affair.03
好きの気持ちに時間なんて関係無くて
だけどもう少し前の君も知りたいと思うのは贅沢ですか?
affaie.3 struggle
「……………」
俺の背中にある温もりは直ぐ様消えて、別の腕の中に居った。
『名前、逢いたかった…』
『周助、何で此処に…?』
この眼に映る不二周助は、男の顔して名前を抱き締めてて、ホンマに名前が好きなんやっちゅう事が全身から伝わってきた。
『…僕、大学落ちちゃって。地元じゃ勉強出来そうにないから大阪で1人で頑張ってみようかなって思って出て来たんだ』
『嘘、周助が落ちたの?』
『勉強不足だったみたい』
あくまでも偶然を装う不二は、俺に向けて視線を送ってきた。さっきの話は秘密や、そう言うてるように。
せやけどまさか、不二がここまで惚れてる女の子が名前やなんて……
“こんな男にここまで想われて落ちへん女なんや居てへんやろなぁ。”
そう、自分が思たのに撤回したくて、妙な不安で俺の心臓はドキドキしてた。
□
『本当懐かしー!』
『あの時の英二には本当ビックリしたよね』
『そうそう!あの後乾君がさ、』
「……………」
あれから、約束通り名前とご飯食べに来た訳やけど。『ご飯食べに行くの?僕も交ぜてもらってもいいかな。久しぶりに名前と会えたわけだし』そう言われたら断れるはずなんか無かってん。
俺、何してんやろ…
不二と名前は青学に居った時の話に花咲かせてて…俺が邪魔者やん。
『乾汁って回を増す毎に酷くなってたもんね、あれは最悪だった!さすがの周助も――…、蔵?』
注文した飯を食べ終えた俺は静かに席を立った。
「今日は帰るわ。久しぶりで募る話あるやろうし」
不二に名前を盗られるかもしれへん。
そんな事頭で考える余裕なんや無くて、ただ嫉妬してた。俺の知らへんアイツを見てるんが嫌やったんや。
「ほなまた明日予備校で――、名前…?」
『…………』
伝票を持って席を離れようと一歩足を出した瞬間、名前はまた俺の背中に飛び込んだ。
再び伝わる体温にビックリして後ろを見ると、俺の背中に顔を埋めててアイツの顔は見えへんかったけど、
『蔵が帰るならアタシも帰る』
「…………」
『今日約束してたのは蔵だもん、蔵が居ないと嫌だ』
少し拗ねた口調でそう言うてくれてん。
普通に嬉しかった。
俺が居てへんと嫌やなんて、そう言われて可愛いって思わへん訳が無いねん。
「…名前、せやけど今日は不二に会うたん久しぶりなんやろ?」
『そうだけど…』
「俺は毎日一緒に居ったんやから今日は不二と話し?」
名前がそう言うてくれただけで俺は満足してた。
せやから不二の為にも今日くらいは、そう思てん。
『でも今日はご飯食べたらこの間の続きの映画見ようと思ってたんだもん…』
「ホラーは怖い言うて途中で消したん名前やん。それこそ明日でもええやろ?」
『…………』
やっと顔を上げたアイツは不貞腐れてるみたいで思わず笑てしまいそうやった。
そんな名前が可愛くて可愛くて離したないけど、肩を持って席に座らせた。
「明日予備校終わったら、遊ぼな」
『うん…』
頭を撫でてやるとやっと納得した顔してたのに、
『何だか僕の方がお邪魔だったみたいだね』
今度は不二が立ち上がって俺から伝票を取った。
『白石、今日は名前と遊んであげてよ。僕もこれからバイトがあるし、名前とは今度ゆっくり話させてもらうから』
「不二、」
『有難う周助、また今度遊ぼうね!』
『うん、またね』
横で映画見ようー、って言うてくる名前にちょお待っといて、と告げてレジに向かう不二を追い掛けた。
「不二、俺も出すわ」
『別にいいよ、今日は僕に払わせて』
「せやけど、」
その代わり今度はお願いしてもいいかな、そうにこやかに笑たから俺も言葉に甘えて頷いてたのに。
『っていうかさ、随分名前と仲良いんだね。付き合ってるの?』
「いや、付き合うてへんけど…」
にこやかな裏で不二は怒ってる様子に見えた。
『そっか。名前って人なつっこいもんね。昔からそうだったよ、いつも皆に引っ付いてて可愛かったな』
「な、何が言いたいねん…」
『別に?変わってないなぁと思って。それじゃあ』
左側の口角だけ上げて笑う不二は俺にライバル心向き出しで“自分だけ特別だなんて思わないでね”そう言うてるのと同じやった。
「…不二、か……」
お前の気持ちが本物で真剣なんは十分分かってる。
せやけど俺やって名前が好きやねん。
小さくなるライバルの背中を見て、渡したくないっちゅう独占欲が湧き出た今日。
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