13.
触れる度に感じるのは
極端な熱と愛
ベタ13. 白石君の笑った顔
見透かした眼、弧を描いた口唇、
視線を外すことは許されなくて、だけど酸素を吸い込むことすら忘れたアタシは白石君を映しながらユラユラ瞳孔が揺れる。
『…そろそろ、帰るな』
「え、」
『ご飯もご馳走になって長い間お邪魔したし』
「そう、だよね…もう遅くなったもんね…」
さっきまで6を指していた時計はいつの間にか8と9の間にあって、辺りを真っ黒な世界に変えたのも頷けた。
『今日は有難う』
「アタシは別に、」
『楽しかったから』
「……………」
さっきから笑ってることに変わりはないのに、今度は無垢に笑って色を変える。
逐一心臓が跳ねるのはそれだけ白石君が綺麗だから?
『あれ、蔵りん!鞄なんか持ってもう帰るの?』
『はい、今日は色々と有難うございました』
『えー!今日はパパと一緒に寝る予定だったのに…』
『ハハハ、流石にそれはご迷惑掛けますから』
リビングに下りてから白石君はパパにもママにも丁寧に『有難うございました』ってお礼を言ってた。最後まで完璧を貫く姿はうっとりしない訳ないけど、だけど…
『ほな名前ちゃん、また明日』
「うん、また明日…」
『今日はゆっくり休んでな』
「白石君も、パパに付き合わせちゃって疲れただろうからゆっくり休んでね」
『付き合わせてしもたんはこっちやし、せやけど有難う』
玄関を出て家の前で白石君を見送って。
『じゃあ、』背中を向けた白石君を見ると思うより先に身体が動いてた。
『、名前ちゃん?』
「、あ」
『どないした?』
うん?って首を傾けられて気付けば、アタシの手は白石君の袖を掴んで。控え目なら可愛いのにがっちりがっつり掴んでる辺り知らず知らずでもアタシの性格が出まくってる。(やっちゃったね)
「ご、ごめんね…」
『ううん、ええねんけど』
「けど…?」
『勘違いしてまうよ?』
それはもう是が非でも勘違いして下さい、っていうか本心は帰って欲しくなくて仕方ないんだけど…!
どんなに格好良くて綺麗で見惚れちゃったとしても、そんな事を思う以上に兎に角離れたくない、その気持ちのが勝ってた。
『ホンマ嬉しい事ばっかしてくれるんやな?』
「、嬉しい?」
『うん。嬉しい』
控え目じゃなくても、嬉しい?
引き止めたこと、迷惑じゃない?
白石君の優しさにときめいて、改めて自分の取った行動に恥ずかしくなってると、『名前ちゃん』その声と同時に白石君の口角が真っ直ぐ一の字に戻ってアタシの前髪を掬う。
白石君…?
そんな顔で見つめられるとアタシが勘違いしちゃう。緊張するけど、白石君とのチュウならいつでも大丈夫、身も心も全部捧げる準備は出来てるから…!(パパ、ママ、アタシは大人の階段一歩上がります!)
「…………」
『ほな、おやすみ』
「うん、おやす…み?」
手を振りながら行っちゃう白石君。そして取り残されたアタシ。
あれ、ちゅ、チュウは?
リアル勘違いってやつなの?
「し、白石君!」
10メートルくらい離れた場所から笑顔でバイバイ、本当の本当にチュウは無しらしい。
「まじですか…」
ボソッと呟いて儚い期待に項垂れるけど、
『明日の朝、迎え行くから待っといて!』
左手を添えて大きな声で言ってくれたからアタシも全力で手を振った。(白石君!チュウは後のお楽しみですよね、アタシ待ってます!)
(20090703)
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