affection | ナノ


 


 affair.02



君が僕の原動力で
君無しでは生きていけないんだ


だから僕と一緒に居て下さい





affair.2 again






“一緒に大学行こうね”

“うん。約束”



あの約束を守る為に僕は大阪に来たんだ。




「引っ越し…?」

『ええ、昨日引っ越ししてたみたいよ』

「そ…うですか…わざわざ有難うございます」



大学入試の合格通知が届いた日だった。
丁度その時は名前が携帯を川に落として壊れたんだとか言って連絡が取れなかったから、直接家に行った。

僕は合格したけど彼女も合格していますように。
それだけを祈ってた。


だけど彼女の家に着いたら、いつもと雰囲気が違う気がして。
インターホンを鳴らして待ってると、彼女ではなく隣の家の人が出て来て引っ越ししたんだと告げられたんだ。



『確か大阪に転勤になったって言ってたけど…』

「大阪…連絡先とか分かりますか?」

『そこまでは…力になれなくてごめんなさいね』

「いえ、こちらこそすみません…」



その後、手当たり次第皆に聞いてみたんだけど誰も何も聞いてなかったらしい。

先週青学の皆で集まった時だって名前は何も言ってなかった。寧ろ、大学楽しみだね、なんて話してたのに……



どうして何も言わず僕の前から消えたの?






  □





『もしかして君…白石じゃない…?』




そして僕はただ1つの手掛かりだけで大阪に来た。

この広い街で彼女に会える可能性なんて0に等しいかもしれない。だけど0じゃないのなら僕は君を探してみせるから。


そして、彼女を探しながら予備校に通ってると、見覚えある関西人が居た。
忘れる事が出来ない、全国大会で初めて僕が負けた相手。白石蔵ノ介だ。




『あ、そうやけど…』



肯定はしたものの、彼は包帯を巻いた左手で頭を触りながら不思議そうな顔だった。

嫌だな、忘れてなんて事ないよね。
僕は鞄からテニスラケットを彼に見せた。



『もしかして不二!?』

「正解。久しぶりだね白石」

『ホンマめっちゃ久しぶりやんな、お前も予備校なんや通てたんや』



ラケットを見てやっと理解してくれた彼が屈託なく笑った。



「白石こそ、頭良さそうなのに予備校?」

『俺なぁ、受験の日インフルエンザやってん。健康が取り柄やったのに笑えへん話やわ』

「フフ、インフルエンザは厳しいね」

『せやろ。せやけど不二は何でまた大阪居てるん?』



彼の質問は最もだった。
東京に居るはずの僕が何で大阪に居るかなんて誰でも疑問に思う事。



「僕は、大阪に好きな子探しに来たんだ」

『え?』

「合格した大学蹴ってまで来たとか馬鹿な話だよね」



ありのままを伝えると白石は驚いた顔だった。
そうだよね。大学蹴って大阪で予備校なんて本当まともな考えじゃない。だけどそれだけ僕は本気なんだ。

両親にも迷惑をかけてるんだから尚更名前に会わなくちゃ納得出来ない。
“周助の人生なんだから好きにしなさい”
そう快く送り出してくれた両親には本当に感謝してる。



『そ、か…早よ見つかるとええな』

「うん、有難う」



笑う事も馬鹿にする事もなく、真剣に僕の想いを受けとめてくれた白石に感慨だった。
善い奴なんだなって。





そして今日最後の選択授業が終わるなり、僕は白石に試合をお願いした。



「白石、良かったら今度テニスしようよ」

『いつでもええで』

「今度は僕が勝つから」

『俺やって負けてられへんわ』



善い奴だからこそ、試合して今度こそ彼に勝ちたかったんだ。
今も忘れられないあの試合の続きを。

そんな中、白石の後ろには女の子が居た。背中から手を回すくらいだから、白石の彼女かな。



『蔵ー、お腹空いたー』

『うわ、いつから居ったん?』

『今ー。早くご飯ー!』

『分かったから離して名前』



……え?名前?
今、白石は確かに名前って…



『ほな不二、また――…』



白石が続けた瞬間、背中からひょっこり顔を出した彼女は名前本人だった。



「名前!!」

『……周、助…?』



こんな近くに居たんだ…


会いたかった。
ずっと、探してたんだ。

僕は白石から奪うように彼女を引き寄せて抱き締めた。
もう、何処にも行かせないと込めて。





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