「総司、この前の鶴の礼だ。」

僕は瞼ををぱちぱちと開いたり閉じたりする。

「なぁにこれ?」
「根付けだ。」
「うん。そうじゃなくて、どうしてこれなのかな?って意味」
「あんた猫好きだろ?」

僕は頷く。

「だから、猫の根付けをお祭りで見つけたから。」
「はじめ君、これ犬だよ」

はじめ君は普段表情を変えない顔を大仰に変えて、僕は得した気分になる。
はじめ君は慌て僕に渡した根付けを取ろうとした。
僕ははじめ君の手が届く前に、根付けを高く伸ばしてはじめ君がとどかないようにする。
必死なはじめ君を間近に見て、可愛いな・・としみじみしてる。

「いぢわるするな返せ。」
「僕にくれたんじゃ無いの?」
「猫が好きなんだろう。」
「猫、好きだけど。僕の好きな人犬ぽいんだ。」

僕から根付けを奪おうとしていた一君の勢いが、怯む。

「好きな奴が居るのか?」
「うん。」

一君は伸ばした手を下ろす。

「そうか。」

何だかしゅんとした表情の一君を見て。
何なんだこの子
胸が高鳴ってどきどきした。

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