affair.05
あの人の想いはでかくて優しくて
君と僕この距離が0である限り
僕の想いは通じてるって信じてた
affair.5 Cowardly love
『うわ……、げ…ひぃぃ!!』
「もうちょい静かにして見れへんの?」
『そ、そんな事言ったって怖いんだもん…!!』
不二と別れた後、結局俺ん家で前に途中まで見たホラー映画の続きを見る事になったんやけど。
相変わらず怖いもんが駄目な名前は1シーン1シーン叫び回ってて、煩いけど可愛いと思う。
せやけど途中で止めよ言う割に見たいっちゅうんは何でなんやろうか。女の子って不思議やんなぁ。
『やっぱり見るの止めようよ…!』
「アカン。今日は最後まで見とき」
『でも……、いやぁぁぁああ゛!!!』
「、うわっ!」
主人公が、見た目グロテスクな幽霊に襲われるシーンで名前は悲鳴あげて俺に体当たり…いや、抱きついてきた。
ちょっと痛かったけど黙っといたるわ。
「名前、そない怖がらんでもええやろー?」
『あ、あああんなのっ!鬼だよ…悪魔だよ…!』
「鬼でも悪魔でも無いって。っちゅうか幽霊役の人やって立派な俳優さんやん」
『あれが人間な訳ないもんっ!!あんな人居たら地球は終わりだよ!!』
「…どないやねん…」
阿呆な事言うてるけど、身体は震えててホンマに怖かったんやろなぁって伝わってきた。
左手で映画を停止させて右手で名前の頭を撫でてやると、やっと落ち着いたみたいで震えは治まった。せやけど名前は顔を上げて眉間にシワを寄せて俺を見た。
『ちょっと!何で止めたの!?』
「いや、名前が止めて言うたんやん」
『何言ってんの!続き気になるじゃん!あれで主人公が死んだりしたらもうアタシ…!』
どんだけ矛盾しまくる気や。
止めろ言うたり見たい言うたり忙しい女の子ですねぇお前は。
半ば呆れつつ溜息吐いて再度再生ボタンを押そうとした瞬間、
『…周助、何で大阪に来たのかな…』
名前から発せられた名前が嫌なほど耳についた。
『蔵は何でだと思う?本当に勉強の為なのかな』
「………」
不二の事、そない気になるん…?
せっかく2人で居てるのにアイツの話はして欲しく無かったのに。
「…本人がそう言うてるんやからそうなんちゃう」
『…だよね』
何で、という問いは曖昧に答えた。不二も俺に黙ってて欲しかったみたいやし…それに言いたなかった。
不二は名前に会いに来たんやで、って…そう言うたら名前の心が揺れてしまうんやないんかって不安やったから。
現時点で俺と名前が付き合うてるわけちゃうけど、少なからず手が届く範囲に居てる。その関係を失いたくないねん。
『でもアタシ……』
「名前?」
『周助には会いたくなかったな…』
「…………」
名前の眼は確実に俺を映してる。それでも俺を見やんと別の男を見てる気がした。
会いたくなかった
意味深なそれが俺にとって都合が善い意味なんか悪い意味なんか、それすら聞く勇気が出えへんかったんや。
好きである故に臆病になっていく恋心は、裏腹にも期待が入り交じってて。それが砕かれる事やなんて無いって信じたかった……
←