01.
漫画みたいな恋こそ
アタシの理想なのだ!
beta is happiness
ベタ1. 出逢い
高校3年生に進級する春、桜も綺麗に咲いてるわーなんて思ってると言われた一言。『ごめんね、パパ転勤になっちゃった』後頭部を掻きながらウインクする父親に怪訝な視線を向けると『名前ちゃんが虐めるー!』なんて足にしがみ付いてくるから蹴り飛ばしてやった。
春なのに暑苦しい、
春なのに鬱陶しい。
そんな思いの中アタシは東京から未知の世界、大阪へと飛び立った。
『名前ちゃん忘れ物無い?!1人で行ける!?』
「地図あるんだから行けるよ、っていうか徒歩5分なんだから迷う方がどうかしてる」
でも心配だもん、とか毎度ねちっこく絡んでくるパパを適当にあしらって、ママが用意してくれたお握り片手にいざ学校へ。
『名前ちゃん!迷ったらすぐ電話するんだよパパ迎えに行くから!』
「はいはい、パパこそ迷わない様に会社行かなきゃダメだよ」
『名前ちゃんがパパを心配してくれてる…!!パパは感動だよ!今日は学校も会社も休んでパパと名前ちゃんの愛を育むべきだと思うんだけど!』
「行って来ます」
うだうだうだうだ続けるパパは放っておくのが一番ってことで玄関を開ける。
っていうか何でアタシのパパはあんなキャラなのか分からない。父親参観の時なんか全身真っ白で、スーツもシャツもネクタイもベルトまで白一色で周りの人からも白い眼で見られてたっけ…唯一、歳の割に若く見られる顔な分マシだったけど…
「あーしかもアタシが当てられたら超手振ってて隣のお父さんに怒られてたよね…っっぶっ!!!」
良い歳して赤の他人に怒られるだなんてどうかしてる、なんて思ってたからか、パパの呪いにも取れる様なタイミングでアタシは派手に転んだ。
「い、ったー…」
脛は擦り剥いて血が滲むし、周りはそれこそ良い歳して転ぶなんて、って顔して見てるし本当最悪。
今日は転校初日なのに脛に傷とかあり得ない!イライラとズキズキする足を堪えて立ち上がろうとすると、
『立てる?』
「え?」
『あー、血出てるやん』
「―――――っ、」
ドラマとか漫画で良くありそうなシーン到来。
目の前にはアタシを心配してくれる王子。っていうか本当に本当に格好良いんだけどどうしよう…!!
『こんなとこでアレやけどバイ菌入ったらあかんし我慢してな?』
「、」
『染みると思うけど我慢やで』
言うなり王子は鞄から消毒液と絆創膏を取り出して、手際よく処置をしてくれる。なんだかんだで大したことない怪我なのにこんなに丁寧にしてくれるなんて…格好良い上に優しい…!え、それとも王子はアタシに一目惚れとか?放っておけないんだよ、みたいな?きゃーどうしよう!!(パパそっくりとか信じないから!)
『はい終わり、よう頑張ったな』
「あ、有難う…」
『どういたしまして』
「……………」
ちょっと。ちょっとちょっとちょっと!
頭撫で撫でとか反則じゃないんですか?否、もう王子がアタシに触りたかったってことですよね?そうなんでしょ!?
ああああ、だけど緊張して全然喋れない…もしかしてこれが恋?恋ってやつ?
『標準語っちゅうことはもしかして転校生なん?ウチの制服着てるし』
「あ、うううん!今日、から…」
何吃ってんのアタシ…!!
もっとちゃんと喋って可愛いとこ見せなきゃ駄目じゃん!(だけど相手は王子なんだよ!)
『ハハッ、緊張してるん?』
「ちょ、ちょっとだけ…」
『そか。せやな、消毒はしたけどバイ菌入ったかもしれへんから』
「へ?」
『俺のバイ菌、入ったかもやで?』
ああ…堕ちました。
恋ってやつっていうか確実に恋です。好きです。大好きです。
『俺、白石蔵ノ介っちゅうんや。宜しくな?』
アタシは彼に逢う為に大阪に来たんだと運命を感じた今日。
(白石君!アタシと愛を育んで下さい!)
(20090506)
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