snow fall | ナノ


 


 st.03



雨の粒ひとつひとつが
僕の気持ちとして君に届いたなら

君は雨が好きだと言ってくれますか





st3.a silent time






急遽、雨で中止になってしもた財前との試合。
同点で終わってしもた事で胸にモヤモヤが残ってしもた。


オサムちゃんの言葉で気付いた財前の気持ち。
もっと冷静に見てたらすぐ分かるもんやった。アイツが名前ちゃんを見てる時、笑ってなくても眼は笑てるんや。ソレに今まで気付かへんかった俺も阿呆やなぁって思たけど、気付いてしもた以上財前に名前ちゃんは渡したない。ライバル心が俺ん中で芽生えた。

あの試合やってホンマは純粋にテニスを楽しみたかったはずやのに、財前見てたらカーッと熱くなる自分が居って絶対勝つ、そう決めてた。

せやのにこない中途半端に終わるやなんて……



『蔵ー!!』

「、どないしたん名前ちゃん」

『謙也とアイス食べたいねって言ってて蔵も行かないかなって』

「ん、行く」



何か邪魔なんが居るけど名前ちゃんの誘いを断るわけがない。
アイス食べにやろうが何処やって行くわ。

え、アイスって言うた?
この寒いのにアイス?



『光も行こうよー!』

『、何処に?』

『アイス食べに』

『寒いわ阿呆』



名前ちゃん…わざわざ財前誘わんでええのに…

しかも同じ事考えてるとか何か嫌や。訂正訂正、さっき思たん撤回や。



『寒いからアイス食べるんでしょ!冬のアイスは格別だよね謙也!』

『せや、冬に食べんとアイス通にはなれへんでお前等!』



別に通にはなりたないけど。
せやけど名前ちゃんが言うならアイスもええかもしれん。って、俺も単純やんな。



『ねぇ、行かないのー?光ー』

『行けばええんやろ』

『やった!じゃあ早く行こう!』



しゃーないな、そういう言い方したって財前は嬉しそうや。
ホンマ、面倒臭い奴敵になったなぁ……


部室に置きっぱなしにしてた傘が3本。
っちゅうことは誰かが名前ちゃんと相合傘?うわ、譲れへんコレ……!!
前もそやって一緒に帰ったことあるし、俺と同じ傘でええんちゃう?



『3本かぁ…どうする?』

『どうするって、誰かがお前と一緒に入ればええやん』

『じゃあ謙也入れてー』



は?謙也?
何で謙也?お前そんな事してみい……
明日シバいたるで……!!

俺は謙也にめちゃくちゃガン飛ばした。



『ちょ、何で俺やねん!名前は白石か財前に入れてもらえって!俺は1人がええ!(せやないとアイツ等の視線痛すぎや…!)』

『うわー、超拒否られた!ショックー』

『きょ、拒否ちゃうわ!狭いから嫌や言うてるだけやで!(ええから俺に振れんといて!)』

『あっそ!』



よっしゃ偉いで謙也。
後は俺を選んでくれたら……!



『うーん。じゃあ光入れてー』

『面倒臭…』



財前……?
嘘、名前ちゃん財前選ぶん……?

アカンわ、めっちゃショック…
何で?俺は嫌なん…?



『いいじゃん別に!嫌なの!?』

『えーよ別に』

『はい決まりー!』



うわ……何アイツ等のええ雰囲気…
俺は謙也を思いっっ切り睨んだった。お前が“白石に入れてもらえ”って言うてたら良かったんや。
俺の視線に気付いた謙也は顔真っ青にさせて名前ちゃんに話掛けた。
なんや今更。



『名前、何で財前にしたんや!(嫌やこのポジション)』

『えー…何でって…』



何ハッキリんな事聞いてんねん!!
阿呆か!お前阿呆やろ!絶対阿呆や!!

そ、そら俺も聞きたいけどこれ以上ショック受けるような返答来てしもたら俺……!



『だってね、蔵に入れてもらったら蔵自分ばっか濡れちゃうんだもん』

「…………」

『え?』

『だからー!蔵は優しいからアタシに傘寄せて自分はびしょ濡れになるから嫌なの!前一緒に帰った時も制服色変わっちゃってたんだから』



それは、俺の事を考えてくれてたん……?

そら俺は名前ちゃんが濡れたらアカンからそうしてたけど………

アカンわ、普通に嬉しい。



『ソレ、部長と違て俺が冷たい言うてるん?』

『そんな事は言ってるような言ってないような』

『…………』



財前悪いな!今回は俺の勝ちや!
名前ちゃんはホンマええ子や……せやけどそんな事気にせんでええねんで?
名前ちゃん守るんは俺の義務やねん。



「名前ちゃん、」

『あの時有難うね蔵、お陰で全然濡れなかった』

「良かったわ、風邪でも引いたらアカンしな」

『うん……』



少し顔を赤らめて口元を手で押さえる名前ちゃん。
もしかして照れてんの……?

可愛い……!俺が逆に照れそうや!なんか思た瞬間。



『ぶええっくしょーいっっ!!』

「!」

『汚なっ!名前のボケ!お前こっち向いてくしゃみすんな!』

『ちょうどいいところに謙也って言う壁があったからついつい』



赤なってたんは寒かったから?
手で押さえてたんはくしゃみ出そうやったから?
……そういう事ですか…。



『お前もう少し可愛いくしゃみせえや』

『光うるさいっ!くしゃみに可愛いもクソも無いって』



せや。名前ちゃんやったら何でも可愛えわ。
ホンマはそう思てるくせに素直やないわ。





  □




そんなこんなでハーゲン×ッツに着いた俺等やけど。



『アタシあれ!ワッフルのダブル!ミルクとチョコチップ!』

『俺も俺も!』



謙也と名前ちゃんて、似た者同士なんかな…
着いた瞬間2人でめっちゃテンション高いし、同じの選んでるし。

俺は無難にバニラ、財前はグリーンティーを選んでた。
財前が抹茶って、まんまなイメージや。



『はー、美味しい……』

『冬やからこそ味わえるっちゅーもんやでな』

『さすが謙也!分かってるじゃーん!』

「ホンマホンマ、美味いなぁ」



謙也に負けじと俺も話題に入る。
外は寒いけど、夏みたくただ冷たいモノを味わうっちゅうよりちゃんとアイスを食べてるって感じして冬のアイスも悪ないなぁって。
名前ちゃんが幸せそうに食べてる姿見てたら俺にも伝染してしもたんや。



『本当!?良かった、蔵が喜んでくれて!』

「……………」



逐一喜んだ顔を見せる名前ちゃんに眼を奪われる。

この子は純粋な女の子なんやと思う。自分が好きなモノを他人に分かってもらう事が嬉しい、そんな表情で。


好きやなぁ


改めて感じた。
俺はどうしようもないくらい君が好きです。



『光は?美味しい?』

『うん、悪ないんちゃう』

『でしょー!また来ようね光!』

『ええよ…』



財前も珍しく素直になってた。
それはきっと名前ちゃんを取り巻く優しい空気に包まれたからやないかな。

俺にも“また行こう”って言ってほしかってんけど、あの言葉は財前だけやくて俺等全員に言ってるようなもんやったから嫉妬はせえへん。この空気、そないな事で崩したくなかった。


そんな彼女を挟んで食べる冷たいアイスは絶品で、今日は終わってく。




明日、あんな事が起きるなんか想像もつかへんくらい穏やかな時間やったんや………




prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -