ベタ連載 | ナノ


 


 07.



もっともっと声を聞きたい

それって贅沢?




ベタ7. 受話器越しの声




光君の指が厭に忘れられなくて、部屋に閉じこもったアタシは枕を抱えてた。



「…どうしよう、」



ベッドに転がった携帯を横目にしては白石君に連絡しなきゃいけないのに、そう思うのに手が動かない。
携帯番号を貰ってあれだけ浮かれてはしゃいでたのに人の感情なんて所詮、行雲流水なんだ。(だからって白石君への気持ちが薄れた訳じゃないけどね)

別に付き合っても無いのに告白された訳でも無いのにそういう関係だと思ってるアタシ(誰が見てもそうでしょ?)は無意味な罪悪感がいっぱいで、浮気したくらいの後ろめたい心情だった。(白石君が完璧なくらい格好良いから余計他にときめいたとか申し訳ないの)



「あー…ヘタレなくせに浮気なんてするもんじゃない本当に」

『えー名前浮気してるの?』

「ま、ママ!!いつの間に入って来たの!娘の独り言盗み聞きなんて趣味悪いじゃん!」

『べっつに良くなーい?』



アタシの勘違い発言を聞いても飄々としてるママもそれなりに大物じゃない?良いんだけどさ、良いんだけど普通“浮気”がどうのとか言ったらもっとビックリするとか怒るとかしそうなものを…



『名前、良く聞きなさい』

「何改まって」

『女はねどれだけ男をモノに出来るかで質が問われるんだから若い内にしっかり遊ばなきゃ駄目よ』

「娘にどんな教育してんの…」

『ってことで今電話掛かってきてる白石君て子は本命なの?浮気相手なの?』

「は?電話掛かって来てんならさっさと言ってよ!!」



どうして我が家はマイペースな人しか居ないの!『結局どっちなのよー』って言ってるママは押し退けてリビングまで一直線。
何でこの家には子機が無いのかそれこそ腹立たしいけど白石君を待たせる訳にはいかない、折角向こうから連絡くれたんだもん。



「電話電話電話―――」

『えーと白石君だっけ?名前ちゃんとはどういう関係?まさか彼氏とか言わないよね、家では恋愛禁止令があるんだけど「ちょっとパパ!!」』

『、名前ちゃん!』

「何やってんの馬鹿じゃないの!?」

『パパは名前ちゃんに変な虫が付いたらいけないと思って、』

「白石君を虫扱いしないでよ!馬鹿!大嫌い!」

『だ、大嫌い……名前ちゃんが嫌いて、パパ嫌われたの…?』

「良いからあっち行って!」



人の電話を勝手に取って勝手に喋るパパはどれだけ非常識なことか。しかも恋愛禁止令とか何なのそれ。(ああもう恥ずかしい!)



「も、もしもし白石君…?」

《クックックッ…》

「ご、ごめんね、変な親で…」

《全然、名前ちゃんはお母さんよりお父さん似やねんなぁ?》

「…あんまり、嬉しく無い」

《ソックリやで?ククッ》

「わ、笑わないで…」



幾ら笑われたって電話越しの声に白石君だって思うと、それだけで嬉しくてドキドキして。(でもやっぱりパパに似てるって言うのは喜べない)



《堪忍堪忍、せやけど無事に家着いたみたいで安心した。いつまで経っても連絡来おへんから心配してたんや》

「あ、」



わ、忘れてた…!
そうだ、アタシ光君の事があって白石君に何てメールしようか悩んでたって言うのに、電話でとか余計言いづらいじゃん…!



《名前ちゃんの携帯聞いてへんかったからオサムちゃんに家電教えて貰ってん。勝手にごめんな》

「ううん、それは全然平気、なんだけど…」

《うん?何やあった?》

「…べ、別に、大したことじゃないんだけど」

《……言いたくないなら言わんでもええねんで?》

「――――――」



やっぱり白石君は優しくて、連絡しなかったアタシを怒る訳でもなく気使って心配してくれる。
胸がきゅーって苦しくなって乙女モード全快。



「あ、あのね、明日聞いてくれる…?」

《うん》

「じゃあ明日、話すね」

《分かった。ほなまた明日って言いたいとこやねんけど》

「え?」

《後で俺にメール入れて欲しいねん、名前ちゃんの番号教えてくれたら嬉しいんやけど…》

「うん分かった!…白石君?」

《うん?》

「…ありがとう」

《いいえ。ほな、おやすみ》

「おやすみ」



カチャ、と受話器を置く音が聞こえて漸く緊張が解ける。

白石君と電話したんだ…光君の事も明日話するって約束して…
“言いたくないなら言わんでも”って!また心配して貰っちゃったんだよ、アタシ幸せ過ぎだよね、やっばーい!相思相愛過ぎて困るー、だなんて壁をバシバシ叩いてると恨めしい視線。



『……………』

「な、何よ…パパもママも」

『白石君が本命ってわけ、へー』

「ま、ママ!本気で浮気した訳じゃないんだからね!」

『…あーあ、名前ちゃんも昔は可愛かったのに…』

「今は可愛くないみたいな言い方止めてくれない」

『パパも失恋か…やだやだ白石君とか認めないもんね』

『父親は娘にあっさりさっぱりきっぱり捨てられる運命なんだから諦めなさいよ』

『名前ちゃーん!ママがいけず言うー!』

「ああー鬱陶しい!!」



ママも面白がってないで何とかしてくれれば良いのに浮気相手が気になるみたいで、パパも男な白石君みたくしゃきっと格好良くなればいいのにじめじめしちゃって本当に鬱陶しい。
これじゃあ白石君との電話の余韻に浸れないじゃん!(白石君!やっぱりアタシとパパは似てないと思います!)


(20090604)



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