君の傍に

キスする瞬間の


最終話後、ユーリ独白で雰囲気的にR15

初めてという訳では、なかった。異性と付き合うのもキスするのもそうだし、興味本位のセックスだって、そう。たぶん、お世辞でも誉められるような生き方は、二十年に満たない人生でしてこなかった。

他人に誉められる生き方をしようなんて、思い直した訳じゃない。ただ今までにない感情を与えてくれる彼女を――アイナを守りたいと心から思っていた。

指先が触れるだけで愛しいと感じるのも、視線が交わるだけで鼓動が高鳴るのも。アイナが初めてだった。「ユーリ」と自分を呼ぶ柔らかな声とか、ほんのちょっと出かける用事がある時の「いってらっしゃい、気をつけてね」とか、帰った時の「おかえりなさい」だったりも。とても些細な事なのに、アイナだと胸が満たされていく。

それにアイナの髪に触れた瞬間のはにかんだ笑みだとか、キスする瞬間の少し強張る体や染まる頬、ゆっくり閉じられていく目蓋すら愛しくて。

彼女の背負う罪やこれから襲うかもしれない事件達など、アイナと共に居る事で得られる幸福感からしたら、全く持ってと取るに足らないように思う。

「(きっと、オレは)」

この先こんなに恋い焦がれ、寄り添って生きていきたいと思える人に巡り会えないだろう。だからこそ余計に、大切にしようとユーリは感じるのだ。彼女を守るために命をかけ、そして落としたナイレンとランバートの分も。

けれど、今はただ。

ただ狭いベッドで寄り添って眠るアイナとの早朝の微睡みのひと時を慈しもうと、ユーリは素肌のまま眠る彼女の唇を愛した。



END

- 60 -

[*prev] [next#]



Story top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -