snow fall | ナノ


 


 st.04



君の笑顔を見て今気付いた

僕が欲しいのはその笑顔


温もりある太陽が世界を結ぶように僕と君も蝶々結びになればいいと願った





st4.low pressure





名前が、このクソ寒い中アイス食いに行こうと阿呆な事言い出した。



『寒いからアイス食べるんでしょ!冬のアイスは格別だよね謙也!』

『せや、冬に食べんとアイス通にはなれへんでお前等!』



正直何言うてんねん、そう言いたかったけど部長も行く言うてるし……俺も行くしかないやん。



『ねぇ、行かないのー?光ー』

「行けばええんやろ」

『やった!じゃあ早く行こう!』



アイスごときにそんな張り切らんでええのに。

せやけど、それだけで機嫌良く笑う名前は俺が欲しいと思てる顔やねん。
……ずっとそういう顔してたらええ。お前の仕事はマネージャーなんかやなくて、横で笑てる事。


とりあえず行こか、そうなったのに問題があった。急な雨のせいで手元にある傘は3本。
謙也先輩が濡れて行くん?



『3本かぁ…どうする?』

『どうするって、誰かがお前と一緒に入ればええやん』

『じゃあ謙也入れてー』



てっきり謙也先輩が濡れるもんや思てたのに名前と一緒の傘入るって?
なんやそれ……まぁ部長よりは全然ええけど。



『ちょ、何で俺やねん!名前は白石か財前に入れてもらえって!俺は1人がええ!』

『うわー、超拒否られた!ショックー』

『きょ、拒否ちゃうわ!狭いから嫌や言うてるだけやで!』

『あっそ!』



謙也先輩って、俺と部長の気持ち知ってんねや。部員一鈍い思てたのに。せやけどこない気使われるんも微妙や。
名前に俺か部長選ばすとか逆に酷やわ。



『うーん。じゃあ光入れてー』



え?俺?
部長やなくて俺に言うてんの?



『面倒臭…』



そんな事言いながら少し優越感。面倒臭い事に変わりはないけど選ばれるんて悪くない。



『いいじゃん別に!嫌なの!?』

『えーよ別に』

『はい決まりー!』



せっかくやし堪能しよやないか、相合傘っちゅーやつ。

傘を取って部室を出ようとすると謙也先輩が一言。



『名前、何で財前にしたんや!』

『えー…何でって…』



名前やないけど俺もえーって言いたい。

そういうん、普通聞く?ホンマ空気読めへん人やな。
でもアイツ何て言うんやろ。



『だってね、蔵に入れてもらったら蔵自分ばっか濡れちゃうんだもん』

『…………』

『え?』

『だからー!蔵は優しいからアタシに傘寄せて自分はびしょ濡れになるから嫌なの!前一緒に帰った時も制服色変わっちゃってたんだから』



……ちょっと期待してしもた自分がウザイ。

なんなんやその理由。
俺が良かったとかそんなんちゃうやん。部長の事しか考えてへん。
めっちゃ腹立つわ……



「ソレ、部長と違て俺が冷たい言うてるん?」

『そんな事は言ってるような言ってないような』

「…………」



何、普段の行いのツケってやつ?
……ええわどうでも。こんなん一々気にしてられるか。



『名前ちゃん、』

『あの時有難うね蔵、お陰で全然濡れなかった』

『良かったわ、風邪でも引いたらアカンしな』

『うん……』



ホンマやってられへん。
なんやねんこの空気。名前も何赤なってんねやボケ。そう思て舌打ちした瞬間、



『ぶええっくしょーいっっ!!』

『!』



豪快すぎるくしゃみ。
くしゃみが出そうなだけやってんかコイツ……

フッと眼をやると、部長が固まってる……アカンわ、笑てしまいそう。



『汚なっ!名前のボケ!お前こっち向いてくしゃみすんな!』

『ちょうどいいところに謙也って言う壁があったからついつい』



それは正しい判断やな。せやけど。



「お前もう少し可愛いくしゃみせえや」

『光うるさいっ!くしゃみに可愛いもクソも無いって』



あるやろ。
あんなん親父級やで。まぁ、変に可愛ぶってなくてお前らしいけどな。
そして店へ向こう途中、名前からこんな話をされた。



『光はテニス好き?』

「…は?」



いや、好きやなかったらしてへんやろ。
ホンマお前はいつも突発的やねん…



『好きかって聞いてんの』

「そら好きやないとしてへんわ」

『だよね。アタシも好きだよ、テニス』



んなもん、見てたら痛いくらい分かるわ。
でも、それなら何で女テニに入らへんかったんやろ。



『テニスが好きな人同士が集まるのっていいよね、楽しい』

「…………」

『明日は晴れるといいな、テニスしたい』



聞きたいのに、聞けへんかった。
テニスの話をしてる時の名前の顔は何時もより全然綺麗で、降り注ぐ雨もがアイツを光らせるためだけにある道具にすら見えたんや。


アイツがテニス好きならそれでええか。なんて呑気に思ってた自分を、馬鹿やと思う日が来るなんて……




誰が思う?







  □




次の日、俺は担任に“進路について”のしおりを作れって言われてて1時間遅れで部活に行った。

今日日直やったからって何で俺がそないな事せなアカンのや…!
帰宅部の暇そうな奴にさせればええやん。寧ろ担任がやればええ。



「あと2時間ちょっとしかあらへんやん」



時計を見ると5時前で。
これが真夏日なら陽が出てる時間が長いから普通に8時とかまでやるけど、冬は7時でも真っ暗になってまうし何より夜になると冷え込むから。


ハァ、と溜息ついて部室へ向かうと名前と部長と謙也先輩がジュース飲んでた。

名前はバナナミルクなんか持って俺に手振ってる。
うわ、甘そ……



「珍しくラリーしてないんや」

『うん?さっきまでやってたよ、そろそろ光が来そうだしそれまで休憩しよーって』

「フーン…」



やっぱりやってたんか。
どれだけ打ち合うん好きなんやろこの人等。



『財前、他の奴等にはアップさせて自主トレさせてるから』

『どうも。気効きますやん謙也先輩』

『当たり前や!俺を誰やと思てんねん』



誰って謙也先輩やろ。
まぁそれは軽く無視して。



「ほな部活始めましょか」

『おー!やろやろー!』

『今日の練習メニュー何なん?』

「えーと今日は…」

『アタシボール取ってくるね!』



頼むわ、そう言うてメニュー表を見てた俺。

今日のメニューは…



『オサムちゃんのお笑い講座やで』

「!」

『オサムちゃん!急に出て来やんでって言うてるやん!』

『ホンマビビった……!』



何処からともなく出て来たオサムちゃんに俺等3人は眼を丸くしてた。

いつの間に居ったんやこの人……!
しかもお笑い講座って……うわ、メニュー表もそう書いてる。



『これぞオサムちゃんの神隠しやー!ハッ、俺の凄さにビビったか!』

『オサムちゃん上手い事言うな!』

『せやろー!謙也には1コケシやるわ!』

『要らんて!』

「アンタ等ウザイわ……」



お笑い講座はええから何します?
そう聞こうとした時。


ガシャーン!!!と、凄い音が後ろから聞こえてきた。



「!!」

『なんや今の音……、名前ちゃん?!』



そっちを見るとボールが入ってたカゴが落ちて散乱してた。横には、倒れこんでる名前。



「…………」

『どないしたんや!大丈夫なん!?』



駆け寄る部長に続いて俺等も名前の方へ行った。

さっきまで元気やったのに、何で倒れてんねん……!
何が起きたんや……?



『………っっ、……』

『良かった、意識あんねんな…』



は?
どうしたら何が良いんや?



『謙也!何も良くないわ!名前ちゃん、どっか痛いんか…?』

『…う゛っ、……、っ…』

「名前……?」



名前は右肘を押さえ込んで言葉もなく唸ってた………




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