darling | ナノ


 


 03.



幸せを形に表したいから


“好き”を使う






pulsation.3 離れたくない離れない






『“愛くるしい”の意味、分かったやろ?』

「、分かんない」

『ハァ…ホンマ我儘な女やな』



光からの愛が欲しいばっかりに言葉に分かんない、なんて言ってみせて呆れた顔をされる。
でも光はちゃんと愛をくれるからアタシはそれに甘えるばっかりで顎をあげたのに。



『ええ加減にしなさい』

「……くーらー」

『何スか部長、邪魔やねんけど』



甘い甘い雰囲気を打ち壊したのは先生みたいな声の蔵。



『邪魔なんはそっちや!部室閉めなアカンのやからさっさと帰りなさい!』

「いいとこだったのに」

『部室をホテル代わりにするんは止めや?』

『自分に彼女が居てへんからって僻むんはどうかと思いますよ』

『ええから帰れ言うてんねん!!』



光の口唇を名残惜しく思う間も無くポイポイと放り出されて、ご立腹な蔵にアタシも膨れる。
もう少し待ってくれたっていいのになんて投げ捨てられた鞄を持つと、



『帰るで』

「!」



隣から軽いリップ音が聞こえたもんだからアタシはそれだけで顔が緩むは緩む。



「ひかるー!手繋いで!」

『今日荷物多いんやけど』

「愛があれば関係無いよね」

『関係ありすぎや阿呆』



そんな事言いながら右手だけで鞄やら荷物を持って左手をフリーにしてくれる光に愛を感じない訳なくて。
何でこんなに好きなんだろって考えるくらい好きで好きで好き過ぎる。



「光、光、見てアレ」

『、』

「超ー可愛いっ!!」



帰り道、散歩がてら街中を歩くと目に入ったのは雑貨屋さん。
ショーウインドウに飾られた2匹のテディベアに釘付け。



『あー、可愛い可愛い』

「もっとちゃんと見てよ!」

『見た見た』

「見てないじゃん!あれ、あのテディベア、ネームプレートが付いてる」



青い服と赤い服を着たテディベアは首からネームプレートをぶら下げていて、価格表示の横には“自分と好きな人の名前を入れればずっと一緒に居られる”と説明書が施されていた。

うわ…益々可愛い…!!
っていうか欲しい。



「ひかる、買って?」

『嫌』

「いいじゃん、買って買って買ってー!」

『嫌や』

「だってあれにアタシと光の名前入れたらずっと一緒なんだよ!?超欲しい!」



これを機に一生の愛を誓おうよ、なんて気分満々なアタシに光はわざとらしく大きな溜息。



『ホンマ女ってこういうくだらんのが好きやな』

「“くだらん”って失礼ね!乙女心分かってくれなきゃ!」

『せやけどくだらんもんはくだらんし』



興味有りません、と『早よ行くで』って手を引かれて遠くなってくテディベア。

ああ…欲しかったなぁテディベア。光はこういうところが宜しくないと思う。別に光に不満がある訳じゃないけどもう少し女の子の気持ち分かってくれたっていいじゃない?



『不細工』

「は?」

『不細工な顔になってんで』



二言目にはこれだ。
なぁに、甘い甘い光くんは何処に行ったんですか?



「どうせ不細工で趣味悪いですよー」

『阿呆』

「だから分かってるってば!」

『俺よりあんなもん信じるん?』

「え?」

『あんなぬいぐるみ無くても俺はゆきから離れる気無いんやけど』

「……………」

『ゆきはちゃうん?』



勝手な事言ってごめんなさい。
どんな光も光は光で、何を言ったって甘く愛してくれてるんだよね。本当にアタシは阿呆だった。



「アタシだって更々離すつもりははありません!」

『分かればええねん』



今日もこうして幸せな1日に幕を降ろした。
明日もどうか幸せでありますように。







「………嘘、…」



そして翌日、朝練で寄った部室には昨日のテディベアが2つ並んでたっていうお話。



(ゆきやろ、こんなとこに私物置いたんは)(違うよ蔵、光だよ)(え、財前が……)(やだもう!光好き好き!!)(この名前書いたのも財前なん…?)(光超可愛い!!)(あー…フーン…)





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