな、そうだよな!


「なんだよ、せっかくの俺の好意が迷惑だって?」

『そ、そんな事は言ってないですけど』

「じゃあ何」

『…先輩はアタシの事ストーカーだって思ってるじゃないですか…なのにご飯一緒に食べてくれたり、朝だって怪我の手当てだとか…普通は自分のお友達のストーカーだったら嫌いになると思うんですけど、』

「……………」


何だ?別に侑士と比較してる訳じゃくて嫌われてるって勘違いしてんの?
馬鹿じゃねぇの?


「名前、」

『は、はい』

「お前がストーカーだって思ってんのに違いはないから否定してやれないけどな、」

『はぁ』

「嫌いだったらわざわざ声掛けたりしないから安心しろ」

『……………』

「分かった?」

『……それって好きって事ですか?』

「調子乗んなよ」


そりゃ好きか嫌いかって2択なら、好きに入る。
たけどそれが恋愛感情かって言われたら素直に頷ける訳でもなくて、本当は可愛いくせに何を好き好んで牛乳瓶底な眼鏡掛けてストーカーしてるのか気になる、それが正直な気持ち。
意外とハッキリ物を言う失礼なとこだけは十分に分かったけど、どんな女なのか知りたい、興味深々ってやつ。


『嫌われてないなら良いんですけど…』

「うん?まさか感動した?」

『感動とかあり得ませんけど、どうせならストーカーも撤回して欲しかったです…』

「あり得ないって本当失礼だな」

『向日先輩、』

「なに」

『ついでに納豆が臭いんですけど』

「全っ然ついでじゃねーし!話飛びすぎ納豆に失礼すぎ」

『だって納豆嫌いなんだもん…!お弁当に納豆とか最低ですよ!』

「嫌い?お前納豆の事全然分かってないのな!」

『別に分かりたくないし…』

「名前、お前納豆の神様敵にしたぞ」

『意味分かんないです…』


こんな美味いもんを侮辱するなんて信じらんねーけど、それでも確かに楽しいと思ってる自分が居る。
普段キャーキャー騒いで跡部や侑士に媚びを売る女ばっか見てたからか、アイツの反応ひとつひとつが新鮮で無駄に構いたくなる。


「なぁ名前」

『何ですかー?』

「今日部活見に来るんだろ?」

『当たり前じゃないですか!日課ですもん』

「じゃあさ、侑士だけじゃなくて俺の事も見とけよ」

『え?』

「俺も応援欲しいじゃん」


侑士ばっかで俺はシカトとか寂しいだろ?
ちゃんと見てたら、侑士と話せる様にセッティングしてやってもいいぜ、なんて。


(や、やっぱり先輩アタシの事好きなんじゃ…)(侑士との仲取り持ってやろうと思ったのに止めだ止め)(良いですよーアタシは見てるだけで満足なんで)(お前可愛くねー!)(な、向日先輩も負けず劣らずな失礼さですよ!)




(20090626)


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