06.
好きの気持ちが溢れた時、
きっと伝えずに居られなくなるんだろう
自分で制御なんて出来やしない、
恋愛というのは麻薬なんだ
fiction.6 It loves.
ほな、約束
忘れへん。小指に込めた想いは約束なんやするまでもなく永遠のもんやった。
きっと一生もんの気持ちやから。
もし、アイツ以外の女を好きになる日が来たとしてもお前以上好きになる事なんや出来ひんねん。
「、」
翌日の掃除時間が始まった瞬間、内ポケットで携帯が振動した。
誰やろ、そう思て携帯を取り出すと名前からのメール。
“今日デートしませんか?オープンしたばっかりのカフェ行きたいんだ。今日はアタシが奢るから”
そんな文章に思わず顔が綻んでしもてん。デートって、お前なぁ。
「断る訳ないやろ…」
二つ返事でメールを送って携帯をポケットに戻すと、俺は上機嫌で見回りに出た。
「隅々まで綺麗にするんやでー」
『ほな先生も手伝ってやー!』
「俺は監督やもん」
『めっちゃ卑怯やわー』
適当に教室や校舎内を回った後、外へ出ると名前の頭が見えた。ゴミ箱持ったまま立ち止まって何してねん。
…あー、隣に居るん財前か。
「…………」
今まで一々気にてへんかったのに何か今は無性に妬けた。
気にならへんかったわけちゃうけど、セーブしてたし。今やってバンバン出してるっちゅう事はないけど、明らかに前より溢れてて堪えられへんようになってんねん。
「そこ。何サボってねん」
気付いた時には割り込む様に間に入ってて。
大人気ないっちゅうか、何ちゅうか…
『オサムちゃん!何やってんのこんな所で』
「そらこっちの台詞やわ。今は掃除時間やねんで。お喋りしとる暇も携帯弄る暇も無いはずやけど?」
『そんな固い事言わないでよ!ちゃんとゴミ捨てたんだし』
せやけど何も知らんと笑うアイツの顔見たら大人気なくても何でもええって思えるくらいで。
「まだ他の奴は真面目に掃除してんねんで」
『分かった分かった、ちゃんと掃除するから!それよりさ、』
「ん?」
(今日楽しみにしてる!)
財前が居てるのに気にもしやんと耳打ちする名前が愛しくてしゃーない。
やっぱり俺、お前ん事好きや。
「ホンマお前は食う事ばっかやなぁ」
『食がアタシの生き甲斐だもん!』
「その内真ん丸になるんちゃうかー?」
『デブにならないもん!って、ちょっと止めてよ!髪ぐちゃぐちゃになっちゃう!』
見せつけてる訳ちゃうけど、名前の頭撫でてやりたくなってん。触れたくて近づきたくて手を伸ばさずにはおれへんかった。
その時、名前に触れた逆の手が引っ張られる感覚。
『ちょお来て!』
「うわ、なんや財前!」
『話あんねん!』
『ひ、光?』
あの冷静な財前が俺の腕を引っ張ってて、その表情は明らかに俺に怒りを向けてた。
名前から大分離れた時やっと俺の腕は解放されたけど、微かに財前に掴まれた手の跡が残ってた。
痛いっちゅうねん…俺は別に話する事無いけど。お前が話したい言うんならとことん付き合うたるわ。
「……俺に話って、まさか告白ちゃうよなぁ?」
『茶化さんで』
腕の痛みのお返しに口角上げて冗談言うと、財前は益々怒ってしもた様子やった。短気は損気やで財前。
『どういうつもりやねん』
「…何が?主語言うてくれへんと分からへんで」
どういうつもりって。お前こそどういうつもりや。
財前の言いたい事が読めた俺は煙草出して火を点けた。
『先輩は…名前は俺のもんや…』
「………」
『1ヶ月前に名前から好きやって言われたんや、せやからオサムちゃんは近付かんで欲しいねん!あの位置は俺のもんや!』
「…やから何や」
『、』
「告白されてフったんはお前やろ?」
『せ…せやけど今は、』
「名前が今もお前が好きやと思う?」
『…………』
そう言うと財前は眼を見開いて驚いた様な顔してた。
お前は温いわ。自分がフった相手に何甘えてねん。
「名前がお前の事好きで、財前も名前が好きなんやったら付き合えばええ話や。そこに俺は関係無い」
『、それなら俺が「せやけどや」』
「お前がこないな事言うんおかしないか?」
『、え?』
「勿論名前は俺のもんちゃうし、アイツは女やねん。俺のお前の、そないな物扱い出来るもんちゃう」
『……………』
「アイツやって感情があんねん。所有物みたいに言うてる間は幸せになんかなれへんで」
あの日以来名前は財前の話をせえへんなった。せやから俺にもアイツの気持ちが今何処にあるか分からへん。
もしかしたら今やって財前の事好きなんかもしれへん。それなら俺は今まで通り応援する位置に居てやりたい。
せやけど、財前がそういうつもりなら話は別や。
そもそもアイツが好きなら何で本人やなくて俺に言う?そこから間違うてんねん。自分の身守るばっかりで好きな女とぶつかれへん様な男には渡さへん。
俺がアイツを愛し抜く。
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