monochrome mood | ナノ


 


 10.



2人で並ぶ道は


昨日より煌めいていた





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引き寄せられた身体は優しく、というよりはきつく強く、
春というよりは初夏の様なそんな暖かさだった。



「ユウ君、」

『お前は俺だけ見とけばええやろ』

「…でもユウ君はアタシのこと、」

『好きや』

「…………」



有無を言わせないユウ君の言葉は光とは全然違くて、光の温もりとも全然違う。

これが、本来アタシが求めてたモノなんだって思うけど…



『名前やって俺が好きなはずや』

「…うん」

『ほな何も問題なんや無い』

「…うん」

『財前に利用された事なんか忘れたらええねん』

「、」

『何があったんかは知らんけどアイツは関係無い。アイツには彼女も居るし名前が好きなんは俺や、それだけでええんとちゃうんか』



光とは別の身体に戸惑うのを見透かしてるのか、ユウ君の言葉にヒヤッと心臓が跳ねて、続く『知らない』の言葉に安堵して。

胸を撫で下ろすってことは、アタシはやっぱりユウ君が好きなんだって…
彼女を追い掛けた光の背中に寂しさを感じたのは1人ぼっちになるのが嫌だっただけかなって…そう巡らせた。



「ユウ君、アタシの事好きでも嫌じゃないの?」

『前に言うたん根に持っとんか?』

「…それなりに」

『陰険な女やな』

「な、誰が悪いと思ってんの――…、」



首を掴まれて触れた口唇は強引そのものだけど、ユウ君の言葉より幾分優しさだとか愛情だとか、そういうものが込められてて。
瞬時に光の甘い誘惑と重なった。



『俺ん事以外考えんな』


『あんなん、言葉の綾や』


『名前は、俺ん事分かるやろ?』



片隅には光が居るのに、ユウ君にそんな事言われると…頷かない訳なくて。

昨日の出来事に「ごめんなさい」をして、光が言った嘘を真実に変えようと手を振った。



「ユウ君」

『なんや?』

「学校、戻らなくていいのかな」

『…今更やろ』

「じゃあ、ケーキ食べたい」

『は?』

「ケーキバイキング、行きたい」



光とじゃなくユウ君と。
アタシが本当に好きな人と、行きたい。



『また腹壊す気か大食い馬鹿女』

「ひっどい!今日は、控え目に食べるもん…」

『トイレから離れられへんなったら俺は帰るで』

「置いてきぼり?!」

『腹壊さんかったらええだけやろボケ』

「まぁ、そうだけど…、ユウ君?」



いつの間にか離れた2つの影はアタシを置いてひとつだけ進んで行く。距離が出来る影と影に眉が下がりそうになるけど、



『行く言うたんお前やろ!』

「………」

『早よ行かな店も閉まるわ!のろま!』



直ぐに並んだソレを見たらはにかむのはアタシ。

夕陽が沈んで、月明かりより明るい黄色のネオンに照らし出されるのも悪くない夜だった。

光、これで良かったんでしょう?
有難う、光。バイバイ、光。





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