darling | ナノ


 


 10.



同じ空の下
同じ雲を見つめて


貴方が笑えば私も笑う







pulsation.10 メカニズム






授業中だと言うのに教室に居なくて

授業中だと言うのにグッと捕まれた頬、繰り返される口付け

第三者に見られて居たってどうでも良くて、口唇から感じる情愛にただ酔い痴れてた
言葉にしなくとも伝う愛がある事を身を持って教えられる



「ひか、る」

『キスだけじゃ足りひんな?』

「…いいから、離さないで」

『やらしー』



口唇が重なって、舌が絡まり合って、粘着がある音を卑猥に出せばそれだけで身体中が熱くなる。

ひかる

ひかるしか、見えない。



『ゆき、お預けや』

「、」

『後でたっぷり可愛がったるから』



自分の口唇に舌を這わせて微笑んだ光は淫猥で妖艶だった。



『“松田”さん、でした?』

『なんや…』

『ゆきのこの顔見てもまだ欲しいんです?』

『…………』

『好きな女泣かせたなる気持ちは分からんでもないけど遣り方が気に入りませんわ』



一変して蔑んだ様な顔を浮かべる光に格好良い、なんて。
松田君を前に1ミリも離れたくなくて光の腕にしがみ付く。



『遣り方て…財前君かて同じ事しとるやろ?』

『は?』

『無理矢理彼女にキスしてるやろ、今も今朝も。それと同じや』

「な、何言ってるの…?」



同じじゃない。同じにされたくない。
光が無理矢理してる事じゃないし、寧ろ光になら無理矢理でも何でもいい…

そういうの、松田君には分からないの?



『…同じ、なら何でゆきはアンタを見たら嫌な顔して怯えると思うんです?』

『それは、』

『ゆきにとってアンタがそれ以下の男やっちゅうことですわ』

『せやけど俺は彼女が好きや、愛してるんやから問題無いやろ』

『はー、これやから勘違い君は困りますわ』

「ひかる、」

『笑わせんでくれます?俺がアンタに劣る訳無いやろ。なぁゆき?』



アタシが掴む腕とは逆の左手で、視界を広げるみたいに前髪を避けられると鮮明に光が映って、声に出してないのに“愛してる”が聞こえた気がした。

安っぽく言葉にされるより、もっと重く、もっと柔軟に伝わる情感がお日様よりアタシを暖かく熱くさせる。



「光しか、要らない」

『ゆき、ちゃん、』

『もっと分かる様に言うたれば?』

「…アタシは光が好きで、光だってアタシの事愛してくれる…だから光が居ればいい、松田君とか他に興味無いから」

『、らしいですわ。残念スね』



眉を寄せて怪訝な顔を浮かべる松田君はやっぱり怖くて。だけど光がアタシの手を離してぎゅっと引き寄せてくれたから安心感でいっぱい。



『ゆき、ちゃん』

「や、やだ、近付かないで」

『…ボール、拾ってくれたゆきはもう居てへんのやな』

「ボール…?」



“野球部のボール入ったんで取って貰えますかー!”

あ、あの時の…あれが松田君だったの?



『も、ええわ』

「…………」

『頼まれたってお前等には近付かへんから…』



そう言った松田君は凄く哀しそうで、傷付いた兎みたいだった。
多分、愛情表現が上手く出来なかっただけで本当には……



『ゆき、』

「あ、なに?」

『もうアイツの事考えんな』

「………」



本当は不器用だけど真っ直ぐで純粋な人なんじゃないかな、なんて思うのに光がもっと不器用そうにするから。だから“愛しさ”以外消えて無くなる。



『俺だけ見とけ』

「うん」

『俺ん事だけ考えろ』

「うん」

『俺から離れんな』

「……うん」

『…阿呆』

「い゛っ!たー…な、何すんの!」



素直に心配したとか妬いたとか言ってくれれば良いのに思い切り鼻を摘んでくる。
鼻が潰れたらどうすんの、声を上げようとした時、



『俺はゆきだけやねんから要らん事考えんでええねんボケ』

「…………」



顔を外方向けた光の耳が真っ赤になって



「ひ、かる、照れてるの?」

『うっさい黙れ』



見られたくないみたいにどうしてもこっちを向かないから



「ひかる可愛い…」

『…何て?』

「ひっかる可愛いー!!超可愛いっ!っ痛!」

『生意気な口はこれか』

「痛い痛い!頬っぺたつねらないで!そんな事しても可愛いもんは可愛いんだから!」

『黙れって言うとんや』

「いいいったーい!!」



初めてこんな光を見て、ほんの少しだけ松田君に感謝して

アタシは光に昨日よりもっと愛を膨らませるのでした。





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