渡邊一家シリーズ | ナノ


 


 01. oneday/4月14日



何だか良く分からないけど夢を見た。
牧場みたいな場所に居て、にわとりの大群がアタシ向かって走って来て『コケ、コケ、コケコッコーー』だなんて鼓膜破れるくらい鳴いてて超怖い。

必死に逃げて全力で走ってるのにバッサバッサ羽根拡げながら追いかけてくるにわとりはあっという間にアタシを追い詰めて、飛び掛かって来る。



「んぎゃああああぁぁあ!!」

『お嬢、起きた?』

「へ、」



目の前がにわとりの恐ろしい顔がドアップになった瞬間、見慣れた人間のドアップ。
急な視界の切り替わりに頭がついていかない中で初めて見る目覚ましが騒音ばりの音で『コケコッコーコケコケコケコッコー』ってずっと鳴り続けてた。



『今日は新しい目覚まし時計に変えてみたんやけどしっかり起きれたみたいやな、良かった良かった』

「…………」

『お嬢、にわとり目覚まし時計のにー君やで』

「…何がにー君よ、」

『ん?気に入らへんの?』

「そういう問題じゃないの!勝手に人の部屋に入って来ないでよ馬鹿っ!変態ーっっ!!」



漸く夢から覚めたんだと理解した頭で、思春期真っ只中の女の子の部屋に入って来た世話係の蔵ノ介ににー君を投げつけて追い出すんだけど軽く受け止めて涼しい顔。
その顔が憎ったらしいのなんのって!



『お嬢は朝から元気やなぁ?』

「誰のせいで要らない体力使ってると思ってんの!!」

『俺のせいや言いたいん?せやけどお嬢が遅刻したらあかんから起こしてあげてんのに』

「自分で起きれるんだから入って来ないでって言ってるじゃん!」

『ハハッ、照れてんねんな?お嬢の事なら隅々まで知り尽くしてるんやからそんな必要無いのに…小さい頃からの仲やろ?』

「厭な言い方しないで!セクハラで訴えてやる!」

『そんなん十代目が許す訳無いやろ?っちゅうかセクハラっちゅうのはこういう事やで?』

「ぎゃあ!!!」



サワサワと平気な顔してお尻を触ってくる蔵ノ介に堪忍袋の緒が切れた。



「馬鹿っっ!大嫌っっい!!出て行けー!!!」

『っ、』



グイグイと押し出しすとドアの向こうから聞こえてくるのは『お嬢の愛情は痛みが伴うねんなぁ』と勘違い過ぎる言葉。



「1回病院で腐った脳内診てもらえば!!」



今日が蔵ノ介の誕生日だろうと、これがいつもと何も変わらない渡邊一家の朝でした。





(俺が検査入院でもして寂しがるんはお嬢のくせに)(誰が寂しがるかっての!)(女の子はもっと可愛く喋らなあかんで?)(もう一々うっさい!)(ま、どんなお嬢でも可愛えけど?)(いい加減黙って!)





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