darling | ナノ


 


 04.



十人十色、


こっちの“好き”があれば向こうの“好き”もあるんだって






pulsation.4 ジグザグな気持ち






「くーーーーうっ」

『何やその唸り声』

「あー、謙ちゃん」



アタシが膝を抱えて腹の底から声を出してると、後ろでは惘然とした謙也がラケットを肩に乗せてちゃったりして。
言っとくけど、そんな顔したっても光より格好良いなんてことないんだから。



「別に唸ってる訳じゃないもーん」

『ほな何やねん』

「テディベアの可愛さに酔い痴れてたんです」

『テディベアっちゅうか財前に、やろ?』

「そうとも言うかも」



だってだって超可愛いじゃん?
正直部活してる場合じゃないっていうか?ずっと眺めてたくなる。



『ホンマ、ゆきと財前はめでたい頭やな』

「ちょっとちょっとどういう意味よ謙ちゃーん」

『そのまんまや!』

「はぁはぁ、謙ちゃんも僻みってことね」

『ちゃ、ちゃうわ!僻みとかそんなんやなくて『光君居ますー?』』

「、」



謙也となんやかんや言ってると聞こえたのは女の子の声で。
明らかに“ひかる”と発音したそっちを向くと日本人形みたいな子がドアから顔を出してた。

…だれ?



『あ、謙也君や』

『ゆ、由希!?』

『ハハ、由希でーす』

「…………」



どうやら顔馴染みらしい謙也と“由希”ちゃん。
って事はうちの生徒?そう思いきやズカズカと入って来る彼女は他校の制服を着てて。
なに?なんなの、この子…
光に何の用事?



『今日は、な、何しに来たんや』

『別に何でもええやろ、謙也君に用事ちゃうねんから』

『な、何やねんその言い方!』

『早よ光君出し……誰?』

「え、アタシ?」

『アンタ以外誰が居るん?何で女が男子テニス部に居てるんや』



明らかにアタシを見て顔を歪めた彼女は暴慢で、アタシからしてみれば彼女の方が部外者なのに余所者扱い的な…そんな様子に変な胸騒ぎがした。



『ゆきは財前の彼女で臨時マネージャーやで』

「ど、どうも…」

『光君の彼女?コレが?』



コレって何?
アタシじゃ文句あるの?
流石にカッチーンと頭にきて反論しようと思ったのに、



『由希、何してんねん』

『あ!光君っ!』

『来るなら来るで連絡入れてこいや』

「―――……」



現れた光が彼女に懐かしそうな顔をするから、声なんて出なかった。



『光君っ、会いたかった!』

『相変わらずやな』



ねぇ光、誰なの?
アタシ以外に気を許す女の子なんて今まで1人しか見たことないのに。前に光が好きだった子以外、見たことないのに……

叶わないと思ってた頃の感情が蘇った気がした。



『光君、由希の知らん間に何彼女なんか作ってるん?』

『別に由希の許可なんや要らんやろ』

『光君の奥さんは由希やって約束したやん』

『阿呆、いつの話や』



何処か優婉に声を出す光は、アタシの知らない人だった。



『ゆき、ボール出すで』

「え、謙ちゃん?」

『早よ出さな白石にどやされるわ』



グイグイと引っ張る謙也にちょっとだけ感謝した。
知らない光なんて見たくないから。謙也を理由に逃げれるならそれで善い。





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