05.
触れた肌からは
愛がいっぱい溢れてた!
ベタ5. 心配性
だらーって思わず涎が出ちゃいそうなのは体操服でも白石君が格好良いから。
こんなだっさいジャージをここまで見事に着こなすのは誰にも無理ってもんじゃない?
半袖から覗く腕はパッと見華奢なのに実は筋肉があって、少し緩めのジャージから想像出来るのはスラッと長く伸びた脚。白石君、最早サイボーグなんじゃないの?
「…それにしても、」
何で体育は男女混合じゃないんだろう。女子は体育館でバレー、男子はグラウンドでソフトボールだなんて…体育館からも全然グラウンドが見えるから構わないっちゃ構わないんだけど…やっぱり一緒に居たいじゃん?
他の女の子だって半数の子はバレーそっちのけでグラウンドに夢中だし。まさか皆が皆白石君狙いって事は無いでしょうね?そんなの嫌だ、嫌だけど。
(せやから会わせた無かったのに)
白石君に嫉妬して貰えるのはアタシただ1人なんだもん。(ですよね?)
このときめきは絶対誰にも渡さない、なんて。
あ、白石君と眼合った。遠くから手を振ってくれる白石君が堪らなく愛しくて、本当に格好良いなぁとか思ってると後ろからは叫び声。
『危ないっ!!』
「え―――…っっぶっ!!」
『だ、大丈夫!?』
「……いったー……」
何が何だか分からないまま振り返ると、物凄いスピードで飛んできたバレーボールがアタシの顔面直撃。
アタックしたんだろう女の子が駆け寄って来て『ごめんね』『大丈夫やった?』とか言ってくるけど大丈夫な訳無いでしょうが!!
顔の何処がって言うより顔全部が潰れたみたいに痛くて、てめぇわざとだろ!とか、こんな落ちは必要ないのに、とか、脳裏に浮かぶのは荒々しい文句ばっかり。
だけどアタシは今日転校してきたとこだもん、そんな事は言えない。
「だ、大丈夫だから…」
『ホンマごめんなぁ…保健室行く?』
「ううん、本当に大丈『名前ちゃん!!』」
「、」
『ボール当たったん見えてんけど大丈夫なん!?』
「―――――」
アタシを心配してくれる女の子達を掻き分けて腕を掴んだのは白石君で。
そんな憂愁な顔して、わざわざグラウンドから来てくれたの?
『名前ちゃん、何処が痛いん?』
「だ、大丈夫だよ?」
『無理せんでええねんで…バレーボールは硬いんやから痛いに決まっとるやろ?』
「……う、ん」
『それから自分等。スポーツに怪我は付き物やけどもう少し気を付けなあかんのちゃう?もし女の子の顔に傷なんや作ってしもたら責任取れへんやろ』
『…ご、ごめんなさい』
『これがホンマに傷でも出来てたら俺が許さへんかったで』
し、し、白石君……。
アタシの為にそこまで言ってくれるの?“俺が許さへん”ってもう、もうもう旦那の台詞じゃん…!!
『ホンマにごめんな、白石君も…』
『俺に謝るんは可笑しい話やけど分かったんなら行き?名前ちゃんには俺が着いとくから』
『うん、白石君宜しくな』
『……ハァ』
泣きそうになって向こうへ行く女の子達を見ると、こういう落ちも実は有りじゃんって思ってたのに何だか罪悪感が込み上げてくる。いや、痛いんだよ、本当に痛いんだけどさ。
「し、白石君、アタシは大丈夫だし、そこまで言わなくても……」
『名前ちゃん…優しいのは分かるんやけどな、心配で堪らへんかった俺の気持ちも分かってくれへんかな…』
「白石、君…」
『あー…どうやったら変わってあげれるんやろか…』
「っ、」
『名前ちゃんの痛みが早く無くなりますように』
アタシのおでこと鼻が白石君のソレにぶつかって、白石君は綺麗な顔で眼を綴じた。(白石君!白石君のせいでもうアタシの顔は痛いんじゃなくて熱いんですけどどうしたら良いんですか!)
(20090529)
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