affection | ナノ


 


 affair.01



君が好きで好きで堪らなくて


愛の病に侵されているなら寧ろ本望なんだ





affection
affiar.1 beginning






『うわ、最悪…』



予備校へ入学して1週間。
隣に座る女の子は鞄を見て顔をしかめた。



「…どないしたん?」

『え?あ、ごめん、独り言聞こえた?』

「ええけど、何や忘れ物でもしたん?」



困ってる人を助けたい、そんな善い人ぶるつもりは無いけど、声を掛けずには居られへんかった。



『筆箱忘れちゃったみたい、アハハ馬鹿だよねー』

「俺ので良かったら使う?女の子みたいにカラフルなペンは持ってへんけど、シャーペンなら2本持ってるで」

『本当に?いいの?』

「汚ないかもしれへんけど、どうぞ」



シャーペンを1本取り出して彼女に渡すと、



『ありがとう!』

「…………」



シャーペンを握って頬に近付けて、俺に笑顔を見せた。

この笑顔に、一瞬で俺は落ちたんや。






  □






「名前名前、名前ちゃーん」

『何よ蔵ー!もたれられたら重いんだけど!』



授業が終わってもまだノートを写せていない名前に後ろから覆い被さって彼女に軽く体重をかける。

初めて彼女と会うてあれから1ヶ月、俺と名前はめっちゃ仲良くなって。まぁ俺がいっつも話し掛けて話し掛けたからやけど。
10月からの途中入学やった俺もすっかり彼女と予備校に馴染んでた。



「今日授業終わったら暇ー?」

『暇だったら何ー?』

「可愛え名前ちゃんとご飯食べに行きたいねんけどー」

『格好良い蔵の奢りなら行くー』

「ええよ、ほな決まりな!」



約束をこじつけたとこで名前は立ち上がって、俺はバランス崩してよろけてしもた。



「、なん急に。ビックリしたやん」

『だって次の授業アタシ移動だもん』

「あー次選択やっけか…」

『うん、だから後でね』

「ん、了解」



手を振って教室を出ていく彼女を見送ると、たった1時間離れるだけやのに寂しくて。
彼女がさっきまで座ってた席に座る。

あー、椅子がまだ暖かいわ…って、変態か俺は。
せやけど変態でええわ、次の授業はここで受ける。
そう思て隣に置いてる荷物を移動させると、直ぐ様俺がさっきまで使てた席に誰か座った。



『隣いいかな?』

「、どうぞ」

『有難う』



丁寧に挨拶してくる男は標準語やった。
大阪のど真ん中やいうのに、名前といい、この男といい、東京人多いなーって。

っちゅうかこの顔、どっかで見た事ある気すんねんけど……



『もしかして君…白石じゃない…?』

「あ、そうやけど…」



俺の事知ってるっちゅう事はやっぱり知り合い…?せやけど何処で会うたんやろ、思い出せへん。
そんな中、その男は鞄からラケットを見せてきた。

テニスラケット…?
テニス、テニス……あ!!



「もしかして不二!?」

『正解。久しぶりだね白石』

「ホンマめっちゃ久しぶりやんな、お前も予備校なんや通てたんや」



うわ、懐かしい…
全国で試合した以来やん。

コイツめっちゃ強かって、俺が勝ったけどホンマ互角やってんなぁ……



『白石こそ、頭良さそうなのに予備校?』

「俺なぁ、受験の日インフルエンザやってん。健康が取り柄やったのに笑えへん話やわ」

『フフ、インフルエンザは厳しいね』

「せやろ。せやけど不二は何でまた大阪居てるん?」



俺が質問すると不二は視線を下げて笑た。



『僕は、大阪に好きな子探しに来たんだ』

「え?」

『合格した大学蹴ってまで来たとか馬鹿な話だよね』



苦笑してる不二やけど眼は真剣そのもので。
ホンマにその女の子が好きなんやなって伝わってきた。



「そ、か…早よ見つかるとええな」

『うん、有難う』



顔もええし、性格やってやんわりやし……こんな男にここまで想われて落ちへん女なんや居てへんやろなぁ。それが素直な感想やった。





そして今日最後の選択授業が終わって不二が席を立ち上がると、



『白石、良かったら今度テニスしようよ』

「いつでもええで」

『今度は僕が勝つから』

「俺やって負けてられへんわ」



試合する約束をした。
今も謙也と高校の部活に顔出してるし、今から不二と試合するんが楽しみで。

そんな中、背中に暖かい感触。



『蔵ー!お腹空いたー』

「うわ、いつから居ったん?」



後ろから俺の腹部に手を回して引っ付いてきた名前。



『今ー。早くご飯ー!』

「分かったから離して名前。ほな不二、また――…」



また明日

その言葉は出て来おへんかった。



『、っ名前!!』

『……周、助…?』

「……………」



不二は俺に話した時と同じ、真剣な眼やったから。

見つめ合う2人の眼に俺の姿は無かった……




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