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私は君じゃなきゃダメ
君も私じゃなきゃダメでしょう?
愛ってそんなもの
pulsation.13 一生涯な愛を!
できちゃった、って。
リアルにアタシ何言ってんの?
先週女の子の日も終わったとこなんだけど。
「でも光がいけないんだ…」
もう少し、考えてくれたらいいのに自分の欲求(欲望かしら)しか頭に無くてさ、もう卒業目前なのに何も決まらないアタシが不安だったりだとか、光と離れちゃうのが辛いとか、そんな純な気持ちを見事に踏み躙るんだもん。
嘘が良くないのは分かってるけど勢いで言っちゃったし、何なら光も焦ればいい。
もし今本当にできちゃったとしても堕ろすしか出来ないんだろうけど…アタシの事、ちゃんと考えてくれるのかなって。アタシはアタシで産んでちゃんと育てられる自信も無ければ堕ろしたくない、なんて偽りの話に矛盾を並べながら悩んでると切なくなった。
気を付けてたって運命であるならできる時はできるんだろうし、無理なら始めからそういう行為をしなければいい。そうは思うけどやっぱり好きな人に愛されたい、愛したいという本能には逆らえないんだ。
全てに中途半端過ぎる自分が嫌になって心底ムカついた時、携帯が振動して光からの着信を知らせる。
「……なに、」
《何処?》
「自分で探すとか、しないの?」
《無駄な時間過ごすつもり無いわ》
「……………」
アタシは自分が吐いた嘘にまで悩んでたって言うのにマイペース過ぎる光が頭に来る。
一応、光のせいで部室飛び出して行ったんだから探すくらいしてくれてもいいのに…無駄って何?
光は好きだけど、そういうとこ嫌。光にとってアタシって何なの?都合の良い彼女?
《何処やって聞いてんねん》
「やだ、言わない」
《いつまで意地張るんですか、ゆき先輩》
「だから!そういうの超ムカつく…」
普段は歳上だろうと呼び捨てで敬語も使わないくせに、何でこういう時はそんな言い方するの?
嫌味言って煽って、そんなに楽しい?
《……ちゃんと話したいのにゆきが拗ねくれて聞かんからやろ》
「はな、し…?」
《俺等にとって大事な話なんやからゆきん事探して時間喰うん勿体ないやろ》
「ひかる……」
じゃあ始めっからそう言ってくれれば良いじゃん。
悪態つきたいのに何かそれだけで感動しちゃって言えなくて。“俺等にとって”って、2人の事だって考えてくれてるのが幸せで、“勿体ない”って、早く話がしたいって言ってくれたのが凄く凄く幸せで…結局は光の全部が好きだって思っちゃうじゃんか…
「あのね、光《もうええわ、このまま聞いて》」
部室飛び出したって言っても裏側に居るよ、言おうとした瞬間遮られて光は続ける。
できたなんて嘘でした、って言うタイミングすら失ったアタシはとりあえず、光の話を聞くだけだった。
《正直に言うたら俺はどうすればええか分からへん。せやからゆきが生むかどうか決めたらええ》
「……………」
もしかすると『俺の為に生んで』って言ってくれるんじゃないかって、期待してたモノはガラスが割れるみたいにパリンと音を立てて崩れた。
一見、アタシの事を考えてくれてる様に取れる言葉だけど裏をかけば責任転嫁と変わらない。
《生んで苦労しながら育てるんが幸せなんか、堕ろしてちゃんと大人になってからのが幸せなんか、俺には分からへんねん》
「…うん」
《ゆきの事考えれば考える程分からへん。苦労して後悔するゆきも見たくないし、振り返って後悔するゆきも見たくない。せやからギリギリまで悩んで答えが出たら俺はそれに従うから》
その言葉は本当なの?
本当にアタシの幸せを考えてくれてそう言ってるの?
だけど“従う”って…ちょっと不適切じゃない?
《ゆきが堕ろすって決めたんなら文句も言わへんし、これから社会出て経験積んでから言う》
「え?言うって、何を?」
《……分からん?》
「うん?」
《ハァ…まぁええわ。それでゆきが生むって決めたらや、》
本当に呆れた声で溜息吐くもんだからまた眉が寄る。
怪訝ながらも続きの言葉を待ってると、
《俺が18になったら籍入れて下さい》
待ちに待ち望んだ展開とは言え、まさかのプロポーズに世界が止まって見えた。
だって、あの光が、“籍入れて下さい”って…
嬉しいというより息が詰まって、感動というより瞬きが出来なくて、頬を掠める風さえも存在しないそんな世界。
《まだ17やし少し待たせてしまうけど18になったら直ぐに結婚して欲しい》
《高校生で金なんや当然無いし、今から働いたとしても十分に稼げれへんやろうから親に迷惑掛けるのは目に見えてる。せやけど、ゆきが生みたいって思うんならその時は親に借金してでもゆきと子供ん事幸せにしたる》
どうしてアタシは自分の事ばっかりで光が適当だなんて思ったんだろう。
“いざ”って時にこれだけ考えてくれてるのに、責任転嫁とか酷い事ごめんなさい。
『なぁ、何とか言えや』
「、ひかる、」
機械を通して聞こえた声が空気中からも伝って振り返ると、一瞬で光の薫りに包まれてリアルな息が耳に触れた。
1人で抱え込ませて悪かった
初めての光の謝罪は優しくも弱々しくて、やっと“歳下”の顔を垣間見た気がして…アタシは心底幸せな女の子なんだって光の胸に顔を埋めた。
「ひかる、すき…」
光の愛があるならアタシは何だって頑張れるんだ。
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