take.10
君に依存性な僕を笑ってもいいから
だから君も僕に依存して欲しい
take.10 薬物依存性
「39.3…上がってるわ…」
あれからフラフラになりながらも家まで着いた俺の体温はまだまだ下がってくれる様子は無いらしい。
「絶対名前のせいや」
保健室で目が覚めた後、家に帰る為に名前を叩き起こしたんやけど。
『え!何!?地震!?』
「阿呆、寝呆けんな」
『ひかる……あ!!そうだ光、大丈夫!?死んじゃ嫌ー!!』
俺の肩を掴んでかっくんかっくん前後に揺らしてきて、頭痛いのに拍車かかって吐きそうやってん。
「死なへん!せやから離せ!気分悪いわ」
『あ、ごめん』
「俺帰るけどちゃんと授業受けるんやで」
『え!?光が帰るならアタシも帰る…』
「アカン」
『ちゃんと光の看病するから…』
「アカン言うてんねん。早退しても家上げへんからな」
『光の意地悪…』
「何とでも言うときや」
お前がちまちま授業サボってるん俺が知らんとでも思てるん?甘いわ。
卒業出来ひんかったらどないすんねん。……留年して同じ学年になるんもええかもしれへんな。って、アカンわ、やっぱ俺熱あるわ。
『…じゃあバイトの前に行く』
「風邪移ったらアカンし来んでええ」
『嫌!行くったら行く!』
「…分かったわ。せやけど授業はちゃんと受けるんやで」
『うん…』
不満そうな顔やったけど渋々頷いたから、家帰って寝てたら5時前にアイツが来たんや。
部屋に入ってくるなり大声で俺を起こして、ホンマ迷惑極まりない。
『ひっかっるー!!』
「…もう少し静かに出来ひんのか」
『え、普通じゃない?』
「お前の普通と一般的な普通は全くの別物や」
『何言ってんの?意味分かんない!』
コイツのこういうとこはめっちゃ面倒臭いと思う。
「もうええわ。授業は受けたん?」
『うん、ノート写してないけど受けたよ』
「…………」
『だって光と約束したもん!』
せやったらノートくらい写さんかい。
そう思たけど、まぁええかって甘やかしてしまいそうになるんはアイツの顔が柔らかいから。
「っちゅうか5時からバイトやろ?遅刻ちゃうん?」
『あ、そうだった!今日は5時半からなんだけどそろそろ行かなきゃ遅れちゃう!』
「早よ行け。俺も寝たいし」
『えー?超元気そうじゃん!あとお見舞い持って来たんだよ』
「お見舞い?」
『うん!身体冷やさない様に湯タンポ!』
「……………」
『じゃあ行ってきます!明日学校来てね!』
足音をバタバタ立てて部屋を出ていく名前は台風みたいで。
色気無い湯タンポだけが俺の枕元に残った。
「湯タンポは無いやろ…それに元気に振る舞ってやっとるだけや…」
さっきまで平気やったのに1人になった瞬間、頭痛は酷くなって枕に顔を埋める。
『林檎とか栄養ドリンクとか、もっと身体にええモノ持って来いっちゅー話…』
適度に暖かい湯タンポを抱き締めて、アイツは俺が居てへんと生きていけへんやろなぁって勝手な事を思って眼を閉じた。
いうて俺も名前にめっちゃ依存してるんやけど。
□
そして次の日、携帯のアラームが鳴って眼を開けようとすると妙に息苦しい気がしてん。
熱下がってないんやろか、今日は学校行けへんかも、なんて思た矢先。
『光っ起きて!おはよー』
「……は?」
『財前、学校行くでー』
「…待て。どう考えても可笑しいやろ」
『何が?』
眼を開けると布団の上から俺に乗っかってる名前、と謙也先輩。
息苦しいんはアンタ等のせいか!
「早よどかんかいボケ!!」
『おわ!』
『ひゃ!光急に動かないでよ!』
「黙れ」
『何怒ってんねん財前』
「朝からその金髪鬱陶しいねん」
『き、金髪にケチつけんな!!』
ワイワイキャーキャー、どう考えても非常識や。
仮にも俺は病人やねんで。
名前はともかく何で謙也先輩が居るんや!
「ホンマあり得へん…」
怒りを通り越して呆れる事しか出来ひんけど。
『光、早く学校行こう?』
「……………」
この2日間、目覚める度に名前が居ること。騒がしくて面倒臭くてしゃーないけど心ん中は浮かれてたんや。
「支度するわ…」
『うん!』
息苦しくて起きた朝やのにもう頭はスッキリしてた俺。
名前が1番効く薬剤やねん、とか思た自分にめっちゃ恥ずかしくなった。
←