violet shaking | ナノ


 


 mission.08



君の心が覗けたら良かった


教えて
今何を考えて誰を想ってるのか





mission.8 無力な時間





確かに名前にメール送ったのに……
宛先が違うって、なんでや…?

送信メールを見てもやっぱり名前のアドレス。



「…………」



何も言わんと家に帰る。
家に訪ねても出てこうへん。
電話も取らへん。
メールもエラー。

俺、避けられてんか……?



「何で、急に…」



今まで何言われたって、どんな時やって避けられる事なんか無かった。

なんやかんや言うたって、アイツは俺の我儘に付き合うてくれて傍に居ったんや。

昼飯食う時も、学校の帰り道も、元々の1週間期限付きの付き合いやって……
文句言うたりはしてたけど最後は普通に笑てたから俺はソレに安心して甘えてたんや…



「名前……」



アイツの話を聞いてやりたい。
些細な事やっていい、今の胸のうちを全部。
せやけどメールも出来ひんし電話も会う事やって無理やのにどうしたらええねん。

もう、手遅れなん……?
何とか言うて――……





  □





『おはよーさん白石ぃ!』

「、ああ謙也か…」

『うわっっ、暗っ!怖いでお前、蔵ノ介だけに暗いってか?』

「………」

『え!突っ込まへんの!?いつもなら寒いとかウザイとか言うて殴ってくるやん!』

「せやったっけか……?」



謙也のクソくだらへんギャグに突っ込むとか、そない気分ちゃうねん。

昨日、家帰ってからも名前からアドレス変えました、とか普通にメール来おへんかなって待ってて寝るに寝られへんかったんや。
結局、来てへんけどな…



『白石ぃ…お前どないしたん、可笑しいで今日』

「、なんでもない」

『せやけど、』

「普通、やから…」

『……あれの何処が普通な顔や言うん。健康オタクが目の下クマ作りよってからに…』



今日は土曜で学校休みやけど、補習があって良かった。

話する事は出来ひんかもしれんけど、アイツの顔見る事は出来る。
どんな様子かだけでも知れたら……



「休、み……?」



教室へ行くと名前は来てへんくて、オサムちゃんの口から欠席は名前だけや、と伝えられた。

ホンマに体調悪いん…?

……ちゃう、これは体調不良やなくて俺の事避けてるから。
お前、顔も見たないほど俺が嫌いになってんか?
俺、お前に何してしもたん…



補習授業は、名前の顔が頭に浮かんで先生の話なんか耳に入ってこんかった。

思い出すのは笑った顔やったり呆れた顔やったり面倒臭そうな顔やったり色々やけど…
面倒臭そうな顔してんのが1番らしくて、ホンマは1番好きやったかもしれへん。

俺の事、好きにならんでええから、せめて…せめて普通で居ってほしい。



「この状況、俺にはキツすぎるわ……」



部活、する気になれへん。



『白石ー!』

「なんや、また謙也か」

『優しーい格好良いースピードスターが迎えに来たったで!』



寧ろ1人にしといてほしいねんけど。


アイツの事を考えてると時間なんかあっという間に経ってしもて、部活まで後10分。

朝の腑抜けた俺を見て心配してんのか謙也はわざわざ俺を迎えに来たらしい。

確かに謙也が来んかったらあのまま帰ってたかもしれん。



『なんや白石黙りこくって!聞こえへんかったんか?もう1回言うたるわ、優しーーい格好良いーースピードスタ、ぶっ!』

「鬱陶しい事復唱すな」



真横でぎゃんぎゃん喚く謙也に一発。
あー、ホンマコイツが居ったら悩み事も出来ひん!



『、それでこそ白石や』

「謙也、お前……」

『ん?』

「気ぃ使わせて悪い…なんて言う思たか?」

『ぶっっっ!!』



得意気な顔する謙也に更に一発。



『このボケ!お前さっきより痛いわ!』

「いっつも加減せぇ言うから加減したったんやけど?」

『何処がや!!』



苦しい気持ちが薄れるわけやないけど、少しだけ楽になったって思えるんはお前が笑かしてくれるからやろか。
わざわざ口に出したりせえへんけど、有難う。






「ほな残り時間は各自筋トレと柔軟しときやー!」

『『はい!』』



言いたないけど謙也のお陰で気合いが入った俺は部活に集中出来た。

今日の練習メニューを終えると後30分残ってしもたから自主トレするよう指示して俺は走りに行こうか思てた時、謙也が財前にちょっかい出してのが目に入った。



「またアイツはくだらん事言うてんのちゃうんか」



2人の方へ向かうと、途端何処か走って行く財前。



「ざ、財前何処行くんや!部活はまだ終わってへんで!後30分、」

『しーらーいーし。』

「なんや謙也、アイツ連れ戻して、」



勝手に抜ける財前を止めもせんと何で俺を止めんねん。



『ええねん。今度はアイツが踏張る番やねんで』

「謙也…?」

『空気読めや白石の阿呆』

「……お前にだけは言われたない」



要するに前来てた彼女絡みなことっちゅうわけか。
俺より先に気付いてた謙也は凄いと思うけどちょっと腹立つ。



『せやからー、』

「は?」

『財前の次はお前や白石』

「…………」



謙也はボールをバウンドさせながら俺を見る。



『ショボくれてるお前見てんの飽きたわ!ちゃんと勝負してこい!』

「、っと、」



こっち目がけて投げてくるテニスボールを受け止めると、ニッと歯を見せて笑う謙也。

ホンマ、おせっかいやボケェ。



「謙也!」

『なん?』

「お前名前のアドレス知っとる?」

『あー、昨日変えたってメールきたなぁ』



受け取ったボールを投げ返して、



「頼みあんねん」



俺は最終試合をすると決めた。



名前へ

謙也に頼んでメール打ってもらってる。
お前からしてみれば迷惑かもしれへんけど言いたい事あるんや。
明日で約束の1週間経つ。せやから白黒つけさせてほしいねん。

明日、9時に学校で待ってる。





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