affection | ナノ


 


 affair.04



君が欲しい


僕だけの君で居てほしいんだ





affair.4 Monopoly desire






「名前、逢いたかった…」



やっと、逢えた。
約半年ぶりに逢えた彼女は何も変わってなくて嬉しかった。

でも、少し髪が伸びて大人っぽくなったかも。高校生の時から伸ばすって張り切ってたもんね。肩くらいしか無いミディアムヘアも好きだったけど、今も可愛いと思うよ。
それに元気してたみたいで安心した。


言いたい事はいっぱいあったけど、今は腕の中に居る名前を感じたかったんだ。



『周助、何で此処に…?』



驚いた顔がまた可愛くて、その顔見るのが楽しみだったんだよ、なんて。

首を傾げる名前に僕は嘘を応えた。



「…僕、大学落ちちゃって。地元じゃ勉強出来そうにないから大阪で1人で頑張ってみようかなって思って出て来たんだ」

『嘘、周助が落ちたの?』

「勉強不足だったみたい」



だって君の為に、なんて言ったら責任感じちゃうでしょう?

それに、偶然を装う方が運命的じゃない。それでも此処で逢えた事は運命だと思ってるんだけど。



「ねぇ、この後久しぶりに話さない?」

『ごめん、この後は蔵とご飯行く約束してて…ね、蔵?』

「…白石と?」



僕の腕から擦り抜けて白石の腕にしがみ付く名前。白石は嬉しそうにしてたけど僕を見るなり苦笑した。

フーン…白石も名前が好きなんだ。



「ご飯食べに行くの?僕も交ぜてもらってもいいかな。久しぶりに名前と会えたわけだし」

『あ、ええよ…ええよな、名前?』

『蔵がいいなら』

「有難う」



断る事なんて出来ない言い回し。卑怯かもしれないけど、僕だって引く訳にはいかないんだ。





『本当懐かしー!』

「あの時の英二には本当ビックリしたよね」

『そうそう!あの後乾君がさ、』



敢えて僕は青学の話を持ち出した。それは白石に対する敵対心。
だってそうでしょう?必死で探した彼女は簡単に僕の腕を抜けて彼の方に行くんだから。そんなの妬かないわけがない。

この気持ち、白石に分かる?



『乾汁って回を増す毎に酷くなってたもんね、あれは最悪だった!さすがの周助も――…、蔵?』



そんな中、白石は静かに席を立って、



『今日は帰るわ。久しぶりで募る話あるやろうし』



そう言った。
内心僕は白石が気を利かせてくれた事に喜んでた。これでゆっくり名前と2人で話せるんだから。それなのに…



『ほなまた明日予備校で――、名前…?』

「…………」

『…………』



伝票を持って席を離れようする白石の背中に抱きついた名前。



『蔵が帰るならアタシも帰る』

『…………』

『今日約束してたのは蔵だもん、蔵が居ないと嫌だ』



正直、頭が真っ白になっていく気がして。



『…名前、せやけど今日は不二に会うたん久しぶりなんやろ?』

『そうだけど…』

『俺は毎日一緒に居ったんやから今日は不二と話し?』

『でも今日はご飯食べたらこの間の続きの映画見ようと思ってたんだもん…』

『ホラーは怖い言うて途中で消したん名前やん。それこそ明日でもええやろ?』

『…………』

『明日予備校終わったら、遊ぼな』

『うん…』



目の前で繰り広げられる会話は僕の入る余地なんか無くて、哀しさと比例して苛々が込み上げてきた。

毎日一緒だった?何それ、僕を気遣うフリして喧嘩売ってるの?
名前も名前で、僕が居るのに何で白石に構うの?



「何だか僕の方がお邪魔だったみたいだね」



そう言った僕は逆に冷静だった。
苛々して仕方ないのに、名前と離れたくないのに、今日は駄目だって思って。



「白石、今日は名前と遊んであげてよ。僕もこれからバイトがあるし、名前とは今度ゆっくり話させてもらうから」

『不二、』

『有難う周助、また今度遊ぼうね!』

「うん、またね」



名前に笑顔を向けて、白石から伝票を取ってレジに向かうと後ろから白石がやって来た。



『不二、俺も出すわ』

「別にいいよ、今日は僕に払わせて」

『せやけど、』

「その代わり今度はお願いしてもいいかな」



ニッコリ笑って、彼が財布からお札を出す前に僕がお札を店の人に渡した。
名前の分を彼に出させたくなくて、何より僕だって白石に払ってもらう義理なんてないんだから。



「っていうかさ、随分名前と仲良いんだね。付き合ってるの?」

『いや、付き合うてへんけど…』

「そっか。名前って人なつっこいもんね。昔からそうだったよ、いつも皆に引っ付いてて可愛かったな」

『な、何が言いたいねん…』

「別に?変わってないなぁと思って。それじゃあ」



さすがの白石も僕の皮肉に気付いたらしく顔を歪めてた。言いたくもなるよね、あんな風に見せつけられちゃうと。
…君にはもう二度と負けたくないんだ。



ねぇ白石。
僕は名前に嘘を吐いたけど、君にも嘘を吐いたんだ。

名前は本当に人なつっこくて君にベッタリな様に英二や越前、桃や皆にいつもベッタリだった。
でもね、僕には一度も彼女から触れてくる事は無かったんだよ。
それはどういう意味だと思う?




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