AA | ナノ


 


 take.03



“俺は行けない”

あの人の言葉の真意は分からへんけど、俺はアイツを追い掛けた。






take.3
ask for you





「名前!待ちや!」



俺がどんなに呼んでもアイツは走る事を止めへんくて。
俺がどんなに追い掛けてもアイツが求めてるんは俺やない。



「……っ、待て言うてんのが分からへんのか!」

『………』



俺が追い付いて名前の腕を引っ張ると、やっと足を止めた。



『ひか、る…アタシ、邪魔だったの…?』

「そないな事、」

『だって言ってじゃない!竜二君、アタシより先にあの女の人と知り合ってたって!』

「…………」

『本当はアタシ…遊ばれてただけだったんだ…嫌だ、嫌だよ……ひかる…』



泣きじゃくる名前を慰めようにも、安易に何も口にする事は出来ひんくて…



「泣かんで…」



アイツを守るように抱き締めてやる事しか、それしか俺には出来ひんかった。



『……光?』

「、」

『ごめんね、アタシなんかの為に…』



俺の胸をトンと押して顔を見せるアイツは、もう涙出さへんようにゴシゴシ目擦って何度も謝ってた。
我慢せんでええのに…
目の周り真っ赤になってるやん…



「謝らんでええ。俺が勝手な事したんや…悪かった、な…」

『ううん、光が行ってくれて嬉しかった。アタシなんかの為に行動してくれる人が居るんだなって』

「なんかとか言うな」

『え?』

「俺のお前の…仲やねんやろ?」

『光……』



俺が携帯に貼られたプリクラを見せると、名前はめっちゃ笑顔になって俺に飛び付いた。



『光、光…光が居てくれて嬉しーぃ………』

「そら俺の存在も救われたな…」

『え?なに?』

「何でもない」



名前の背中をぎゅっと抱き締めて、俺にも出来る事があったんやって思た。

なぁ、俺がお前の力になれるなら幾らでも手貸したる。
せやから1人で抱えこまんと俺を利用したらええ。気紛れやっても俺を求めてくれたらええから……



『……光、何かポケット揺れてる。携帯鳴ってるんじゃない?』

「…ああ、ホンマや」



名前を離さんと携帯を取り出して、届いたメールを開くと。



「げ……」

『どうかしたー?』

「アカン、部長からや…」



“お前学校サボったらしいやん。まぁそれはええとして部活は勿論来るよなぁ?後10分で始まるで”

もうそないな時間なんか…
ここでサボったら明日俺殺されるわ……



「堪忍、俺部活行かなアカンわ。あれやったら終わってから…」

『行く』

「は?」

『アタシも行くー!』




  □




『『……………』』

「そないジロジロ見んでくれますか」

『はー、これが財前の彼女か…』

『はーい光の彼女の名前でーす』

「付き合うてへんやろ」

『光のいけずー』

「…………」



あの後。



「い、行くって…来ても何も面白ないで…?」

『行くったら行く!行くもん!』



連れてったら絶対冷やかされる。あの先輩等はそういう奴等や…
アカンどないしよ、どうにか帰ってもらえへんやろか。



「終わったら会いに行く、せやから…」

『アタシと光の仲でしょう……?』



また泣きそうな顔して見てくる。



「分かった分かった、もう好きにしぃ」

『ヤッター!光好きー!』



どんだけやねん……

こうして連れてきた訳やけど。



『まさか財前が女連れて来るやなんてなぁ…』

『白石も連れて来たらええやん』

『なんやと?』

『あー、せや。アイツは土下座しても来てくれそうにないな』

『謙也。やっぱりお前今日部活終わったら1人で部室掃除とコート整備しときや』

『は!?嘘やん白石!俺のアメリカンジョークやん!ベリーベリージョークやん!何で通じてへんねん!』

『うっさい!死ね死ね!謙也死ね』



あー…もう…ホンマこの人等は…
もうちょい静かに出来ひんのか。



『アハハ!面白いね先輩』

「毎度毎度こない騒がれる身にもなってみぃ」

『善いじゃん。楽しくて。何もかも忘れられる』

「名前……」



せや。コイツは笑てるけど、ホンマは悲しいん我慢してんねや…



『財前!』

「だっ…!」

『いつまでもイチャついてへんと練習始めんど!』

「わざわざどつかんでええっちゅーねん…」



謙也先輩のせいで不機嫌になった部長のどつき方は朝より酷くて。
俺は頭を擦りながらラケットを鞄から取り出した。



『光!』

「ん?」

『頑張ってね』

「…俺を誰やと思てんねん」



そう言うと、またニッコリ笑て。
コイツは笑顔が似合う。そう思ってん。




  □




「見てても面白無かったやろ」

『えー面白かったよー!』

「何処が?」

『謙也先輩が白石先輩にやられてるとことか』

「ああアレか…」



要らん事ばっかり言うてるからどやされんねん。
部長怒ったら怖いっちゅうのに。

部活が終わって名前と帰ってると、急に立ち止まる。

どないしたん、そう言おうとした時。



『光、アタシ帰りたくない…』

「、せやけど…」

『1人になりたくない』

「………」

『アタシ、独り暮らしだから…光に来てほしいな…』

「………」

『駄目?』

「……気ぃ済むまで、一緒に居たるわ」



何言うてんねんって怒らなアカンとこやったんかもしれへん。

それでも、これが彼氏の代わりやとしても俺はコイツの傍に居てあげたかったんや。

お前がそう望むなら、俺はそれに従う。



「お前…ええ部屋住んでんねんな……」



名前の家に着くと高級住宅とは言われへんけど、高校生には似つかわへん綺麗な部屋やった。



『……親が用意した部屋だからアタシは関係無いよ』

「名前……?」

『さぁ光、そんな事より遊ぼうよ!』



名前が、親っていうた瞬間、とてつもなく顔が濁った。
それは嫌いっちゅうより…憎しみが籠もってるかのような、そんな表情………



「、遊ぶって何すんねん」

『んー、何しよっかー?』

「…飯でも食いに行く?」

『光が作ってよー!』

「阿呆か…俺が料理出来るわけないやん」

『嘘ー光のご飯食べたい食べたい食べたいー!』

「無理や」



なんや急にだだっ子になって。
幾ら言うても料理は出来んったら出来ひんわ。



『光…食べたい…』

「せやから無理やって…… ――!」

『ひかる…』



名前は俺に

キスをした。



「名前、お前、何して…っ、」

『……お願い…』

「……っ、……後悔するんやないで…」



何度も何度も夢中でキスをした後、名前は俺に覆い被さってきたんや……





prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -