渡邊一家シリーズ | ナノ


 


 02. oneday/4月14日



「オサムちゃん、行って来るね」

『なぁ、お願いがあるんやけど』

「え?何、急いでるんだけど」



やっとのことで蔵ノ介を部屋から追い出して学校の支度してパンを片手に家を出ようとすると、今度はアタシの父親、基、十代目が制服の裾を持って引き止めてくる。



『“行って来ます、パパ”て言うて?』

「………やだ」

『えー』



忙しい朝に何用かと思えば何てくだらない…。
今更オサムちゃんの事パパだなんて呼べる訳がない。今まで散々オサムちゃん、って呼んできたもんだから恥ずかしいったら。

良い歳して『えー』だなんて口尖らせるけどシカトして、だけど仕舞いにはアタシの腕をがっちり掴んで『お願いやってーええやん減るもんちゃうしー』としつこくしつこく迫ってくる。正直ちょっと鬱陶しい。



「離して」

『言うてくれるまで離さへんでぇ』

「遅刻しちゃう」

『1日2日くらい休んでも平気や!そのくらいでとやかく言われる学校なんや辞めてしもたらええねん』



本当に本当に父親ですか。
オサムちゃんならリアルに1日離してくれそうにないや、なんて溜息吐いて観念した。



「…行って来ます、パパ…」

『! ええなぁ…やっぱりオサムちゃんの娘や、世界一可愛いわ!』

「もういいでしょ!離して!学校行くから!」

『今日も1日頑張りや!愛しとるでハニー!』

「変な事叫ぶの止めてってば!」



何で、我が家には変な人しか居ないんだろう。
況してやあれがアタシの父親で、裏世界で関西地区を代表する組の頭だなんてとてもじゃないけど思えない…オサムちゃんもさ、黙って日本刀持ってた時なんかは超格好良くて見直したのに。(銃刀法違反って何?)





『十代目はホンマお嬢が好きやねんなぁ』

「そうみたいだね…」

『俺も妬いてしまいそうやわ』

「勝手に言ってなさい」

『冷たいなぁお嬢は…今日くらい俺に優しくしてくれたってええのに』



そうだった。
今日は蔵ノ介の誕生日なんだった…本当なら早起きして蔵ノ介に朝食とケーキ作って「おめでとう」を言ってあげるつもりだったのに。(普段お世話になってないけど一応ね!)
そもそも5時に起きる蔵ノ介が悪い。それより前に起きれる訳ないじゃん!なに、初老?



『兎に角、学校行こかお嬢』

「うん、でも送りは要らないから」

『また歩いて行くとか言うん?』

「言うよ、学生の常識でしょうが」

『あかん』

「知らない」

『駄目って言うてるやろ』

「もう放っといて、よ!?」

『さぁ一緒に登校しよかー!』

「ちょちょ、やだやだ離してー!!あんな目立つ車で行くの嫌なんだって言ってるでしょー!!」

『お嬢、我儘は許さへんよ』

「いやぁぁぁああ!!」



荷物みたいに肩に背負われれば無駄に黒光りするセダンの後部座席に放り込まれて。
端から見れば拉致誘拐も同然な景色はこれまた渡邊一家の毎日のことでした。





(もう!いい加減にしてよ!)(いい加減にするんはお嬢の方やで)(何でよ!)(登下校中に変な男に襲われたらどないすんねん…ストーカーに付けられてたりしても心配や…)(ストーカーとか蔵ノ介のことじゃん)(あかん子にはお仕置きが必要やねんなぁ!)(きゃぁぁあ!!痛い!お尻叩かないでよ変態スケベ!!)(お嬢のお尻は絶品や)




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