monochrome mood | ナノ


 


 02.



藍色に何かを足しても
白には戻れない


自業自得の言葉と気付くには遅すぎたんだ





monochrome mood
mood.2 deep blue





『♪〜〜』

『、名前は偉いご機嫌やなぁ』

『うーん?そうかな』



1時間前『頭が痛い』と教室を出て行ったはずやのに戻って来たアイツは鼻歌交じりで白石に返して次の教科書を鞄から取り出してた。



「頭痛い言うたんも仮病か馬鹿女」

『失礼ねーユウ君は!仮病じゃありませーん』



この1時間、俺がどんな気持ちやったと思てんねん。
白石に『ホンマ仲ええなぁ?』て含み笑いされて否定したけど白石相手に隠せる想いは無くて、それならいっそ“好きになりたくない”

男と女、人間やって動物やって子孫を残す為に快楽を求めるだけに過ぎん。恋愛なんかソレの延長線で思い込みの勘違いでしか無いのに。

分かってたはずやのに
今まで散々馬鹿にしてた自分が誰かを好きになる、とか…
認めたくなかった。
名前で頭いっぱいの自分とかホンマに気色悪い馬鹿やと思ってた。



『頭痛いのが吹き飛ぶくらい善い事があったって事かな』



それでも、白石に『あーあ、要らん事言うたな』とか『名前泣いてるんちゃう?』とか半ば強迫観念な事言われて、帰って来たらどないしよって思てたのに。



「授業サボった奴がよう言うわ」

『サボりじゃなくて息抜きです!』

『サボりはアカンで名前?せやけど善い事って、どないしたん?』

『秘密』



何も気にしてません、それどころか厭味にも取れそうなくらいニンマリ笑う名前に無性に腹が立った。



「秘密て鬱陶しいわ!死なすど!」

『そんな言い方されたら、俺も気になるで?』

『秘密は秘密だもん』

「“名前先輩、うざいスわ”」

『っ、ひかる!?』



何でか、そこで何で財前のモノマネしたんかは分からん。ただ“ウザイ”と“鬱陶しい”を言いたいだけで、俺にとってモノマネは日常の1コマでしか無かったから理由なんか無かったんや。



「ハッ、財前な訳無いやろ阿呆」

『あ、ユウ君の……だよね、光はそんな事言わないもん』

「…………」



少しだけ、違和感があった。

確かに名前には甘いところがあるけど悪態付くのが財前やのにそれを庇った事か、
名前が微かに笑ってた事か、
“財前”に反応した事か…

何かに違和感を思た途端、授業開始のチャイムが鳴った。





「…………」



斜め前に座る名前は机の影でずっと携帯を弄ってて、xやらyやら求める公式を説明する教師を眺めても馬鹿らしく感じた。
xの答えが分かったからって何になる?yを求めたら俺にプラスになる事があるんか?

そんな事より、名前の1時間を説明して欲しい。
そうすればあの違和感の正体も“y=”として答えが出るやろうから。



「、」



らしくない考えの中、制服のポケットでメール受信を知らせた携帯は白石からで。

(財前とメールしとるみたいやで)

方程式のキーポイントは“財前”と分かった俺は深く濃い藍色に飲み込まれた気がした。





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