ベタ連載 | ナノ


 


 10.



さっきより今、今より明日

もっともっと募る想いはどれだけ膨らむの?




ベタ10. 変質者と白石君




白石君の事を考えていたいのに頭の中は光君が言ってた変質者で埋まってる。
考えたくはないけど考えずには居られないキーポイントの“真っ白”にいつぞやの記憶が甦ってきた。



『名前ちゃん、もう放課やで?』

「へ!あ、本当だ…」

『もしかして、昼休みに聞いた変質者の心配してたん?』



来週からテストだからしっかり勉強しなさい、SHR基、先生の長いお話はいつの間にか終わってたらしく目の前には鞄片手に憂愁な白石君。
白石君てばどんな顔してても綺麗で困っちゃう。(それがアタシに向けられたものだって思うと自惚れるしかないじゃんね!)



「うん、まぁ…そうかな…」

『せやな…女の子やし怖いのも当然やんな』



うん。怖いっていうか別の心配なんだけどね。
だけど白石君がアタシを思ってくれるんなら余計な事は言いません。



『俺でも、不安?』

「、え?」

『俺が居るって言うても不安やろか…?』

「白石君…」



何でもう甘い言葉を次から次へとくれるの?アタシ本当転校してきて良かった。(だけど尚更変質者に心当たりあるとは言えない)



『今日から名前ちゃんが嫌や言うても離れへんから。登下校も一緒する』

「でも部活が…試合も近いんでしょ?」

『テスト期間中やから朝練だけやねん。朝はちょっと早くて申し訳無いけど…ええかな?』



白石君と一緒なら朝が早かろうが夜遅かろうが地の果てまでご一緒致します!きゅーんと胸をときめかせて乙女全開なアタシなのに、教室の隅で帰り支度をする女の子達の会話で現実に引き戻された気がした。

(えー?アンタも会うたん?真っ白なスーツの男!)

(昼休みに学校ウロウロしてて何や白石君の事聞かれてん)

何ですって?真っ白なスーツな男が白石君の事聞いてきた?しかも学校ウロついてる?
9割方疑心が確信に迫って、こうしてる場合じゃないって。(もし白石君が鉢合わせなんかしちゃったら恥ずかしすぎて生きていけない!)



「し、白石君!ごめんね、アタシちょっと緊急事態発生だから行くね!」

『え、名前ちゃん?』

「ごめんなさーい!」



猛ダッシュで教室を出ようとするとナイスタイミングでドアが開く。いつから自動ドアになったんだろ、そんな事考えて走ってるとドア越しには見知った顔。



『あー名前先輩、』

「光君、ごめん!退いてー!」

『は?』

「また明日ね!」



光君もアタシを心配して迎えに来てくれたんだろうけど(きっと勘違いじゃないでしょ?)ごめんね、アタシには遣る事があるの…

本当なら白石君と光君の間で一緒に帰りたかったんだけどね、とりあえず真っ白な変質者探すのがアタシの使命だから。(大袈裟な美化表現大好きなの)



「…電話掛けた方が早いかな、」



校庭には出てみたものの、それらしき姿は無くて。既にもう帰っちゃってるかもしれないし、闇雲に探すよりは便利な携帯電話に頼る方が良いかなって発信ボタンを押すと、テニスコートの方から聞こえる『ハニーからラブコールだよ、早く出てダーリン』っていう何とも気持ち悪い着信ボイス。
良い歳してそれはないでしょ…?
白石君と光君を撒いて良かったとは思わずに居られないくらい顔が歪んでく。



「……パパ、何やってんの」

『え!?名前ちゃん!?今電話が掛かって来たのに何でこんなところに…!』

「まずはパパが此処に居る理由を聞きたいよ」



あの日の授業参観と同じく、噂通り全身真っ白でグラサンを掛けた不振人物極まりない姿は学校には似つかわしく無い。
隠れたつもりで居たらしいけどこうも悪目立ちしてるのに隠れるも何も…(これが本当にアタシのパパだとは)



『此処に居る理由?そ、それは…』

「アタシの事付け回した挙句、白石君の事嗅ぎ回ってたらしいじゃない」

『う……』

「信じらんない」

『だ、だってパパは名前ちゃんが心配だったんだもん!!善からぬ変態に捕まってあんな事やこんな事されたらどうしようって…』

「変態はパパじゃないの」

『最近名前ちゃんがパパに冷たくなったのも白石君のせいなんだ…白石君が名前ちゃんを唆す迄はパパが一番だって、パパと結婚するんだーって毎晩一緒に寝てたのに…』

「それ全部妄想だし」

『だから悔しくて白石君の事調べてたのに皆が皆口揃えて“格好良くて優しくて良い男”だなんて言うからもっと悔しくなって…』

「それで白石君本人見に来たって?」



何処の世界に口をへの字にして泣き真似する38歳の父親が居るんだか。
白石君の方がよっぽど大人だし、しっかりしてるし…少しは爪垢分けて貰うべきなんじゃないの?
って、そんな悠長なことしてる場合じゃなかった。



「パパ帰るよ」

『え、帰る?』

「当たり前じゃん!」



こんなとこ白石君に見られてたまるもんですか…!アタシの薔薇色学園生活を台無しにされたら困るんだから!



『もしかして名前ちゃんはパパを迎えに来てくれたの…?白石君よりパパだって、やっと気付いて……』

「それは誤解だか『名前ちゃーーーーん!!!』」

「ぎゃあ!!」



場所を弁えず飛び掛かって来るパパのせいで頭は地面と仲良くしちゃってものすんごく痛い。
苛々も最高潮に達してパパを突き飛ばそうとした瞬間、



『名前ちゃん!』

「、」



白石君の華麗なストレートでアタシの上から吹っ飛んでいったパパ。



『あー…めっちゃ飛びましたよ部長』

「あ、あの、」

『名前ちゃん大丈夫?せやから一緒に帰るて言うたのに…怖い思いさせてごめんな…』

「白石君……」

『これでも心配しましたわ』

「光君……」



無事で良かった
すっぽり包んでくれる2人の薫りがアタシを幸せの世界へ導いた。
だって、変態から守ってくれるなんて予想通り格好良かったんだもん…可愛いヒロインは格好良いヒーローに助けられる運命なのね!(白石君!もっと強く抱き締めて下さい!)


(20090617)



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