12.
年甲斐もなく沸き上がる嫉妬心
年甲斐もなく沸き上がる艱苦心
愛してると叫びたくなった
fiction.12 breakage
「授業始めるでー!お前等席着きや」
俺が教室に入るとチャイムが鳴った後にも関わらずワイワイキャーキャー騒いでて、俺の言葉に文句言いながら席に座る生徒。
そんな中、
『オサムちゃーん』
「なんや白石ぃ」
『名前が居らへんわ』
「……」
頬杖ついてる白石の言う通り、名前の席を見ると無造作に引かれた椅子には座ってへんかった。
「何処行ったんアイツ」
『教科書忘れたー言うて部室に取りに行ってんけど帰って来てへん』
「何してねん。ま、その内戻って来るやろ」
その言葉の通り、アイツは直ぐ戻って来ると思てたのに。
俺の授業を受ける事は無かった。
んー、ホンマ何やってんやろ。早くも俺嫌われた?とかそんな事考えて凹むようなキャラちゃうねんけど。どうせ部室で寝てるか携帯弄ってるとか阿呆な事してるんやろ。
3限は授業入ってへんし探しに行ったるか、そのくらい呑気にしてた俺はアイツに何かあったとか想像してへんかったんや。
職員室に荷物を置いてから部室へ行って、ドアを開けると名前が居てた。
「何してるんですかーこのサボり魔は」
『…オサム、ちゃん?』
「授業出たくないくらい俺の顔見たくないん?オサムちゃん傷付くんやけどー」
『…………』
俺が急に現れてビックリしてるんか、そんな顔してる名前に冗談めいて言うたけどそのまま固まってる。
もしかして、ホンマに何かあったん…?
「名前?幽霊でも見たみたいな顔してどないしたんや?」
『……………』
ああ、絶対何かあったんや。
眉下げて、そない泣きそうな顔して…俺には言いたくない事?それならそれでええけど、無理せんでええねん。
「サボった事、俺が怒ると思って恐がってたりするん?阿呆やなぁ」
少しでも名前が楽になればいいと思った。
俺が目くじら立てて聞き出したってアカンやろ?俺は笑ってたるから。せやから自分に一番善いと思う行動しいや。
『オサムちゃん好き…』
頭を撫でてやると、一瞬切なそうな顔して俺の服を掴んだ。
「んー、俺も好きやで」
撫でる手を止めず言うと、名前が息だけで『嘘』って言うたのが聞こえて。
嘘なんかやない、昨日やって言うたやろ?信じれへんの?
この気持ちがホンマもんやって伝えてやりたくてアイツを抱き寄せようと頭から手を離した瞬間、
「…………」
名前の首に付いた紅い跡が目に付いた。
『オサムちゃん…?』
「…ごめんな、」
『え?』
「辛い想い、してたんやな…」
全部、分かった。
名前が泣きそうな顔した理由、授業に出て来おへんかった理由、嘘やって言うた理由。
『え、オサム…ちゃ…?』
「俺は、名前が好きやで…」
『…………』
「好きや、好き…ホンマ好きやから…」
ぎゅっと強く抱き締めた時に鼻につく匂いは、俺が知ってる匂いやった。
『オサムちゃんごめん…』
「…………」
ごめんなさい、ごめんなさい、
俺の腕の中で肩を震わせて泣く名前が可哀想と思う以上に嫉妬心が上回ってて唇を噛み締めた。
『ごめ、なさ…い…』
「ええから。忘れてしまい…」
『でも、』
「名前は、俺ん事だけ考えて…」
世界中に叫びたくなるくらい、お前が好きやねん。せやから俺を見ててくれたらええ。
重ねた唇は、鉄の味がした。
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