ベタ連載 | ナノ


 


 04.



拗ねたところも愛しくて

ひたすら君に夢中




ベタ4. 拗ねた一言




『名前ちゃん、一緒にお昼食べへん?』

「白石君が良いなら、」

『俺は一緒が良いんやけど』

「……あ、ありがと」



ほな行こか、って白石君はアタシのお弁当が入った鞄を持ってくれて教室を出る。

勿論お腹は空いたんだけど正直そんなこともどうでも良くなるくらい今日は心臓が悲鳴を上げてて、授業なんかこれっぽっちも分かんなかった。

保健室での一言に、あれは告白なの?返事するべきなの?とか舞い上がった感情がぐるぐる巡って、だけど白石君はその後何でも無い顔しちゃってて。
やっぱりアタシKYかもしんないって思ってると授業中穴が開きそうになるくらい見つめられて『黒板見る時間が惜しいわ』だとか。それってアタシを見ていたいからって事でしょう?そうでしょう?(この世にこんなイケメンが存在するなんて今まで勿体ない時間を過ごした気がするんだけど?)



『この辺でええかな』

「、ここ…」

『ええ場所やろ?遅咲きやってん、花見気分も有りやんな?』



背中を追い掛けると着いた場所はテニスコート横にある桜の前で、殆んどの桜が散る中1本だけまだ花を付けてた。
風が吹いて花弁を背負った白石君は王子というか何ていうか、日本が誇る世界遺産なんじゃない?じゃあアタシが白石君と付き合うことになったらアタシも世界遺産?(いやいや誰にも見せないけどね)



『名前ちゃん、桜嫌いやった?』



毎度馬鹿過ぎる思考を浮かべては夢中になって、憂愁に首を曲げて覗いてくる白石君にまたドキッと心臓が止まる思いをさせられる。



「う、ううん!!好きだよ、綺麗で見惚れてただけ」

『そか、良かった』

「だけどアタシ、花より団子キャラだよね」



冗談言って白石君もハハッって笑ってくれた、のに。



『うん、俺も花より名前ちゃん、かな』



はぁ…ノックアウト。
今日何回目のときめきでしょう?
幸せが脳内も身体も侵して、口唇の震えが止まんないとか重症じゃない?


『まぁ、話は食べながらにしよか』

「うん」

『名前ちゃんは大阪初めてなん?』

「えっと、小さい頃来たことあるみたいなんだけど全然覚えてなくて」



だから初めてと変わんないかなぁ、広げたお弁当の卵焼きをお箸で掴んで言いながら卵焼きを口に運ぶと、ガリッと硬い食感。
卵焼きが硬い?え?



『フーン。初めてなんや』

「!」

『……財前、何やってるんや』

『何て、ただの通りすがりですわー』



硬い食感は卵焼きじゃなくてお箸だったと思えば真後ろには口をモゴモゴ動かしながら白石君と話す黒髪の男の子。



『ただの通りすがりで知らん子の卵焼き食べたりせんやろ』

『俺今日パンやったんスわ』

『関係ない』

『そうですー?何や部長が転校生にちょっかい出しとるって噂聞いたんで見に来たんですわ』



つまり彼がアタシの卵焼き食べたってこと?この人もかなりのイケメンなんですけど!じゃなくて、間接キスってやつじゃん?しかも白石君がアタシにちょっかいって…あああ、愛を感じずに居られない。



『噂も強ち間違いやなかったみたいやけど?』

『財前黙りなさい』

『ククッ、何怒ってるんですー?』

『ハァ…名前ちゃん堪忍な、テニス部2年の財前や悪い奴ちゃうねんけど』

「え、あ、気にしないで?」

『部長ついでに宜しくお願いしますわ名前先輩?』

「、」



“名前先輩”?
やだ、ちょっとときめく…!だけどダメダメ、アタシには白石君が居るんだもん。(決して勘違いじゃないはず)



『ほな俺は教室戻るんで』

『早よ行き。っちゅうかアイツも連れてってくれへん?』

『あー…謙也せんぱーい、覗いてるんバレバレやでー』

『え!?』

『謙也、早よ帰り?』

『の、覗いてた訳ちゃうからな!偶々やねんから!』



テニス部の部室だと思われる建物の影に居た人は『白石、堪忍!』て謝りながら走って行って、財前君も薄ら笑いを浮かべて帰ってく。
結局、何だったの?あ、もしや皆さんアタシに惚の字ってやつですか?(自信過剰バンザイだよ)



『名前ちゃん、騒がしくなってしもてごめんな?』

「や、アタシは大丈夫だから」

『……せやけど』

「うん?」

『財前と謙也、男前やったろ?』

「う、ん…それなりに?」



まさかこれってば嫉妬なの?
視線を外す白石君に期待してニヤける口を制止させる。



『…せやから会わせた無かったのに』



だけどその言葉を聞くと上がる口角は止められなくて口元を手で覆うアタシ。
桜色の世界は嘘みたいに輝いた。
(白石君、もっと嫉妬して下さい!)


(20090525)



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