君の傍に

ユーリ・ローウェル的、猫の日の楽しみ方


下町で同棲を始めてから約一年のふたり

「なぁ、アイナ」

箒星の一階、酒場スペースで朝からパタパタ動き回るウエストレスを呼んだユーリは、何やら酷く上機嫌であった。

「なぁにユーリ、今ちょっと忙しいんだけど」
「大丈夫、すぐ終わっから。ちょーっと目閉じてみ」
「うん?」
「いいから、な?」
「……わかった」

素直に目を閉じた彼女に、ユーリは笑みを濃くする。隠し持っていた物を彼女の頭に乗せると、ついでに額へ唇を寄せた。ビクリとアイナの肩が跳ねる。目を開けてユーリを見上げた。

「な、何!?」
「ん?なんでも。ちっとばかしキスしたかっただけ」
「え、えぇ!?」
「何?口がよかった?」
「ち、違うもん!てゆーか忙しいって言ったでしょ、もう!」

顔を真っ赤にしながら歩調を荒くして仕事に戻るアイナ。はは、と笑いながら見送るユーリは満足そうだ。
その場の誰も指摘しないで小さく笑っている。

彼女は気付いていない。頭の上に黒いふわふわの猫耳カチューシャ乗せられたなんて。

「(まぁ、シゾンタニア居た頃にウエストレスしてた時はずーっと猫耳着けさせられてたって言ってたし、慣れてるせいなんだろうが……)」

あの猫耳カチューシャも、シゾンタニアを出る前に酒場を通りかかった際にエリノアというアイナの友人から貰った物なのだが。

「(エリノアのやつ、わかってるよなぁ。ヤバい可愛いよ)」

あの時、ユーリとエリノアは「アイナ猫耳萌え同盟」を結んだ。あの頃の白いふわふわの猫耳カチューシャを着けさせたのがエリノアだと本人に聞いて、その場で礼を言うくらいユーリはアイナの猫耳姿が好きだった。

と言うか、ユーリはむしろアイナのせいで猫耳に目覚めた。

「(後は、あのまま今日一日気付かないでいてくれればいいけどな)」

まぁそれは無理だろうと考えながら、ユーリはアイナの猫耳ウエストレスをニヤニヤしながら堪能するのであった。



END

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