act.9 (1/3)
『名前がオサムちゃんと上手くいくの嫌だけど…アイツが泣いてんのはもっと嫌だ、仁王は違うのかよ…』
ガタンッ!
『!?』
「話、聞かれたみたいじゃな」
名前の机の上に置かれてあった課題のプリントをヒラヒラさせるとブンちゃんは怪訝な顔をした。
『名前!?……、お前まさか分かっててわざと……』
「なんのことかのぅ」
さすがにブン太でも分かったようじゃ。
俺が、わざと怒らせたこと。
このままだとブン太は自分の気持ちも伝えんまま終わってしまう。
だから名前がおるんも知らんフリして……気持ちを分かってもらうために。
『お前…馬鹿だろぃ……』
「ブンちゃんには言われたくない」
『………………』
「追いかけんでいいん?」
『追いかけるのは俺の役目じゃねぇじゃん』
じゃあな、と言って教室を出て行くブンちゃん。
「ハァ……」
『仁王!』
「!」
出て行ったはずのブン太がまた戻って来てドアから顔を出す。
なんじゃ、ビックリさせて。
『俺、お前の事好きだぜぃ』
「は……」
その一言を言ってパタパタ走っていく音が次第に遠くなった。
「フッ…ハハ、クックックッ」
笑いが込み上げる。
なぁブン太。
俺も好いとう。お前は格好良いぜよ。
正直、名前には悪いけどブン太の味方じゃ俺は。
本当は自分がフラれることなんか分かっとった。アイツが好きなんは確かじゃけど…俺より、大事に相手を思いやれる事が出来るブン太の恋が実ってほしいと思った。
「俺もブンちゃんも、馬鹿じゃのぅ…」
携帯を取り出してアイツに発信。
けじめ、つける為に………
(200806/移動20120211)
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