十二番隊恋愛闘争 | ナノ
「どうした、顔色悪いな」
『……えーと、ちょっと昨日飲みすぎちゃって、』


とは、八席と一緒に飲みに行った次の日のことである。


「……お前、酒は強いのにな、」
『んーと、強いというわけではないんですけど』


言いつつ、すすめられたソファに腰かける。
もちろんここは技術開発局の阿近さんの部屋である。


「二日酔いなら、無理せずに今日は早退した方がいいんじゃないか?」
『う〜……もう少し頑張ってみます』
「たしか、歓迎会の次の日、お前倒れたよな、」
『あーあの時はすみません』
「別に、謝れるようなことはしてねーが、しんどいなら休め、お前の悪い癖だ」
『はーい、』


頭がガンガンするせいか、返事もあまりさえない。


「医務室に行きたくないならそこで寝ててもいいんだぞ、」
『……阿近さん、なんでもお見通しなんですね』
「ばか、前にお前が自分で言ったんだろ」


いつものように机の上の物をいじくっていた阿近さんだったが、ぱたりと手を止めて向かいに座った。


『えーと、私何か言いました?』
「言った言った、言った後、そこで終業の鐘まで爆睡だったな」
『……すみません、すべて忘れてください』
「まあ、忘れるのは無理な話だ」


少しだけ笑って、ちょっと待ってろ、と部屋から出て行ってしまった。


『……阿近さん、笑ってた』


いつもなら見せない優しい顔。頭は相変わらずガンガンするのだが、心の中は嬉しさでいっぱいだ。







入隊当時から一人、私の苦手な人がいる。
弓月秦、技術開発局の局員である。たしか肩書もあったはずだが、興味がないため覚えていない。


結構かっこいいため、同僚たちには人気なのだが、私は初めて会った時からどこか落ち着かない。信用してはだめだと本能が告げているような。
そんなことを相談しても、同僚は誰も相手にしてくれないから、結局は心のうちにとどめているのだけれど。


酔った勢いで、いや、二日酔いの勢いで阿近さんに話してしまったらしい。


弓月さんは、医務室に私が運び込まれたなら、どこから情報を得るのか、すぐにお見舞いにやってきてくれる。
それがいやで、最初に怪我して医務室に運び込まれて以来、医務室にはいっていない。医務室に行くくらいなら、自分の足で四番隊に行くか、早退するかだ。


「ほら、それ食べて少し休め」


アイスクリームだった。しかもヨーグルト味だ。


『私これ大好きなんです、ありがとうございます』
「ああ、」
『でもすごいですね、ほんとに阿近さん、何でもお見通しだ』


そういえば、何も言わずにタバコをくわえる。しかし今日は火をつける前にそれを置いた。


『おいし、』


冷たいものがのどを通っているのが分かる。朝から何も食べる気になれなかったのだが、アイスクリームは容易に口の中に納まった。それがアイスクリームのせいなのか、阿近さんのおかげなのか。


『……けど、私がここで寝たら、阿近さんタバコ吸えないんじゃないですか?』
「いつも言ってるだろ、お前が気にすることじゃねーよ」
『はーい、』


眠るつもりはなかったのでが、いつのまにやらまぶたが閉じてしまっていた。


大好きな人、落ち着くところ。
さえる貴方と醒めない私



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