monochrome mood | ナノ


 


 06.



いつもの景色


変わったのは君の視線





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昨日、
授業中のメール相手が財前やった
放課後一緒やったんも財前やった

そして今日、
名前が見とるのは財前



「名前」

『うん?何ユウ君、タオル?』

「昨日、何しとったんや?」

『き、昨日?別に、何も…』

「食い過ぎた言うとったやろ」

『あ、うん!ケーキバイキング行って調子に乗って食べ過ぎて、』

「食い意地張って10個も20個も食べたんやろ馬鹿女」

『そ、そんなに食べれる訳ないじゃん!』



眼を泳がせた後、手を掻くのが“嘘吐く”時の癖やって知らへんのか?ホンマ馬鹿や。俺が今まで名前を見て来た時間は長かったんやで。洞察力も何も、気付かへん訳が無い。



「…………」

『、ユウ君…?』

「…牛の胃袋」

『は、』

「お前も胃袋がいっぱいあるんちゃうか大食い!」

『な、酷い!そんなに食べてないってば!』



冗談言うて笑って、そんな毎日がずっと続くと思てた。
俺が名前を見る以前に、名前の視線を感じるのがいつもやったから。その視線が今は無い、という事は今まで通りとはちゃうってこと。

それでも元々名前は財前に懐いてたし、財前には彼女が居る。せやから特に問題は無いって、そう思い込みたかった。



『あのさ、ユウ君』

「あ?」

『…光の彼女って、どんな人なの?』

「…………」

『ユウ君は見たことあるんでしょ?やっぱり可愛い?綺麗?』



問題は無いとか、大丈夫とか、そんなのはただのエゴでしか無かった。



「…綺麗、な女や」

『そっか』

「俺等より歳上で、少なくともお前より綺麗で品のある女やったで」

『……………』



厭な男やと思う。
わざと傷付ける言い方して、哀感した眼を見て“これでええ”って。
焦燥感だけが頭を支配して有益な方へと道を作る。


財前に渡したくない、
別の女が居る財前なんかに奪われてたまるか


“好き”はどんどん加速して“好きになりたくない”気持ちは真っ白な雲に覆われた様に無くなる。
“好き”だけが溢れていく。



『じゃあ、光は幸せだね』

「あー、せやな…」

『何の話スか』

『、ひかる!』

「お前の彼女の話や」



名前の背中に体重を預ける財前に顔を歪ませへんよう気を付けて確かめる言葉を並べた。
実際に財前の彼女の話しとった訳やし、財前の口からちゃんと聞けば名前も……



『面白ない話やな、そういう噂止めてくれへん?』

『ひかる?』

『俺の彼女が可愛いって、ユウジ先輩分かっとるやろ?』

「……まぁ」

『完璧な女の話なんや面白味も何も無いですわ、なぁ名前先輩?』

『何で、アタシに振るの…』

『何処かの誰かさんは食い過ぎて腹痛い言い出すし、そっちんが面白いスわ』

『も、もう!その話いいから!』

「……………」



俺が、見逃すはず無かった。
財前が『彼女』と発した時に名前の反応を見てたこと。
一瞬強ばった顔を見て眼を細めたこと。


“財前、昨日一緒に居ったん誰なん?”

“え、知らない人と居たの?”

“あー、俺の女スわ。可愛えやろ?”

“ほ、本当に!?彼女居たの!?やだ見てみたい!”

“見たら名前先輩自信無くすで?”

“うわー惚気ですか”


あの日、財前は確かに“彼女”を浮かべて笑ってた。
財前にとって名前は楽しむ為の玩具でしか無いっちゅうこと?

気付いた時には俺の拳は財前の頬に向かってたんや。





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