02.
隣の席は好きな人
上手く行き過ぎる展開に幸あれ!
ベタ2. 席は隣同士
心臓がドキドキと言うより、全身の血液が脈打ってるのが分かるくらい尋常じゃない。
だってね、だってね、
『名前ちゃん、教科書一緒に見よか?』
隣にはアタシの王子こと白石君。
担任の渡邊先生に教室まで案内してもらって、白石君を見つけただけで世界は薔薇色だったのに、
(オサムちゃん、俺と席隣にしてくれへん?俺しかあかんのや)
なんて!!
まっさか白石君自ら希望してくれるなんて誰が思う?その瞬間眼が飛び出そうだし変な汁が出てきそうだし、兎に角嬉しすぎて手が震えた。(やっぱり王子と姫は結ばれる運命にあるのね)
『名前ちゃん?』
「あ、ご、ごめん…何だっけ?」
『聞いてへんかった?俺1人で喋ってたとか寂しいやろ』
ああああ…寂しい、寂しい?
アタシと会話出来ない事がそんなに嫌なのね、辛いのね…
ごめんね話聞いてなくて…だけど大丈夫、苦笑する白石君もすんごく格好良いし!
『せやから、一緒に教科書見るて聞いたんやけど』
「え、いいの?」
『まだ届いてへんのやろ?俺ので良かったら』
「あ、有難う…」
もう!何でそんな優しいの?アタシ舞い上がっちゃうんだけど!(もう十分舞い上がってますけどね)
アタシの机と白石君の机の真ん中に置かれた教科書が結婚式の誓約書に見えてきた、なんて馬鹿な考えを浮かべてると差し出されたのは白石君のノート。
「白石君?」
『(しーっ)』
「!」
しーって…静かにって意味なのは分かる。今は授業中だし私語が良くないのも分かってる。
だけど普通ね、人差し指立てて“しーっ”てする時は自分の口の前でするもんじゃないの?白石君の人差し指は自分じゃなくアタシの口唇に触れてる。やだやだ軽くキスしてる様なもんじゃない…!!
照れずに居られないアタシなんかお構い無しに指を離した白石君はそのまま人差し指でノートをトントンと叩いた。
何?私語は駄目だから筆談てこと?
真っ白なページの隅っこに書かれた文章は、
(ボーッとしてたけど、ホンマに侵食されたんちゃう?)
侵食て何のこと?白石君になら侵食されまくりなんだけど。浮かんだ疑問符をそのままノートに書いて渡すと、直ぐにまた返事をくれた。
「……………」
思わず言葉を無くして生唾を飲む理由は。勿論、肘を付いて眼を細める白石君のせい。
(俺のバイ菌が名前ちゃんに侵食したんちゃうかってこと)
そんな事言われたら何て返せばいいの?逢って数時間しか経ってないのに「はいそうです」なんて肯定出来ないでしょう…?
「…………」
『…………』
黙ったまましどろもどろするアタシを見兼ねてか、白石君は続けてノートに文字を綴ってく。
今度書かれた文章がまた、アタシを心底幸せへ導いていくのだ。
(因みに初期症状は俺ん事全部知らなあかんっちゅーもんやから宜しくな?名前ちゃんに拒否権は無しやから)
「、」
どうしよう、こんな夢みたいな展開あっていいの?歓喜の戸惑いを隠せないアタシに白石君は小言でとどめの一言。
『(名前ちゃんは俺に侵されるんや)』
「っっっ!!!」
昇天して遠退いていく意識、『名前ちゃん!』と呼んでくれる白石君の声、アタシは絶頂真っ只中でした。
(白石君に侵されたいし犯されたいです!)
(20090512)
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