snow fall | ナノ


 


 st.08



君に向けて進めた一歩を

白く染まる世界につけた足跡を忘れはしないと胸に刻む





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俺は、お前の前から消えたりせん


それは俺の告白やった。
ずっと、名前と一緒に居たい。その気持ちをぶつけたんや。



『……ひか、る…』

「…………」



正直、今言うつもりなんか無かった。この時点で名前は俺に気持ちがある様な気はしてへんかったから。
せやけど、名前の泣く顔見ると溢れてしもたんや。お前を支えてやりたいって。お前の傍で俺がお前を笑わせてやりたいんやって……



『あ、アタシ…』



ボロボロ零れ落ちてた涙はいつの間にか止まってて、それでもアイツの眼にはソレが光ってた。

瞬きすると今にも落ちてきそうやけど、名前は服の袖で拭きとった。



『、アタシも…』

「え?」

『アタシも光と一緒に、居たい…』



包帯を巻いた逆の手、つまり左手で名前は俺の手を握る。

な、に……?
叶うはずないって思てたのに…
名前も俺と一緒に居りたい、そう思てるん……?



「名前、」

『嬉しいな、アタシ…1人じゃないんだね…』



当たり前や。1人になりたい言われたって1人にさせる訳ないやろ。



『アタシ、もう泣かない』

「ん…」



瞬く胸を押さえきれへん。名前を再び抱き締めようとする俺やけど手を伸ばそうとした瞬間、アイツが口を開くから思わず止めてしもた。



『光が居るもん。蔵だって謙也だって、オサムちゃんだって居る』



………。

何か、話がおかしない?
俺が居って、部長や謙也先輩やオサムちゃんも居る……
いや、そら居てるけど今言う事?

ま、まさかやとは思うけど。もしかしてお前……



『皆が傍に居るのに贅沢な事言っちゃ駄目だよね!うん、元気出た!』



やっぱり。
コイツ、俺が告白したん分かってへんな……慰めただけや思てるわ。
どんだけ鈍いねん。



『光、有難うね!』

「別に……」

『何その顔ー!眉間にシワなんか寄せてたら幸せ逃げちゃうよ!』



お前のせいやお前の。

変に緊張してしもてたのに一気に脱力感。

俺の気持ちもよお考えろ阿呆。



『こんな怪我、直ぐ治してやる!』



泣いてたのが嘘みたいにはしゃぐ名前を見てたら溜息出そうになった。

俺可哀想ー。とか思たり。



『だからさ、光っ!』

「…なん?」

『アタシの手が治ったら、試合しようね!』



歯を見せて得意気に笑うアイツのパワーは、溜息さえも吹き飛ばして俺の心を支配する。

オサムちゃん、アンタだけには適わん思たけど訂正するわ。

コイツのが一枚も二枚も上手。
しかも無意識やから余計適わへん。



「…ええよ、その代わり手加減せえへんから」

『あったり前!光をけちょんけちょんにしてやるから!』

「勝手に言うとれ」



勘違いされたままなんもアレやけど、それでもお前が無垢に笑うならええねん。


“笑顔”
それは君の為だけに存在する言葉だと信じてる。





  □





「まさか、告白があんな風に終わるなんか思わへんかったな…」



帰り道、アイツを送ってやろうと思てたのに名前は部長に会いに行く、と部活が終わって直ぐに行ってしもた。今の部長を立ち直せる事が出来るんはアイツだけやし、それは止める気は無かってん。いつまでも部長の湿気た顔見たくないんは俺も同じや。

そして俺は、名前とのやり取りを思い出して1人思いだし笑い。



「アイツにははっきり言わな伝わらんわ」



その笑いは苦笑混じりやけど、不思議と嫌やなかった。

もしかしたらこれで良かったんかもしれへん。未だ部長とは決着ついてないし……



「あ、雪……」



耽溺する俺に、静かに降り始めた雪。

答えの出えへん悩みなんかするな、そう言われてる気がした。
でも、確かにそうかもしれへん。俺は出来る事をするだけ。



「アイツを、見てる事を…」



もう君が涙流さない様、僕が君をずっと見てるから。君が寂しくならないように、これ以上大事な物を失わないように。

徐々に白く染めていく雪のように、僕の想いも募っていくんだ。
ただ違うのは、僕の想いは溶けてなくならないということ……



真っ白な中につけた足跡を見て俺は思う。
此処がホンマのスタートラインやと。





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