carlin' you | ナノ


 


 14.



残り10分

10分後には酒気帯運転のトラックに引かれて名前は死ぬ。その前に俺が廃鎌で首を取るんや。



「この辺に居る筈やねんけど…」



事故地点付近で辺りを見回して目標となる名前を探すと50メートル向こうに歩く姿が見えた。



「…名前、」



3日ぶりに見る姿は何も変わってへんかったけど心無し曇りがちな顔をしてた。
俺のせい…?否、仮にそうやとしても関係無い。俺は自分の仕事を、オサムちゃんが与えてくれた新しい命を全うする為に生きてきたんや。
名前を殺せば後は1人、アイツだけやねん。



「悪いけど、俺の為に死んで」



一刻、一刻、
迫り来る時間に生唾を飲んで一直線。名前に刃を向けるまで猪突猛進に突っ込んだ。


後少し


後5メートル余り


廃鎌を振り上げた時やった



『…蔵?く、蔵ノ介っ!!』

「!!」



名前が俺の名前を呼んだんや
知る筈無い“蔵ノ介”っちゅう名前を



『蔵ノ介、蔵ノ介っ!アタシの話聞いて、お願い……っ!!』

「……、名前っ!!」



その瞬間、トラックが突き抜けた










“蔵ノ介”

“これあげるから遊ぼうよ”

“早く逃げて”


今、やっと繋がった
あの子の名前は“名前2”


“名前2?変な名前やな”


変やと思たんは逆さまやったから
自分がアイツの娘やと分かったら嫌われるって小さいながら理解してたんや

俺は名前に、あの時からずっと恋をしてた











『く、ら、蔵、ノ介、』

「……名前?」

『痛い?痛いの?どっか痛い…?』

「…痛、ないよ…」



頭で考えるより先に身体が動いて、
トラックから名前を避けてた

押した身体は軽くて簡単にトラックを避けてくれた
対して俺は名前に触れた一瞬以外トラックをも擦り抜けるけど、息が続かへんくらい苦しくて苦しくて



『蔵ノ介、アタシ言う事があるの、』

「…ん、」

『あの時、約束守れなくてごめん、ね、』

「…今、逢うたんやから…約束、守った、やろ…?」

『やだ、蔵ノ介が死んじゃったら、意味無い、じゃん…!』

「はは…俺はもう、死んでんねん…」



前、ロット2で死神が消えた話を思い出して。こういう事かって…
契約違反者はその場で消えるんやって分かった。消えた死神がどんな状況でどんな思いやったんかは知らへんけど、俺はそれで満足やねん。

あの時助けて貰ったんやから今度は俺が、名前を助けたる。それで死んでしまうなら本望や。



『アタシ、ね、蔵ノ介が人間じゃないって、知ってたよ…』

「…そ、なん…?」

『知ってたけど、聞いたら蔵ノ介は居なくなっちゃいそうだから、聞けなかった、』

「そ、か…ごめん、な?」

『人間じゃなくても、何でも、アタシは5歳の頃から蔵ノ介が好きで、初めて会った日、好きな人が居るって言ったのは、蔵ノ介のこと、だったんだよ…?』

「うん…」



俺が名前を好きで、名前も俺を好きやって言うてくれて、それだけで幸せや。

父さん、母さん、ごめん
仇は取れへんかったけど、俺、短い人生で好きな人が出来たんやで?俺の恩人や…人間の時も死神の時も同じ女の子好きになったんや…幸せ過ぎる事やろ?花手向けはそれで許してくれへんかな…?



『白石ぃ、ええ格好しとんなぁ?』

「、オサ、ム、ちゃん…?」

『契約守らへんから仕方ないねんな?』

「…………」

『俺はお前の事、結構気に入ってたんやけど残念やわ』



爪先から身体が消えていく中で薄ら見えたのはオサムちゃんで、相変わらずな上げっぱなしの口角にやっぱりムカついた。せやけどそこで憐れみを向けられたらもっとムカつくんやろうから、それでええんや。



『やだ、蔵っ!消えちゃ嫌だよ、蔵ノ介っ!!』

「…名前、」

『な、に?』

「有難う…」

『―――――』

「…好き…やで…?」





最後になったけど

今更やけど

ずっと認められへんかったけど





「愛、してる……」





君が

好きで

好きで

大好きで

どうしようもないくらい愛してました





『くらのすけぇぇぇっっ!!!』





君に逢えたのはやっぱり運命だったんだ
理由なんてそれでいい





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