darling | ナノ


 


 11.



想いも物も全て


半分ずつ分ける事が出来たら
それだけで両手いっぱいの幸せ







pulsation.11 半分こ。






背中と背中を合わせると明らかに横幅も縦幅も違うのに、アタシには丁度良いなんて矛盾してる?



『機嫌良さそうやなぁ?』

「誰かと思えば蔵りんじゃん!」

『俺も居るで、弁当も持って来たったんやから感謝しいや』

「さっすが謙ちゃん!」



あれから何度もチャイムが鳴って屋上から動く事ないアタシと光はそのままお昼休みを迎えたらしい。
渡されたお弁当に自然と顔が緩めばニコニコした蔵の視線が痛い程突き刺さる。
あー、もしかしなくとも小言が始まっちゃう感じ?



『2限目から今までずっっっと気分悪かったん?』

「やー…そ、そうなんだよね、ねぇ光?」

『ゆきが“授業なんやどうでもいい”言うたんスわ部長ー』

「ひひひかる!そんな事言ってないじゃん!」

『フーン?どうでもいい、か…』



数時間前にアタシが「可愛い」って言った事を根に持ってるのか、光は背中合わせのまま躊躇いなくアタシを売り払う。

端正な蔵の笑顔の後ろで黒や深い紺色の空気が佇んでるのは勘違いじゃない。



『仮にも優秀なテニス部員が2人揃ってイチャイチャイチャイチャする為に授業1日サボったなんや知られたら俺の顔も丸潰れやんなぁ?』

「あ、あの、サボりって訳じゃ、ないかなぁ?」

『気分悪いのに保健室で寝とる訳や無しに屋上に居る事が何より証拠やろ?』

「気分が悪いから、屋上で綺麗な空気を吸ってた、って事にはなんないのかな…」

『これならまだトイレに籠もっとる方が可愛気あるわ』

「くく蔵、ごめんてば…!」



蔵の後ろで“俺は何も知らんで”って顔でお弁当にがっつく謙也は助けてくれないし、アタシと一緒で当人である光は顔が見えなくとも“適当に頑張れ”って言ってるのが分かって。何でアタシばっかり怒られてるの?ねぇちょっとおかしくない?



『あんなぁ、ごめんで済めば『ゆき、お腹空いた』』

「え、」

『財前、人が話しとる時はちゃんと聞きなさい』

『もうええスわ部長ー、ゆきは俺の女やし部長にとやかく言われんでも分かってますわ』

「ひかる…」



合わせた背中から滑る様にアタシの膝に頭を乗せて『な?』と口角を上げる光にときめいて『俺の女』とか、そんな風に言って貰えるなら幾らでも蔵に怒られる!だなんて思うアタシは大概現金?

でもね、知らないフリな癖に最後は庇ってくれる光が愛しくて愛しくて仕方ないんだもん。



『……ま、今回は“松田くん”の事もあったし大目に見たるわ』

『うわ、超偉そうやな白石』

『偉そうなんはどっちや謙也』

『や、何も言うてへんて!』



蔵の矛先が謙也に向いたところで、お弁当を広げてウインナーを光の口に運べば満足そうに飲み込んだ。



『で、ちゃんと解決したんやろ?』

「うーん、多分?」

『多分て…』

『何も問題無いですわ』

「っ!」



ウインナーに続いて次は自分の口へ卵焼きを運んだ瞬間、首を引っ張られて卵焼きは真っ二つ。
半分に噛み契られた砂糖入りの卵焼きは光の味がした。



『なっ、なっ、飯くらい普通に食べろや阿呆っ!!』

『ホンマ心配なんや要らへんな……』

『心配て誰に言うとるんです?』

「そうだよ、アタシと光はラヴラヴだもん!」

『分かった分かった』

『っちゅうか人前でイチャイチャすな!!お前等には羞恥心ってもんが無いんか!』



そして残りのお弁当も仲良く半分こして、『“松田くん”も可哀想やな』って呟く蔵と謙也にはご飯粒を擦り付けましたとさ。





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