幸せになろうよ | ナノ
ロレイラルの住人も無事にとらえることができ、フォルスたちの方も犯人は全員捕まえられたらしい。警察騎士も出てきて、空中戦が終わって下に降りると(私たちからすると空中戦だが、ロレイラルの住人にとっては陸地戦)、結構な騒ぎになっていた。


「お前、足遅くなったんじゃねーの」
『そんなことない、』
「嘘だって、そんなにふてくされんな」


キタロウとそんな言葉を交わしていると、アベルトの姿をとらえた。


『あ、アベルト、』
「ああ、あいつか。……って、お前手を振るなよばか」
『え、でも、もう振っちゃった、』
「だあーもう、俺は帰る」
『え、キタロウ、』
「よお、久々だな、響友」
「ち、」


あからさまに機嫌が悪くなるキタロウ、少しよそよそしく話をするアベルト。


「ちょっと話を聞きたいんで、今帰られても困るんだが、まあカヤに聞けばいいし、」
「俺はお前が嫌いなんだ、バカ」
『ちょっと、キタロウ、』
「そんなことは知ってる、そして俺もお前が嫌いだ、心配すんな」
『ちょっと、アベルトまで』


仲良くはなれないだろうな、とは思っていたけれど、ここまではっきり喧嘩されるとどう対応すればいいのかわからなくなる。


「はいはい、二人ともその続きはどこか別の場所でね」
「お前は黙ってろ召喚師」


フォルスの仲介にもキタロウが噛みつくが、ここは調停召喚師フォルスの腕の見せ所だった。


「そう、その調停召喚師が言ってるんだ、こんなところで喧嘩しない。ほかの人もいるからね」


しぶしぶいがみあいをやめた二人。


「で、アベルト、この人たち、そっち関係の人なんでしょ?」
「ああ、まあな。お前にも事情聞きたいから、しばらく時間くれ、」
「わかった、じゃあほかにも協力してくれる人連れてくるから、ちょっと待ってて」










警察騎士団での事情聴取も終わると、日もだいぶ暮れていた。アベルトはまだ仕事があるらしく、キタロウとフォルスとペリエと帰ることとなり、


『ねえ、キタロウ、なんでアベルトのこと嫌いなの?』


ふときいてみる。


「ああ、それ僕も知りたい、キタロウ、僕らと出会ったころから、アベルトのこと嫌いだったもんね、」
「あぁ? そりゃあ嫌いにもなるだろう、」
『ん?』
「あそこまでイチャイチャしたやつら見て、付き合わない選択肢があるなんてまず思わねえ。あんなやつにこいつが惚れてるなんて思うとそりゃ嫌いにもなるだろ。お前ももっとましなやつ好きになれよバカ」
『誰を好きになったって私の自由でしょ、ばか』
「あーはいはいわかったわかった。要するに、やきもちやいてるわけね、アベルトに」
「黙れ召喚師」


わーわー言いながら、分かれ道。じゃあね、と手を振ろうとして、キタロウが付いてくる。


『ん?』
「帰ってきたら、大事な話するつったろ、覚えてないのか?」
『あ、覚えてる』
「ん、じゃあキタロウ、カヤよろしくね。ちゃんと家まで送り届けること」
「わかってる」


言いながらキタロウが歩きだしたため、フォルスたちに曖昧な別れを告げただけとなった。
着いたのは、私のお気に入りの場所だった。海が見える高台。


「お前、昔からここ好きだったよな。……今でも来てるみたいだな、」
『え、なんで知ってるの、』
「あのバカ警察騎士から聞いたんだ、ばか」


夜になると、街の明かりがきれいだ。
星はあまり見えないけど、街の明かりも嫌いではなかった。


『あんなに仲が悪い癖に、二人でこそこそ話してるの』
「しゃーねーだろ、お前が世話の焼ける悩み事してんだから」
『……』
「響命石の力が弱くなってる? ほんとにそう思うか?」


弱くなどなっていなかった。今日、戦闘中、キタロウの考えも感情も、すべて感じ取れた。
首を横にふるしかない。


「じゃあ、異世界調停機構の連中はみんな信じられないやつらか?」


それも首を横に振るしかなかった。
管理官さんも、フォルスも、私を私として見てくれている。


『……みんなのことを信じられないっていうのは、やっちゃいけないことだった。会う人みんなを信じることは無理だけど、みんなのことを疑うのはよくないなって思ったよ。フォルスも、……キタロウのことも、』


ごめんね、あなたのこと疑ってた。キタロウは何も悪くないのに、勝手に自分から遠ざけた。


言おうと思ったことを言う前に、頭に手が置かれる。


「よしよし、わかったならそれでよい。みなは言うな。わかっておる」
『ふふ、久々に聞いた、キタロウのお家しゃべり』
「ばか、人がせっかくほめてやったのになんだそれは」
『ごめん、つい』
「このクソガキ」


頭の上に置かれた手が、今度はげんこつに変わる。対して痛くなかったからそこまで力を入れていないのだろう。


「よし、じゃあここまでがお前の話な」
『え、』
「なんだ、違ったか?」
『うんうん、あってるけど』
「そうだろう、お前の考えてることなんてすぐにわかるからな、」


次は俺の話な。
キタロウはそれまでの態度とは一変し、まじめな顔になった。たまにこうしてふざけた感じが抜けるから驚く。


「お前が俺を遠ざけたように、俺もお前を遠ざけた」
『……、』
「俺が響友になったせいで、お前は嫌なことばかりだったろ? 調停召喚師になる夢がせっかくかなったってのに、異世界調停機構の召喚師には認めてもらえず、俺ばかりが目立っちまった。俺のわがままでお前を困らせた、すまなかった」
『ちょっと、キタロウ、』
「それだけじゃねーだろ、お前が受けてたのは。嫌がらせだって相当だったらしいしな、それに気が付けなかったのもすまなかった」
『だってそんな、キタロウが謝ることじゃ、』
「俺が謝ることだ。響友として失格だ。お前が俺にじゃなくアベルトにばかり相談するのが悔しくて、それについては何も声をかけなかった。お前の様子がおかしいことに気が付いていながら、だ」


ポツリと涙が地面に落ちたのがわかった。それが合図だったかのように涙が止まらない。


「辛い思いさせたな、カヤ」
『キタロウ、』
「まだ、最後に一言」


私の言葉を制止して、キタロウが頭を下げた。


「これからもカヤと響友でいたい」


ああ、私はバカだな。キタロウのこと疑うなんて、ほんとにバカだな。こんな響友、ほかにはいないよ。


『ばーか』
「、」
『ばかばかばかばかばかばかばか』
「カヤ、」
『自分に言ったの、私バカだった』


私もあなたとずっと響友でいたい。


キタロウとこんなに長く話したのは、いったいいつぶりだろうか。


響友と警察騎士の策略



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