monochrome mood | ナノ


 


 11.



狭くなった空は


揺れる木々の緑よりも小さく見えた





monochrome mood
mood.11 green





「…はい?」

《俺や》



ホテルを出て“あるところ”まで目指してると、ズボンのポケットに突っ込んだ携帯が振動して着信を知らせてた。



「オレオレ詐欺なら間に合うてますけど」

《何言うてんねん》

「冗談ですわ部長」



着信画面を見れば言わずとも分かる相手に変な冗談を交えて、安易に予期出来た返答に思わず笑いが込み上げた。



《名前と一緒なんやろ?今ユウジがそっち行ったで》



部長の言葉に“これで丸く収まるんや”と思うと安堵というか、この2日が呆気なかったなぁて思た。まぁたった2日やし…遅かれ早かれこれが本来の在るべき関係やねん。



《財前、どないするん?》

「どないするも何も、俺と名前先輩一緒に居らんし」

《え?》

「名前先輩はユウジ先輩んとこ行きましたわ」

《…財前がそうさせたん?》

「俺はきっかけ作っただけや」



自分がホンマに愛されたいと思う男んとこ行けばええから。
ユウジ先輩が動き始めるまで、それ迄の休憩やって決めてたんやからそれ以上どうこうするつもりなんか無いんや。



《それでええん?》

「何ですかソレ、意味分かりませんわ」

《はぐらかさんでええねん、財前はそれで後悔せえへんのか?》

「……………」



後悔、なら既にした。
俺があの人に触れた事、声を掛けた事、全てが後悔の塊や。

せやけどな、引き止める権利なんや無いやろ。



「部長、何度も言うけど俺には彼女が居るんやで?」

《それは、》

「遊びは終わり、それだけ」

《……………》

「名前先輩も分かってた事やし。これからあの人がどうするかは本人の意志ですわ」

《財前…阿呆や…お前、阿呆やで…》

「何や喧嘩売っとんです?」

《……………》

「ま、ええわ聞き流したりますわ。ほな俺行くとこあるんで」

《…彼女んとこ行くん?》

「分かってるんなら聞く必要無いやろ?ほなまた明日」



機械を通して『財前、』と呼ぶ声に気付かんフリして電源ボタンを押した。

部長と話してると…自分が惨めに感じて不快やねん。俺が好きでやってきた事やのに全てを否定されるような、あり得へん可能性を照らされてるような…矛盾した2つの気持ちがユラユラ揺れる。
俺は俺、自分が思う通りに足を動かせばええんや。部長が世話好きなん分かってますから、もう何も言わんで下さい。



「、」



特別速くもなく遅くもない適当なスピードで向かった先は住宅街にある公園やった。

陽が沈み始めたこの時間でも数人の子供が遊具で遊んで走り回ってて、それを見つめる母親達。
先客の多さに息を吐いて身体を反転させようとした時、



『光くん、』

「……………」

『今日も来たんだ?』

「当然、やろ?」

『だよね』



引っ張られた腕は“彼女”に掴まれたからやった。
数人の人に紛れて見失いそうやった彼女はニコニコ笑って俺を映した。


(20090310)



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