darling | ナノ


 


 07.



何故出逢ったの?


君に恋する為、それが運命だから






pulsation.7 平行線






(着いた)

1件のメールを受信して早足で玄関に向かう。
バタバタと足音立てながらドアを開けばそこには、



『遅い』

「ごめんごめん、おはよ光っ」



いつもと同じ日常、アタシを迎えに来る光。
朝起きて隣に光が居ないのは寂しいけど、数十分で会えるのはそれなりに贅沢なことでしょう?

光の家より学校が遠くなるアタシの家まで来るのは『面倒臭い』なんて言いながらも毎日ちゃんと迎えに来てくれる光に、ここでも愛を感じずには居られなくて。



「光、今日は腕が良いなぁ」

『お好きにドーゾ』

「お好きに失礼します!」



指を絡めるのも好きだけど、たまには腕に引っ付いて光との距離を0にしたくなる。
嫌でも漂う光の匂いに朝から視覚も嗅覚も触覚も光の虜。



『あー…朝から鬱陶しいもん見てしもたわ…』

「あ、謙ちゃんおはよ!」

『鬱陶しいんはどっちですかヘタレ先輩』

『俺の何処が鬱陶しいっちゅうねん!』

『そのきんきら頭とかヘタレた顔とか』

『ううっさいわ!お前等みたいに能天気バカップルと違て俺は悩み事があるんや!』

「悩み事?」

『早速フラれたんスか?』

『ちゃうわボケ!』



そっか、そうだ。
昨日謙也と由希ちゃんは上手くいってアタシは母親気分で寂しさを感じたんだったけ。

謙也が言う能天気バカップルを黙認する訳じゃないけど謙也みたいに他校生と付き合うとなると、一緒に学校行ったり学校で会ったり出来ないんだ。それどころか毎日会えるとも限らない。

それを考えるとアタシはやっぱり幸せなんだなって。
周りに“バカップル”と言われる事さえ善いことなんじゃないかなって思える。



『ま、どうでもええスわ』

「謙ちゃん、悩み事なら後で聞いたげるね」

『要らんわ!付き合うてられへん!』



スピードスター発揮で早々に駆けて行く謙ちゃんに手を振って光に眼を向けた瞬間、



「、」



顔を傾けて『ちゅ』と音を出した光の口唇。



「ひかる?」

『謙也先輩の話なんや聞かんでええ』

「…………」

『行くで』

「…うん!」



今日も光をもっともっと好きになる、
光が光で良かった、
なんて惚気るアタシは後ろに感じる気配を気にして無かったんだ。




  □




「……あれ、」



朝練が終わって光と別れた後、教室で机の中を整理してると教科書と教科書に挟まった紙切れがあった。



「何だろコレ…、!」

『どないしたんやゆき、変な顔して』

「く、蔵…どうしよう」

『ん?』

「アタシ、アタシ、ラブレター貰っちゃった……!!!」



初めて貰ったラブレターに手が震えてしまいそうで“好きです”と書かれた男の子の字にドキドキした。

アタシには光が居る、光以外好きになれる訳がないけど正直なところ“好き”って言われると嬉しい。



『あーあ、そんなもん貰たら財前が何て言うやろなぁ?』

「ひ、光だって、告白とかされてるじゃん」

『っちゅうかホンマにゆき宛てなん?偉い物好きやな』

「何ですって謙ちゃん?」

『あ、や、財前と付き合うてんのに変わった男やなぁ思て!』

『確かにせやなぁ…相手誰なん?』

「えっと、“松田”君?知ってる?」



聞いたことがない名字に首を傾げるアタシと、心当たり有りそうに悩み顔を見せる蔵と謙也。
“松田”君がアタシを…知らない人から好かれてるっていうのも改めてみると変な感じ。



『松田……ああ!隣のクラスの野球部の奴ちゃう?』

「野球部?」

『俺ほどやないけど爽やかな男やで』

「…………」

『兎に角、財前にはちゃんと報告しとき?言わへんかったらそれで拗ねるんやから』

「言っても怒りそうだけど…」

『そういうとこが好きなくせに、惚気は要らへんで』

「蔵のけち」

『ええから、早よ教室移動せな女の子は別やろ?』

「そうだ!保健は視聴覚室だった!!行ってきます!」



授業が始まるまで後数分、慌ただしく教科書と筆記用具を手に走る後ろで『走ったら転ぶでー』て謙也の声が聞こえてくるけど走らなきゃ間に合わない。

勢い良く教室から飛び出したアタシは目の前にある障害物にまんまとぶつかった。



「いった…」

『…すまん、大丈夫?』

「あ、アタシが前見て無かったんで…」



衝撃に耐え切れず尻餅ついたアタシに散らばった教科書を拾ってくれる障害物もとい彼は優しい顔付きで手を差し出してくれた。

アタシがぶつかったのに、善い人……。



『手紙、見てくれたん?』

「てがみ…?あ、ま、まさか、松田、君…?」

『正解』



蔵と謙也が言ってた通り、爽やかな笑顔で“善い人”を思わせてくるもんだから。
だから、



「あ、あの、手紙ありが―――っ、!?」

『急いだ方がええんとちゃう?授業始まってまうよ』

「……………」



だから、

アタシに隙が出来て付け込まれたんだ。

瞬間的に残された痕は、首も胸も痛く刺激する。
だってまさか、初対面でそんな事されるなんて想像出来るはずないでしょ?


ひかる、
どうしよう……どうしたらいい…?





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