明日春がきたら | ナノ


 


 take.12



募る想いと比例するのは醜い嫉妬心、


傷つけたくないのに





take.12 振り向けない僕





「…………」

『今日1現英語の小テストじゃん、嫌だー』

『ホンマに?俺も3現がそうやで…やってられへんわー』

『ねー、この世からテストが無くなればいいのに』



この際テストなんかどうでもええ。授業聞いてたら簡単や。
名前は授業受けへんから出来ひんねん。謙也先輩はどうせ寝てるんやろ。

せやから問題はそこちゃうねん。



「何で小学生みたいに仲良く登校せなアカンねん…」



左から俺、名前、謙也先輩の順で手を繋いで登校。通りすがりのオバサンは小声で『最近の高校生は仲良ええねんなぁ』とか『見て見て、可愛えわ!』とか『女の子の取り合いやろか?羨ましいわぁ!』とか言われて。ホンマあり得へん。



『えー、光照れてるのー?』

「照れてへん」

『ほななんや?財前が嫌なんやったら名前の手離したらええやろ?』

「謙也先輩が離したらええやないですか」



大体アンタが邪魔やねん。
いつの間にか現れて、名前の隣に居って。今じゃそれが当たり前みたいで、ずっと前から一緒に居てたみたいな雰囲気。

名前も名前や。
何易々と他の男近付けてんねん。
…アカンわ、めっちゃ苛々してきた。



『俺は、離さへんで!な、仲良しやねんもん!』

『そうだよー、手繋いで歩いたら温かくて楽しいでしょー?』

「………」



楽しい?
今の俺が楽しんでる顔してるか?



『謙也の手、やっぱり大きいから好きー!』

「!」



“好き”の一言で苛々した頭は血が昇るみたいに熱くなった。



『ね、光も「先行くわ」』

『え?』

「付き合うてられへん。アンタ等2人仲良お登校したらええやろ?」

『ひかるっ、』

「朝から鬱陶しいねん。放っといてくれへん」



後ろから『光、ひかるっ、』と名前の声が聞こえたけど振り向かず俺は足を進めた。

何で今日はこない苛々してるんやろ。自分でも分からへん。
兎に角余裕なんや無くて、ただ謙也先輩と名前の会話と繋がられた手が嫌で嫌で仕方なかってん。謙也先輩にホンマに盗られてしまうやないかって…

焦り?
そんなわけない、そう思ったって確実に距離を縮めていく2人を見たらどうしようもないねん。


なぁ、名前にとって俺は“幼なじみ”でしかないん?





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