長編 | ナノ


 


 03.




「じゃあ何、貴方達は行き場の無いいたいけな乙女がどうなっても良いと?そこらで野宿をして野蛮人に弄ばれた挙句どこぞの怪しい人に売られても心が痛まない冷血な男なの?あーやだ信じらんない!」

『おいおい…偉い言われ様だな』

『あははっ!僕は強ち間違った事言ってないと思うけどね、土方さんに限っては』

『総司!』



やっと刀を仕舞ってくれて、アタシも落ち着いて自分の状況を話してはみたけど未来から来ましたなんて言って『はいそうですか』とか納得してくれる訳もなく。
幸いな事にアタシの鞄までもが一緒に此処へ着いて来てくれたもんだから手荷物全てを証拠として差し出した。中に入っていたのは携帯、スキンケア道具含めた化粧品一式、携帯用アイロンにコテ、手帳と筆記用具、お菓子、財布、あとはどうでも良い生徒手帳ってところ。

だけどどうでも良い生徒手帳にはアタシの証明写真が付いていて、それこそが彼等の言う今の時代では考えられないって後押しをしてくれたのは……意外っていうか何ていうか。だからこそ9割方信じてくれたみたいだけどそれでも疑心暗鬼は残ってるらしい。泊めて下さいお兄さんなんて可愛く言ったって土方さんとやらは憂色な顔して唸るばっかり。



「ねえ土方さんお願い!アタシもどうして良いか分かんないし…せめてこの時代の事を理解してからじゃなきゃ出て行くにも怖くて怖くて…」

『とは言ってもな…』

『まあまあトシ、良いじゃないか。幾ら女禁とは言えど今回の事は例に無い』

「近藤さん優しい…!」

『近藤さんよ、お人好しなのは分かるが安易に決められないだろ』



初めあの場に居なかった近藤さんだけど広間で騒いでいるのを察して顔を出してくれたなり、アタシの話しを逐一頷きながら1番親身に聞いてくれて。優しい顔付きに優しい声色は既にアタシの癒しになってた。
近藤さんが居るからこその新選組、すっごく分かる。それに引き換え土方さんと来たら…話しの分からない堅物だ事極まりないね。顔は良いんだから、もう少し優しさを覚えてくれたら女の子はコロッと行っちゃう筈なのに。



『トシ、彼女の話しが真実か否かは彼女の持ち物を見て納得せざるを得ないだろう?彼女が此処に来たのは何か理由があるのかもしれん。神の導きか悪戯かは分からぬがこれも縁と言うものだ』

「近藤さん好き…!格好良い!」

『ハッハッハッ!そう言われると照れてしまうではないか!』

『彼女良い子じゃない』

『総司。近藤さんが賛美されたら誰でも良い奴にするのは止めろ』

『本っ当、土方さんは頭が固いんだから』

『うっせえ!』

『っつーか土方さん』

『あ?今度は平助か、何だ?』



近藤さんは推してくれるけど土方さんが縦に首を振ってくれないが為に話しは進まない、そんな時に怖ず怖ずと手を挙げてくれたのは一際幼さが抜けない小柄な男の子だった。
新選組で平助って言えば…藤堂平助、だったっけ?



『あのさ、土方さんはアイツが怪しいかもしんねぇから渋ってんだろ?』

『当前だ。分かり切った事言ってんじゃねえ』

『じゃあさ。俺が責任持ってアイツの面倒見るよ監視含めて。だったら文句ねぇだろ?』

『、』

「え?」

『お前、嘘吐いてる様に見えねぇし。だろ?』

「――――――」



な、なになに。ちょっと今キュンてした。近藤さんと同じくらいときめいた。
この中じゃ何も考えて無さそうに見えるのに超良い人じゃんか…!



『だったら俺も面倒見てやるぜ?むさ苦しい屯所でこんな別品を相手に出来るなら喜んでやってやるわな、余計な事も含めて…な?』

「っ、」

『ちょっと左之さん狡いんじゃない?近藤さんの事を理解してくれてる可愛い子なら相手は僕、そういうもんでしょ?』

『おいおい平助も左之も総司も良いとこ取りかよ!兄貴肌の俺を忘れてんなよ!』

『女相手だからってお前等なぁ…!』



あああ、何だか分かんないけどアタシ大人気な急展開?浮かない卒業式だったけどお化粧はバッチリにしておいて良かった…!
皆さんイケメンなんだから誰だってどんと来いだよ、受け止めるよアタシ!



『皆もこう言っているぞトシ』

『はあ…仕方ねぇ。但し何か起きた時は連帯責任だ、分かってんだろうなお前等!』

「何かとかしないってば!本当にしつこいんだから!」

『お前が文句を言うのかコラええ?』

「いい痛い痛い痛い!つねらないで頬っぺた!」



土方歳三、鬼の副長と今でも語り継がれるだけあって例え初対面の女の子でも誰が相手だろうが容赦無い。ヒリヒリ痛む頬っぺたのお陰でそれだけは嫌ってくらい理解したところで話しは纏まった。
渋々な土方さんを除けば意外に乗り気な皆さんと生活が出来る、つまり野宿も免れてその上イケメンとハッピーライフだなんて…だからアタシは就職が必要無く、出来なかったのかなって、アタシの思考は単純だった。



「あ、そういえば皆さんアタシより歳上だと思うし新選組っていうくらいだから…敬語使った方が良いのかな?」

『今更お前に敬語使われたって気色悪ぃだけだよ馬鹿野郎!』

「土方さん、アナタは何て口が悪い…!」




(20101116)






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -