『フォルス、任務中だよね、あんまり邪魔しちゃ悪いから私帰るね』
言うが早いか、動くが早いか。カヤはクルリと回れ右をして帰ってしまった。
「……ああ、そういうことか、」
「え、どういうこと?」
なぜか納得しているシーダに問うと、あほか、とソウケンからあきれられた。
「まあまあそうだろうよ、この子には縁のないような話だしねえ、」
「何が?」
「彼女の響友の存在が大きすぎるのだ」
「あの子にもそれなりの実力があるだろうに、さっきの様子じゃろくな過去を送ってないんだろうよ」
言われて、そういえば、と昔のことを思い出す。
「召喚師になってすぐのころは、なんだかふさぎ込んでた」
「そりゃそうだろうな、いくら頑張っても響友のことばかり言われたんじゃいじけたくもなるぜ、」
いや、とカリスの言葉に異を唱えたのはソウケンである。
「シルターンやシルターン特区でも少し話題になっていたんだが、彼女がいじけていたというよりはむしろ、彼女を見る目が冷たすぎたといった方が正しいのかもしれないな」
「どういうことだ?」
「噂には尾ひれがつきものだからな、すべてが正しいというわけではないが、いろいろと嫌がらせも受けていたらしい、」
「嫌がらせ?」
そんな話聞いてないけど。
けど、カヤなら話さなくても―――話さない方が納得がいくかな。そういうことは話さないもんな、昔から。
「ああ、召喚師からってことか」
「そのキタロウを響友にしたがっていた人間はたくさんいたからな、」
「あー、じゃあキタロウは結構いいとこの次男坊か三男坊かってとこか。跡継ぎじゃないから響友を探していたってわけだな」
「そうだね、確かそんな感じだった。……キタロウとカヤとの出会いはまったくの偶然だったけどね」
難しい顔をして聞いていたルエリィがぽつりとつぶやく、
「そんな理由で嫌がらせするなんて、ひどい」
そうだな、とシーダ。
「今じゃもう、周りとかかわろうとすること自体を避けてる感じだった。シルターンに長期任務の方が、あいつものびのびできたんだろうな」
そこまで話したところで、集まった本題を忘れていたことに誰かが気が付き、足早に話が進んだ。
しかしその間もカヤのことが頭から離れず、今日任務が終わったら話でも聞きに行くかな、と彼女の住む部屋の位置を思い出した。
知らないところで影が大きくなっていた
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