violet shaking | ナノ


 


 mission.07



君の名前を呼ぶのは

恋しいから、愛しいから



俺を見ててほしい、この瞬間だけやなくてこれからもずっと…





mission.7 距離





「名前ー、飯食うでー」

『うん』



うん…?
いつもの毒吐きは何処いってもうたん?一言頷くだけやなんて逆に恐ろしい……!

なんや、明日は雨か?大雪か?まさか大地震………!!



『1回死んで』

「え、」

『顔に出てんのよアンタの考えてる事全部』

「アハハー、そら悪いな…でも、いつもの調子戻ってんやん」



俺かて本気でそないな事思てる訳ちゃう。
元気ないんかなって、ちょっと心配したんや。



『、考え事してただけ』

「…………」

『なによ』

「俺に相談してみる気『ない』」



んな即答せんでもええのに。

それにしても名前が考え事…んー、想像つかへん。
あの謙也の彼女の事か?せやけどアイツ上手くいってるとか言うて気色悪いくらいニコニコしてたし。
目なんか開いてへんくて棒線やったっちゅーねん。

頭ん中で俺を呼んでる乙女謙也が浮かんできてしもた。
うわ、嫌や…有り得へん…
アイツ思い出すとか勘弁や。俺が頭に描くんは名前だけで十分やねん。



「ま、言いたないならええけど」

『なんだ、無理強いして聞いてくると思ったのに』

「正直、そうしたいねんけど…名前が話したなった時まで待つわ。せやからそん時は遠慮せんと言いや?」

『………ナルシスト』

「ちゃうやろ!そこは優しいーとか言うとこやねんで!」



この時、もし俺がアイツの悩みを聞いてたら。
俺がアイツの心を詠めてたなら。

あないな事、ならへんかったんかもしれん―――…





  □





『部長ー』

「なんや財前」

『部活前に話あるんスけど』

「…………」



財前が俺に話……



「恋の相談?もしかして俺が好きやとか吐かすんや……!?」

『キショいボケは要らんわ。俺やなくてアイツ』

「え?」

『同じクラスの奴やねんけど、部長呼んでくれって頼まれたんですわ』



財前が親指で指す方には申し訳無さそうに俯く女の子が居てた。



「……話って、何かな」

『えっと、ごめんなさい、部活あるのに…』

「ええよ、せやけどあんまり長く話は出来ひんから」



こういうの、最近あんまり無かってんけどな…

見ててこっちまで苦しなるから正直好きやない。



『白石先輩は、今付き合ってる子居てるんですよね…?』

「……名前の事言うてるん?」

『名前は、知らへんけど…』

「仮、やけど付き合うてるよ」



早くちゃんと付き合いたいのは山々やけど。



『仮、なんですか?』

「色々あってな」

『せやったら、その仮の付き合い終わったらウチと付き合うてくれませんか?』



もしかして勘違いしてんのかな、この子は。



「仮、っちゅうのは俺が言いだした事やねん。アイツがわざわざ付き合うてくれてるだけで。せやから無理や」

『そう、ですか…でも噂で聞いたんです…』

「なんを?」

『先輩が最近一緒に居てる人は、めっちゃ口悪くて先輩の事悪口言うて最低な人やって、』



噂って怖いな。
2年んとこまでそない噂立つもんなんやろか。



「んー…そらアイツは口悪いで?普通にキショいとか黙れとか言うてくるし」

『そ、それやったらそんな酷い人……!』

「酷い、か…最低、かもしれやんなアイツは」

『、なら別れたらええんちゃいますか?』



少し、希望持ったような目をするこの子。



「傍から見たら最低かもしれへん。せやけど、俺はそう思わへんねん」

『え?』

「そういう会話すら楽しいって思う自分も居てるし、アイツがああやって毒吐くんは飾らんと自分を見せてくれてる証拠や。それに照れ隠しやったりもするんやで…」



そんなん、最低どころか、めっちゃ可愛いって思てしまう。



『そない、好きですか…?』

「うん。アイツが好き」

『ウチも、白石先輩が好きです』

「…ごめんな……」

『ウチこそ、先輩の好きな人悪く言うてしもてスミマセンでした』



謝るなり、その子は走ってった。

後味悪いもんやけど、名前が好きやって言えた自分に満足してる。
前まではごめん、だけやったから。好きな女が居てる。それだけで幸せな事なんかもしれへん。



「………」

『しーらいしっ!』

「!」



ちょっと黄昏てると後ろから謙也が俺の肩に手回してきた。

いきなりなんや!ウザイねん!
浸ってたのに台無しや!



『見たで見たで見たでー!』

「趣味悪」

『“傍から見たら最低かもしれへん。せやけど俺はそう思わへんねん”かー!お前格好ええなぁ!っっ、いだっ!!』

「うっさいわボケ」



ちょっっっと自分が彼女と善い感じやからって調子乗ってる謙也に一発。

コイツだけは殴っても殴っても懲りへんな。



『いつも思うねんけどもう少し加減出来へんのか!』

「加減して欲しいなら考えて喋らんかい」

『なんや冷たいなー!』

「とっとと練習始めんで」

『はいはいーっと』



謙也を見てたら幸せなんが全身から溢れてる。
何時もと何ら変わらへんアイツやけど、何処か雰囲気が柔らかいっちゅうか…

恋愛っていうのは人をこない変えてしまうんや。
羨ましいって言うたらアレやけど、俺もこんな風にならたらええなってそう思た。





  □





「ほな、解散しよかー!」

『お疲れー』



今日はオサムちゃんが用事あるとかなんとかで不在やって、ちゃっちゃと片付け終わったらすぐ解散出来た。

教室で待ってる名前んとこへ向かう俺やけど、こうするんも定着しつつあって、これからもそうやとええなって祈ってた。
毎日、部活終わるんが楽しみになる。



「名前ー!…、あれ?」



勢い良く開けたドアやけどそこには誰も居てへん。



「何処行ったんやアイツ……」



とりあえず隠れたりしてへんのかと教室をウロウロしてみたけど居てへん。



「電話、してみよか」

《―留守番電話サービスに接続します》

「…………」



留守電………

なんや、何かあったんかアイツ…?

俺は嫌な予感がして教室を出た。
学校中を走り回って走り回って名前を探す。



「何してんねや……!」



走りながら電話を掛けるけど何回掛けても留守電になる。

校舎ん中も居らん、体育館やって体育倉庫やってグラウンドにも。

どうなってんねん……
おかしい、電話も繋がらへんとかおかしすぎるわ…



「家、行ってみよか、」



学校に居てへんなら家やったらどうや…?
でもこれで居らんかったら…

何か事件とか巻き込まれてへんことを願って、俺は急いだ。



ピンポーン、とチャイムを押すと名前のお母さんが出て来てくれて。



『あら、白石君こんばんは』

「、こんばんは」



悪いけど呑気に挨拶してる場合ちゃうねん!
アイツは、



「名前居てますか…!?」

『……部屋に居る、んだけど…』

「あ、そう、ですか…」



部屋に居る、それを聞いてちょっと安心した。
無事や、それだけでええ思たのに……



『あの子学校から帰って来てすぐ部屋に閉じこもっちゃって…頭痛いとか…』

「……」

『ごめんね、せっかく来てくれたのに』

「いや、ええんです…お大事に、って伝えてもらえますか?」

『うん、分かった有難う白石君』



名前に会う事は出来ひんかったけど、頭痛くて寝込んでんなら仕方ない。

せやけど心配すんねんからメールとか一言言うといてくれたええのに。


俺は携帯のメール画面を開けて名前にメールを打つ。



「“連絡くらいしてこんかい。今日はゆっくり休むんやで”これでええかな、送信、」



送信しました

その表示が出ると俺は携帯をパカッと閉じて自分の家へ歩き出す。

昼間は元気やってんけど…風邪でも引いたんやろか。
あ……せやけどアイツ…
何か悩んでみたいやったわ…

うーん、と頭を傾げてると携帯が振動しだして。



「もうメール返ってきたんか?早いな――――…」



言葉が出えへんかった。

その返信に書かれてたんは、

送信エラー
宛先を確認して下さい




残り、後2日。





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