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 04.



“今”は必ずや過去になって
1秒1秒の未来を刻んでいく


もし後悔したとしても
1秒前には戻れない





impression.4 one's past






陽が昇り眼を覚ませば朝練があって、授業受けたら昼御飯を食べる。それからまた授業を受けて部活。
それは3年間何も変わらへん事やったけど2つ変わった事がある。



『蔵、蔵っ!』

「うん?」

『今日アタシ授業中1回も寝てないんだよ凄くない?』



ひとつは、恋しい存在が愛しい存在になったこと。



「名前、それが当たり前やろ?」

『アタシにしては上出来だと思いませんか?』

「せやな、よお頑張りました」

『でしょでしょ?』



撫でてあげると眼を細めて猫みたく気持ち良さそうにする彼女が俺の好きな女の子。

1年の頃からずっとずっと彼女だけを見て、彼女だけを想ってた。



「明日もその調子やで?」

『うーん明日は古文あるから無理かも』

「苦手な科目程頑張らなアカンやろ?」

『古文も嫌いだしあの先生の喋り方が本当無理!子守唄にしか聞こえないもん!』

「教え方は上手いと思うけど」

『ううん、蔵が教えてくれる方がアタシには身になるし』



だからお願いします蔵先生?

そんな風に甘えられたら首を振ることなんや出来ひんのに。分かってやっとるやろ?ホンマ可愛い。



「ほな次のテストは満点やんな?」

『え、満点はどう、かなぁ?』

「俺が教えたら身になるんやろ?満点くらい世話ないわ」

『意地悪ー』

「意地悪ちゃいます」



拗ねたおでこにキスを落とせばはにかむ顔、それがめっちゃ好きや。
俺は心底彼女に惚れてる。
彼女の為やったら何だって出来る、そう言い切れる程好きやねん。



『おーおー、今日もバカップルは健在かー!?』

『謙也っ!謙也も聞いて聞いて!』

『なんや?何かええ事あったん?』

『へっへーん!今日アタシ寝ずに授業制覇したの!』



もうひとつ変わったこと、



『絶対嘘やん!』

『本当ですー!謙也とは違うんだから!謙也は英語で鼾かいてたよね』

『い、鼾なんやかいてへんわ!』

『じゃあ蔵に聞いてみれば?』

『しし白石!俺鼾なんやかいてへんよな!?』



それは謙也。



「めっちゃ普通にかいてたで」

『う、嘘や…!2人して俺ん事騙す気やろバカップルは!』

「英語担任、根に持つタイプやねんから後に響くんやろなぁ」

『アカンアカン!そんなんアカン!』



謙也は今日この頃、やけに俺と名前をセットとして接してくる。そして、やけに絡んでくる姿は俺等を見守る様な顔付きになった。



「謙也も名前を見習えっちゅうことや」

『なんやそれ!白石もたまには名前以外に優しくするって気持ちは無いんかい』

「生憎男に優しくする様な寛大な心なんや持ってへんわ」

『もうちょっと友情も大事にせんかい阿呆っ!』

『ごめんね謙也、蔵はアタシのだから』

『バカップルには付き合うてられへんわ!』

『アハハ!蔵盗られて寂しいんだー!』

『阿呆か!寂しい訳あるか!』



なぁ謙也。
俺は卑怯な事をしてしもた。

もし「ごめん」と謝ったら、謙也はどんな顔するんや?変わらずその顔を見せてくれるん?



「謙也」

『なんやねん』

「コレあげるわ」

『ハァ?……今更眠気覚ましのガムなんか遅いわ!!』

「せやったら明日まで取っとき」



真実を知っても、変わらず友達やって言うてくれますか?

それとも最低やって厭いますか?




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